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線A一B間を往復する点P

作者: 布瑠部

 ――これが始まりよ。

 終わりなんかじゃない。


 さあ、始めよう。

 “許さない”

 SNSには、何人かの名前を名指しで書いてある。

 恨ミ晴ラサデオクベキカ――なんてね。

 そうだ、あいつらには、思い知らせてやらなきゃいけない。


 馬鹿のくせに、この私に噛みつくなんて愚かにも程がある。

 しつけのなっていない家畜ほど始末に悪いものはない。

 家畜は家畜らしく、ただ与えられるものを享受していればいい。


 みんな、みんな、馬鹿ばっかりだ。

 檻の中にいることにも気付かずに、ただ同じ所を行ったり来たりしているだけの存在。

 反射だけで生きてて。

 ものの上辺だけしか見えてなくて。

 ぬるぬるした関係を築くことだけに必死になって。


 あいつも、そうだった。

 綺麗事を並べて、いったい何になるっていうの?

 誰だって、腹の中はどろどろしたモノでいっぱいなのに。

 人間なんて、そんなものでしょ?

 優秀な人間が馬鹿で遊んだからって、何が悪いの?

 みんな優越感を感じたくて生きてるんでしょう?


 私はせせら笑った。

「君は何も分かってないんだね」

 君の視界の外にも世界はあるんだよ。

 見えているものの中から、選択ができるんだ。

 人間(・・)はね。

 そうじゃない?


 それは違うよ、とあいつは言った。

 私は聞く耳を持たなかった。

 少しはましなヤツかもって思ってたのに、あいつの話はつまらない。


 結局はあいつも、その他大勢の馬鹿たちと同じだったってことよね。

 人の善意なんて、利己主義の隠れ蓑でしかないってことが、どうして解らないんだろう。

 この世界には、搾取する者とされる者、踏みつける者と踏みつけられる者しかいないの。


 現実を見なさいよ。

 今までは金魚の糞みたいに人の後ろにくっついてたのに、ちょっと状況が変わった途端に笑っちゃうくらいの手の平返しをしたあいつらがいい例よ。


 みんな自分が、自分だけがかわいいの。

 友愛だの協調だの、そんなの姑息な言い訳に決まってるじゃない。

 ああもう、あいつの顔を思い出すだけで、胸がモヤモヤする。

 なんであんな理想論しか言わないヤツのことなんか。

 あーあ、つまんないことを思い出しちゃったよ。



 ふと下を向くと、ビルの屋上の縁と、大通りで虫のように醜く蠢く群集が見えた。

 なんだろう……何度もこうしてきたような、不思議な気分だ。


 ――復讐。

 これからやることを思うと、こみ上げる笑いを抑えられない。


 こんなに楽しいなら、もっと早くこうしていれば良かった。

 楽しい。

 楽しい。

 楽しい。

 はは、は、あはははははは!

 私を見たとき、あいつらはどんな顔をするかな。


 想像する。

 綺麗な、綺麗な、綺麗な、私の脱け殻。

 大勢の人が行き交う路上に、ぐちゃぐちゃに潰れた私がいる。


 罪の意識に震えればいい。

 後悔すればいい。

 私は、私と会うべき人たちに問いかける。


 どんな言い訳を聞かせてくれる?

 ねえ、あんたたちはその時

 どう言うの?



 不思議な――

 歌が聴こえる。

 まるで誘っているかのような。



   霊なる言を(あらわ)さん


   縛りつける

   地上を離れ

   はたはたとひらめく黒い旗


   女の装いに似て

   彼方遠くに音もなく



 心が踊る。

 さあ、行こう。


 私は舞う。


 解き放たれた魂が、小鳥のように風と遊ぶ。

 肉の檻は破られた!

 下らないルールからの解放。

 これでもう、誰も私に触れられない。

 誰も私を束縛できない。

 私は自由だ!

 私は――。



 痛い! 痛い痛イイタイ、イタイ……。



 私は――。

 私は自由だ!

 誰も私を束縛できない。

 これでもう、誰も私に触れられない。


 下らないルールからの解放。

 肉の檻は破られた!

 解き放たれた魂が、小鳥のように風と遊ぶ。


 私は舞う。

 さあ、行こう。

 心が踊る。



   彼方遠くに音もなく

   女の装いに似て

   はたはたとひらめく黒い旗


   地上を離れ

   縛りつける

   霊なる言を顕さん



 まるで誘っているかのような。

 歌が聴こえる。

 Who's singingシギ now,

 Doドゥ youユー know



 ねえ、あんたたちはその時

 どんな言い訳を聞かせてくれる?


 私は、私と会うべき人たちに問いかける。

 後悔すればいい。

 罪の意識に震えればいい。

 大勢の人が行き交う路上に、ぐちゃぐちゃに潰れた私がいる。

 綺麗な、綺麗な、綺麗な、私の脱け殻。


 想像する。

 私を見たとき、あいつらはどんな顔をするかな。

 はは、は、あはははははは!

 楽しい。

 楽しい。

 楽しい。

 こんなに楽しいなら、もっと早くこうしていれば良かった。


 これからやることを思うと、こみ上げる笑いを抑えられない。

 ――復讐。

 なんだろう……何度もこうしてきたような、不思議な気分だ。

 ふと下を向くと、ビルの屋上の縁と、大通りで虫のように醜く蠢く群集が見えた。



 あーあ、つまんないことを思い出しちゃったよ。

 なんであんな理想論しか言わないヤツのことなんか。

 ああもう、あいつの顔を思い出すだけで、胸がモヤモヤする。


 友愛だの協調だの、そんなの姑息な言い訳に決まってるじゃない。

 みんな自分が、自分だけがかわいいの。

 今までは金魚の糞みたいに人の後ろにくっついてたのに、ちょっと状況が変わった途端に笑っちゃうくらいの手の平返しをしたあいつらがいい例よ。


 現実を見なさいよ。

 この世界には、搾取する者とされる者、踏みつける者と踏みつけられる者しかいないの。

 人の善意なんて、利己主義の隠れ蓑でしかないってことが、どうして解らないんだろう。

 結局はあいつも、その他大勢の馬鹿たちと同じだったってことよね。

 少しはましなヤツかもって思ってたのに、あいつの話はつまらない。

 私は聞く耳を持たなかった。


 それは違う、とあいつは言った。

「そうじゃない。

 人間はね。

 見えているものの中から、選択ができるんだ。

 君の視界の外にも世界はあるんだよ。

 ……君は何も分かってないんだね」


 私はせせら笑った。

 みんな優越感を感じたくて生きてるんでしょう?

 優秀な人間が馬鹿で遊んだからって、何が悪いの?

 人間なんて、そんなものでしょ?

 誰だって、腹の中はどろどろしたモノでいっぱいなのに。

 綺麗事を並べて、いったい何になるっていうの?


 あいつも、そうだった。

 ぬるぬるした関係を築くことだけに必死になって。

 ものの上辺だけしか見えてなくて。

 反射だけで生きてて。

 檻の中にいることにも気付かずに、ただ同じ所を行ったり来たりしているだけの存在。


 みんな、みんな、馬鹿ばっかりだ。

 家畜は家畜らしく、ただ与えられるものを享受していればいい。しつけのなっていない家畜ほど始末に悪いものはない。


 馬鹿のくせに、この私に噛みつくなんて愚かにも程がある。

 そうだ、あいつらには、思い知らせてやらなきゃいけない。

 恨ミ晴ラサデオクベキカ――なんてね。

 SNSには、何人かの名前を名指しで書いてある。


 “許さない”


 さあ、始めよう。

 終わりなんかじゃない。

 ――これが始まりよ。

気づいた人が笑ってくれると嬉しい(ブラック御免)

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