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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第三章 王都レイルゼード 学園地下迷宮
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65 復讐に狂った少年

「ユウ!! ······アンタ自分が何をしたのかわかってるの!?」


 テリアという少女が少年に向けて言う。

 少女はオレ達の存在に驚いていたが、それよりも目の前の少年の方を優先するようだ。


「今のアンタ絶対におかしいわよ!? 一体何があったのよ! 答えなさい!」

「あはははっ!! 別に何もないよ? そしておかしくもない、ぼくは正気だよ! ぼくはぼくの意思でこの町を······そして世界を破壊し尽くすんだ!」


 少女の言葉に少年ユウは笑いながら答えた。


「だってぼくはもう今までのぼくとは違う! それだけの力を手に入れたんだ! ほらっ!」


 少年が右手を空に掲げる。

 すると空間が歪み、魔物が湧き出してきた。

 この町を襲っている魔物はこの少年が呼び出したのか?


「ガアアアッ!!」


 湧き出た魔物が少女に襲いかかっていく。

 少女は魔物の攻撃を身軽にかわした。


「はっ!!」


 少女が手元に魔力を集めると弓矢の形に変わっていく。そして矢を魔物に向けて次々と放った。

 湧き出た魔物はすべて倒された。



(物質具現化)

頭の中でイメージしたものを魔力を込めることで具現化させることができる。具現化した物質は一定時間経つと消滅する。



(詠唱破棄)

魔法を使用するのに詠唱の必要が無くなる。



 なるほど、このスキルで何もない所から弓矢を作り出したのか。

 このテリアという少女、かなり戦い慣れているな。


「あはははっ! さすがだねテリア、今の魔物は結構強かったはずなんだけど」


 確かに今の魔物は平均レベル60のヤツが複数現れていた。


「やっぱりアンタおかしいわよ! どうやってそんな力を身に付けたのよ!? それになんで町を攻撃するのよ! ここはわたし達の生まれ育った町じゃない!」


「この町の人間はぼくを必要としていなかった。ぼくが今までどんな目に合ってきたか知らないわけじゃないだろ? ぼくには力がなかった······でも今は強大な力を手に入れたんだ!」


「だからって············こんなこと許されないわよ!?」


「許されない? だからどうしたって言うのさ? 許さないのはぼくの方さ! ぼくを必要としていなかったこの町を······世界を破壊してやる! 必要ないのはぼくじゃない、この町だ! 世界だ! ぼくはそれだけの力を手に入れたんだ! あははっ! あっははははははっ!!!」


 少年が狂ったように笑い声をあげる。

 事情はわからないがこの少年が騒ぎの元凶に間違いなさそうだな。


「ぼくは何もかも破壊してやる! ぼくは死ぬまで止まらない、止まるものか!!」


 少年が両手を広げて魔力の塊を無数に作り出した。

 魔力の塊は(物質具現化)で無数の剣に変わった。


「止められるものなら止めてみてよ、テリア!」


 無数の剣が少女に向けて一斉に放たれた。

 あまりに数が多すぎる。

 本気で殺すつもりなのか?


「旋風斬っ!!」


 アイラ姉が少女の前に立ち、剣技で少年の放った剣をかき消した。

 シノブもアイラ姉の横に立ち少女を守る体勢だ。


「あなた達······どうして?」

「事情は知らぬが黙って見過ごせん。助太刀しよう」


 少女の問いにアイラ姉が答える。

 まあ確かに放っておくわけにはいかないよな。

 オレも二人の横に立った。


「へえ······君たちもぼくの邪魔をするつもりなんだね?」

「何があったのか知らないでござるが、こんなことはやめるでござるよ!」

「あっははは! 嫌だね、邪魔するつもりなら容赦はしないよ!」


 少年が再び魔力の塊を作り出した。

 魔力の塊は無数の剣へと変わる。


「あはははっ!! くらいなよっ!」


 少年がオレ達に向けて剣を放った。

 だがオレ達にこんな攻撃は通用しない。

 少年の攻撃はすべてかき消した。


「無駄だ。あきらめて降参するのだな」


 アイラ姉が少年に言う。

 だが少年は笑ったまま表情を崩さない。


「あっははは! 降参なんかしないよ! ぼくは世界を破壊し尽くすんだ! それまでは絶対にあきらめないよ! あははっ! あはははは············っ」


 言葉の途中で少年の笑いが止まる。


「ゴフッ······!!?」


 突然少年が口から血を吐いた。

 ゲホゲホと苦しそうに何度も吐いている。


「ユウッ!!?」


 そんな少年の様子を見て、少女が少年の名を叫ぶ。

 しかし一体どうしたんだ?

 オレ達はまだ攻撃していない。なのに何故?


「ゴフッ······うぐ······はあはあっ······」


 少年が息を整える。

 だいぶ落ち着いてきたようだ。

 ん? 少年の胸元にある紫色の宝石のブローチが怪しいな。



封魔(ふうま)呪石(じゅせき)

かつて勇者の手によって(いにしえ)の大悪魔を封印した禁断の魔道具。

装備者の精神を支配し、魔力と生命力を吸って復活しようと目論んでいる。



 古の大悪魔を封印······何かヤバいものみたいだな。

 もしかしてこの少年、その悪魔に操られているだけなのか?


「············どうやら今は分が悪いみたいだね。ここは引かせてもらうよ······テリア、ぼくは死ぬまで止まるつもりはないからね······ぼくを止めたければぼくを殺してよ······」

「ちょっ······待ちなさいユウ!!」

「あっははは! じゃあね!」


 そう言い残して少年ユウは姿を消した。

 まさか転移魔法か?

 そんなのまで使えるのか······。


「ユウ······なんで······こんなことに」


 少女がつぶやくように言う。

 いまいち事情が掴めない······声もかけづらいな。




「テリア!」


 一人の男が駆けつけて少女の名を叫ぶ。

 見た目は三十代後半くらいの男性だ。


「······お父さんっ」


 少女が言う。どうやらこの少女の父親のようだな。

 けど少女はレベル155もあるのに男性は62しかない。

 ······いや充分高い方か。


「なんとか町を襲っていた魔物はすべて倒したよ。幸い死者は出ていない。こっちは大丈夫だったか?」

「············」


 父親の言葉に少女は答えられないでいる。


「そこの君たちは······? 町の住人じゃないな······まさか外の世界から? ······ということはやはり結界が消滅してしまったのか」


 男性がオレ達を見て言う。


「たまたまこの近くを訪れていたら突然この町が現れてな。詳しい事情を聞きたいのだが?」


 アイラ姉が男性に言う。


「ああ······そうだな。私も君たちから色々聞きたい······一度私の家に来てくれないか? そこで詳しい事情を話そう」


 男性の言葉に了承してオレ達は彼の家に向かうことになった。

 厄介なことにならなければいいんだがな。





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