アイヘラ 〜大切すぎてしまったあなたへ〜
私はあなたが大好き。
凄く凄く好き。
きっとその想いは、誰に届くでもなく、私の中でずっと輝き続ける物。
誰にも渡さないよ? うふふっ。
――あっ、そうだっ。あの時も、私の事をかばってくれたよね。助けてくれたよね。
覚えてるよぉ。本当に、今でも、鮮明に。
周りの男の人も、『君の言う事ならしょうがないよな〜』って、納得させてたもんね。
本当にあなたって、凄い!
あれ以来、私に向けられる目線は、一気に減っていったよ。
痛かったなぁ〜、苦しかったなぁ〜。あんな痛みは、これまでも、これからも味わう事はないんじゃないかな。
そのくらい、皆からの偏見と、悪口と、罵倒と、嫌悪と、人間のどす黒い物を全部詰め込んだ物だったからね。
でも……知ってたよ? 私。
何を知ってたかって?
……ふふっ、白々しいんだねぇあなたって。
全部お前が仕組んだ物だろうが。
私がただ、純粋な気持ちで、あなたを好きかもしれないと言っただけなのに……。
それだけなのに゛ぃ゛っ゛!!
っっ…………!
"お前はそれを踏みにじった"。
"お前はそれをもてあそんだ"。
"お前はそれを異端と呼んだ"。
しかもなんだ? あたかも私は被害者ですとばかりに、お前は皆にこのことを言いふらしたよね。
ははっ。悲しみや怒りを通り越して、呆れた。
そうか、そうなんだね。
お前は私の事を、友達とも、人とも、利用する道具とも思っていなかった。
ただそこにあった、遊び道具以下の暇つぶしと思っていたんだよね。
そんなにちやほやされたかったか、そんなに被害者として見られたかったのか。
そうか……。
――じゃあ、分かったよ。
ありがとねっ、今日はもう遅いから、これでおしまいにしよっか――!
今日の分の、私との遊びをね。
私とあなたの間に、血しぶきが舞った。
あぁ……。なんて素敵なの……。
もう、誰にも渡さない……。
『私、アイヘラ。大切すぎてしまったあなたへ、一生の愛を伝えに来たの! 私とずーーっと一緒に、遊ぼ?』
それ以来アイヘラは、赤の他人の事を、大好きだったあなたと勘違いし、血しぶきの舞う遊びを毎日……毎日……やっているようです。