80 国王からの依頼
国王との対面が始まった。
と言ってもどう話を切り出せばいいんだ?
相手は国王なんだし下手な発言すれば不敬罪とかもありえるんじゃないか?
「改めまして私はアイラと申します。国王陛下は私達に個人的に話があると聞きましたが?」
アイラ姉が代表して前に出て頭を下げた。
「うむ、異世界からの来訪など珍しいからな。自らの眼でお前達を見極めたかったのだ」
やはりか。思ってた通りではあるな。
それにしても珍しいってことは前例がないわけじゃないんだよな。
オレ達や過去の勇者以外にも異世界人っているのかな?
「私達の方からも国王陛下に聞きたいことがありますが」
「それも承知している。だがお互いに顔を合わせたばかりだ。まだ腹を割って話せる程の信頼はあるまい?」
まあ確かにその通りだな。
今回の顔合わせもそれを見極めるためのはずだしな。
「それを承知であえて質問させてもらいます。私達が聞きたいことは元の世界に帰る方法があるか否かです」
ストレートに聞いたなアイラ姉············。
まあ遠回しにしたり下手なことを言うよりはいいのかな?
「ふふっ、臆せずに聞いてきたものだな。いきなり期待を裏切るようですまぬが余はその方法は知らぬ」
国王でも異世界に帰る方法はわからないのか······。
それとも知っていてあえて知らないふりをしているとか?
可能性はあるが······判断がつかないな。
「だが、かつての勇者は異世界に渡ったという話もある」
国王の言葉にアイラ姉の表情がわずかに動く。
オレもその話には興味がある。
かつての勇者は魔王を倒した後どうなったのか。
「かつての勇者が魔王を討ち倒した後の話は断片的で詳しくは語られていない。いくつもの憶測の中に元の世界に戻ったというものもある、くらいだがな」
確定した情報じゃないのか············。
国王の話によると勇者は魔王を倒したことで色々な国から祝福を受けたそうだ。
だがその後どの国にも勇者が残った記録はないらしい。
魔王を倒し役目を終えた勇者は元の世界に帰った············可能性も確かにあるが。
肝心のその方法がわからなくちゃな············。
「我が国の書庫に勇者の記録がいくつか残っている。本来限られた者しか閲覧できぬが、お前達に許可を出してもいい」
なるほど、なんとなく狙いが見えてきたな。
許可を出す代わりにオレ達に何を求めるつもりかな?
「それはありがたい話ですが当然見返りが必要でしょう? 信頼できるかわからぬ者に国の重要な書庫の閲覧をさせるわけにはいかないでしょうから」
「ふむ、話が早いな。実はお前達に依頼したい事案があるのだ」
国王からの依頼か。何だろうか?
わざわざオレ達に依頼しなくても国の王なら頼める相手なんていくらでもいるだろうに。
つまりそれだけ厄介なことだろうか?
「我が王都にある王立エルスタン学園という所を知っているか?」
王都にある学園というとミウやユーリが通っている学園のことだろうか?
名前までは聞いていなかったな。
「ミウとユーリが通っている学園だ。ロディン様とリイネ様も通られている」
グレンダさんが小声で教えてくれた。
やっぱりそうだったか。
国王の言葉にオレ達は頷いた。
「先日、その学園の地下に迷宮が出現した。今はまだ限られた者しかこの事実を知らないがな」
迷宮というと邪気溜まりが長い年月をかけて変化して出来るとかだったな。
そんなものが王都の学園に出来たのか?
「私達はあまり詳しくは知りませんが、迷宮とは町中にも出現するものなのですか?」
「いや、こんなことは前代未聞だ。だからどうすべきか対策に頭を悩ませている」
やっぱり珍しい出来事なのか。
じゃあ国王の依頼はその迷宮の攻略かな?
「では依頼とはその迷宮の攻略ですか?」
「そうではない。攻略はあくまで最終手段だな」
と思ったのだが少し違うらしい。
「迷宮は魔物を生み出すがそれと同時に貴重な資源も生み出す」
国王の話によると迷宮からは通常では手に入らない貴重なアイテムや素材が取れるようだ。
仮に取り尽くしてもまた勝手に補充される無限湧きのような感じらしい。
ゲームなどの迷宮もそんな感じだよな。
つまり町の中に出現した迷宮をうまく管理することが出来れば莫大な利益に繋がるわけか。
だがリスクも大きい。
もし凶悪な魔物が大量に湧き出せばとんでもない被害が出るだろう。
「迷宮を管理するつもりですか。そのようなことが可能なのですか?」
「先程も言った通りこの事態は前代未聞であり未知数だ。迷宮がどのように生み出されているかもまだ解明されていない」
どこに現れるか、どうやって迷宮は作られているかもわかっていない。
そんな迷宮がすぐ近くに現れたらいい研究材料にもなるかもな。
確かにすぐに攻略するよりも色々と調べてからの方がよさそうだ。
「そこで余からの依頼だ。お前達にエルスタン学園に生徒として通ってもらい不測の事態に備えてほしいのだ。可能ならばその間お前達のスキルで教師、生徒を鍛えて戦える者を増やしてほしい」
つまり迷宮から魔物が湧き出てもいつでも撃退できるようにしていてほしいということか。
あまり目立つのは嫌だが無茶振りって程の依頼ではないな。
教師や生徒を鍛える方も王都ではどうかは知らないけどアルネージュじゃオレ達が成長促進のスキルを持っているってのは有名だからな。
今更隠す意味もないかな。
アイラ姉が依頼を受けるか否か確認の目線を送ってきたのでオレは無言で頷いた。
「お引き受けするのは構いませんが、期間の方は? 無期限と言われても困りますが」
「調査期間はおよそ3ヶ月と予定している。状況によっては前後するだろうがな」
3ヶ月か············。
まあ特にやるべき予定があったわけでもないしそれくらいなら学園生活も悪くないかもしれない。
異世界の学園にも少し興味はあったし。
オレ達は国王の依頼を受けることにした。
「感謝する。書庫の閲覧の許可だけでなく異世界に関する情報が入れば可能な限りお前達に伝えると約束しよう」
有益な情報はなかったけど国王の協力が得られるのは心強い。
それにしても学園か············。
まさか異世界に来て学園に通うことになるとは思わなかった。
「学園に通うとなると俺達と同じクラスになるだろう。これからよろしく頼むぞ」
「わたしも英雄と呼ばれているお前達の実力楽しみにしている。弟ともどもよろしく頼む」
ロディンさんとリイネさんが握手を求めてきたのでオレ達もそれに応えた。
そうか、これから学園に通うオレ達との顔合わせのために二人はここに来ていたのか。
平穏無事な学園生活になればいいんだが············。
というわけでレイ達の異世界での学園生活編が始まります。




