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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
98/736

86 ミール視点

(ミールside)


 今日は驚きの連続でした。

 ワタシとしたことが、フェルケンの挑発に乗ってしまったのが、そもそもの始まりです。

 勝てないことなどわかっているのに、父様を悪く言われたことで冷静でいられなくなりました。


 父様のしたことを思えば、フェルケンの言うことも決して間違ってはいないのですが。




 ともかくそんな流れでフェルケンと決闘することになりました。

 そんなワタシに、レイさんは一日の特訓でフェルケンに勝たせると宣言しました。

 ワタシが負ければレイさんもフェルケンの要求を受けると。

 ······正気ですか?



 レイさんは謎の多い方です。

 この学園に途中入学という形でやってきました。

 しかも、国王直々の推薦だそうです。

 わざわざ途中入学するなんて、何かしら理由があるのでしょう。


 しかしだとしたらどんな理由なのでしょうか?

 レイさんの見た目は良くも悪くも普通です。

 ······いえ、どちらかで言えば美形に入りますかね。


 貴族ではなく平民だと言っていましたし、特別な人物とは正直思えません。

 ですが、わざわざワタシと姉さんと同室にしたのですから、何かあるとは思っていましたが。


 ワタシと姉さんは、この学園では特別な位置にいますからね。

 ············悪い意味で。



 もう一人、アイラさんという方もいて、二人でワタシとついでに姉さんを鍛えることになりました。

 アイラさんは18才でワタシ達より一つ年上です。

 どんな特訓をするのだろうと思っていると、レイさんが何かの魔法を唱えたら、突然立っていた場所が変わりました。



 さっきまで学園にいたはずなのに、全然違う場所にいました。

 レイさんが言うには、転移魔法という一瞬で場所を移動できる魔法を使ったそうです。

 そしてここは王都から遠く離れたアルネージュの町だと。

 そんな魔法聞いたことないのですが?


 ワタシの混乱をよそに特訓する広場まで案内されます。そこには数人の10~13才くらいの子供がいました。

 その子達とワタシが手合わせすることになりました。


 これでもワタシは同年代と比べれば、ステータスは高い方です。

 曲がりなりにも特別クラスに在籍していますからね。


 魔力は姉さんにわずかに及びませんが、ゴブリンなどの魔物を倒したことはあるので、それなりに戦えます。

 年下の子供達に本気を出せば怪我をさせてしまいます。しかし、その子供達を鑑定してみると······。



[リュウ] レベル65

ステータスの鑑定に失敗しました。



 レベル65!?

 レベルが高すぎてステータスが見えません。

 ありえませんよ!?

 どう見ても年下の子が、こんな高レベルだなんて!


 そういえば、レイさんとアイラさんは鑑定でレベルすら見えませんでした。

 どういうことでしょうか?

 ワタシの鑑定魔法がおかしくなったのでしょうか?


 リュウという子と手合わせした結果、ワタシの惨敗でした。

 他の子達ともやりましたが、結果は同じ。

 ······どうやらレベルは正しいようです。

 しかし、年下の子供に一方的に負けたのはショックです。

 ワタシってこんなに弱かったのですか?




 子供達との手合わせを終えた後は、本格的な訓練になりました。

 レイさんが魔物を召喚したのです。

 ウッドゴーレム。ゴーレム系では下位の魔物ですが、それなりに強いはずです。


 生まれたての魔物を飼い慣らして、テイムする話は聞きますが、意思のないゴーレム系をテイムするなど聞いたことありません。

 ですが、ちゃんとレイさんの命令に従っています。

 もしかしてこのゴーレム、意思があるのですか?


 姉さんと二人がかりでウッドゴーレムと戦うことになりました。

 格上の魔物ですが、レイさんは手加減させると言っていますし、信じられないことですが、さっきの子供達よりはレベルは下です。

 二人がかりでなんとか倒せました。


 自分のステータスを確認すると、ワタシのレベルは28になっていました。

 ············28? 何度見ても28です。

 さっきまでワタシのレベルは19だったはずなのですが?

 子供達との手合わせ、そして今のゴーレムとの戦闘······それだけで9も上がったのですか!?

 ありえません、いくらなんでも上がり過ぎです。



 考えるヒマも無く、レイさんがさらにウッドゴーレムを3体召喚しました。

 1体だけではなかったのですか!?

 今度は3体まとめて相手にしろとのことです。

 姉さんのレベルも上がっていたので、なんとかなりそうですが······。



 その後はワタシ達がゴーレムを倒したら、レイさんが召喚の繰り返しでした。

 何十体倒したか、もう数えていません。

 後半は上位種のマッドゴーレムやロックゴーレムまで出てきていました。


「よし、これまでとしよう」


 アイラさんがそう言って、ようやく終了しました。

 ワタシも姉さんもフラフラです。

 今はステータスを確認する余裕もありません。

 そんなワタシ達をアイラさんは「さあ二人とも汗を流すぞ」と言って、どこかへ連れて行こうとします。

 レイさんは食事の準備をすると言って、別の所に行ってしまいました。



 どこへ行くのかと聞くと、アイラさんはお風呂だと答えました。

 お風呂? お風呂なんて貴族の屋敷とかにしかないのでは?

 訳も分からずに連れて行かれた場所は、天国のような所でした。

 美しく広い空間にお湯が湧き出しています。

 姉さんもワタシと同じ気持ちなのでしょう。

 ポカンとした表情です。


 アイラさんに使い方を教えてもらい石鹸、シャンプー、リンスで身体を洗っていきます。

 洗浄魔法よりも身体がキレイになっていくと感じます。

 身体をキレイにしたら、大きな浴槽に全身をお湯に浸けると素晴らしい解放間に包まれました。

 こんなすごいお風呂を使うことができるアイラさん達は何者ですか?

 とても平民とは思えませんよ。


「あれだけ体を動かした後だ。気持ちが良いだろう?」


 お湯に浸かりながらアイラさんが言います。

 女のワタシから見ても、アイラさんのスタイルはすごいです。

 姉さんはともかく、ワタシは胸は小さい方なので、この大きさは羨ましいです。


「············はい、正直言葉がうまく出ません」


 驚き過ぎて、何て言えばいいかわかりません。


「こ、こんなすごいお風呂持ってるなんて······。アイラさんは上級貴族様なんですか?」


 姉さんがおそるおそる問います。


「いや、私は平民だ。私のような貴族がいるはずないだろう」


 アイラさんはそう言いますが、こんな平民の方がいないと思いますよ?

 レイさんも自分は平民だと言っていましたが、本当でしょうか?

 身分を隠している可能性が高いです。

 ············ちょっと気になったので、アイラさんとレイさんの関係を聞きます。


 お二人は姉弟のように育ったそうですが、血は繋がっていないそうです。

 いまいち関係がよくわかりませんね。



 充分に身体を癒したら、お風呂から上がり食事の用意をしているというレイさんの所に向かいます。

 お二人の家だという建物は大きな屋敷でした。

 とても平民の家とは思えませんよ。


「この二人がお客さんなノヨ? エルフ············じゃなくてハーフの方なノヨね」


 屋敷に入るとエアリィという妖精に案内されました。妖精族?

 何故、滅多に人里に現れないはずの妖精がここに?

 レイさん達の謎がどんどん増えていきます。



 食事をする場所だという奥の部屋に向かいます。

 広めの部屋で大きなテーブルに色々な料理が用意されていました。


「待ってたよ。ついでだから、シノブとスミレも連れて来たよ」


 レイさんが席に座って待っていました。

 他に先程、手合わせした子供と同じくらいだと思われる女の子が二人います。

 名はシノブさんとスミレさんと言うそうです。


「ワタシはミールです」

「エ、エイ······エイミです」


 ワタシと姉さんが名乗ります。


「拙者はシノブでござる。よろしくでござる、ミール殿、エイミ殿」

「ボクはスミレ············。それよりも、早くごはん······」


 シノブさんは礼儀正しい方ですね。

 「ござる」と妙な語尾をつけていますが。

 スミレさんはマイペースな方のようです。



 ワタシ達も席に着き、用意されていた食事を頂きました。

 食事は今まで食べたことのないほど美味しいものでした。この食事、レイさんが作ったのですか?

 特に果実は、エルフの里の森で採れるものと比べても遥かに、こちらの方が美味しかったです。


 それにしても、こんなに賑やかで楽しい食事はいつ以来でしょうか。


「············泣いてる?」


 ワタシを見てスミレさんがそう言ってきました。どうやらワタシは無意識に涙を流していたみたいです。

 ですが、こんな楽しい食事ができるのもこの場にいるみなさんがワタシ達の事情を知らないからではないでしょうか······。


 ワタシと姉さんの現在の()()を知られたらどうなるでしょうか?

 知られたくない気持ちと、この方達には隠し事をしたくないという気持ちが、ワタシの中でぶつかり合っています。


「学園での二人の様子を見る限り、何か特別な事情があるのだろう」


 アイラさんがワタシの心の中を読んだかのように言います。やはりこの方達に隠し事をしたくはありません。

 そう思ったら自然に口を開いていました。



「············ワタシと姉さんは犯罪奴隷なんです。それも第一級の······」






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