529 合流
謎のゴーレムによって天使族の遺跡に無理矢理連れて来られてしまい、どうするべきか悩んでいる。
転移魔法も使えず、念話も通じないので何とか自力で脱出するしかない状況だ。
いや、それよりも何処かにいるトゥーレミシア達と合流するべきか?
味方······とは断言出来ない人だが、この状況ではお互いに協力し合った方がいいはずだ。
「――――――自己修復、完了しました。私も全力で主人に力添え致します」
どうやらサフィルスの傷は完全に癒えたようだ。
なんだかんだサフィルスも戦力として期待出来るし、完全回復したのは心強い。
さて、いつまでもここが安全とは限らないし、そろそろ移動した方がいいだろうな。
けどMAPも使えない状況で闇雲に動いても、敵をおびき寄せてしまうだけだろうしな。
「――――――主人、これを」
サフィルスが壁を指差した。
何もない無地の壁かと思いきや、近付くと地図のような記号が浮かんできた。
もしかして、天使族の遺跡の地図か?
全体図ではなさそうだが、この周囲の建物などが詳しく書かれていた。
遺跡というより本当に大都市ってレベルの規模だな。
どうやらこの辺りは一般居住区にあたる場所で、ここを抜けた先に何やら重要っぽい施設があるみたいだ。
とりあえずはそこを目指すか。
「よし、大体わかった。サフィルス、ここを出るぞ」
「――――――了解しました、主人」
周りを警戒しながら、オレ達は建物を飛び出した。この辺りはゴーレムの姿は見当たらない。
いや、チラホラ確認出来るが最初に現れた数ほどじゃない。
最初に連れて来られたあの辺りも、何か重要な施設があったのかな?
まあ、考えてもわからないか。
飛んでの移動は目立ちすぎるので、徘徊しているゴーレムに見つからないよう建物の影に隠れながら進んでいく。
さっきの地図を見る限り、この辺は一般人の住む居住区だと思われるのだが、ゴーレム以外見当たらない。
外から周囲の建物の中を確認しても、天使族らしき姿はどこにもない。
まあ天使族自体見たことないから、どんな姿なのかは想像するしかないのだけど。
白い翼を生やして、頭に輪っかでも浮かべている姿だろうか?
まさか、あの機械人形のようなゴーレムが天使族ってことはないだろうな?
――――――――――!!!!!
「侵入者ヲ発見。至急、増援ヲ求ム」
しまった、徘徊中のゴーレムに見つかった。
警報を鳴らし、周囲のゴーレムを呼び集めている。
「――――――敵はすべて殲滅します」
サフィルスが全身から刃物を出し、戦闘態勢に入る。傷が癒えたことでサフィルスもやる気満々だな。
しょうがない、まだ大した数が集まってない内に蹴散らしてしまおうか。
オレも剣を抜き、構えた。
「はあっ!!!」
襲いかかって来るゴーレム達を次々と斬り倒していく。油断出来ない強さではあるが、(神聖剣術)を使う程じゃないな。
「――――――ソード・フェスティバル」
サフィルスも身体中から無数の刃物を飛ばし、ゴーレム達を斬り刻んでいく。
どうやら関節部分を的確に狙っているようで、いくつか弾かれているものの、ゴーレム達を一体一体確実に倒している。
さっきの聖獣や、このゴーレム達を倒している経験値を得て、サフィルスのレベルはいつの間にか990まで上がっていた。
もう少しでレベル1000を超えそうだな。
レベル1000を超えたら、サフィルスも(超越者)のスキルを獲得するのだろうか?
この場に集まったゴーレムはすべて撃退した。
だが遠くから足音が聞こえるので、またすぐに増援が来そうだ。
「サフィルス、敵が来ない内にここを離れるぞ!」
「――――――了解しました、主人」
ゴーレムがまた集まってくる前に、オレ達は駆け出した。とりあえずは地図で見た施設まで走ろう。
もう、その建物は目と鼻の先だ。
――――――――――!!!!!
目的の建物が見えてきたと思ったら、何やら爆発音が響いてきた。
建物の入口付近に大量のゴーレムが集まっていて、何かと戦っているみたいだ。
トゥーレミシアか?
それともサフィルス以外の殺戮人形か?
ここからではゴーレムが壁になっていて、誰を相手にしているのか確認出来ない。
「ハハハハハッ!!! 精々耐えてみなっ!!! ブレイクショック!!!」
そんな声が聞こえるのと同時に、集結しているゴーレムの中心から凄まじい衝撃波が放たれた。
オレとサフィルスは足を止めて防御態勢に入った。
衝撃波によって、すべてのゴーレムが粉々に吹き飛んでいった。
一歩防御魔法が遅れていたら、オレ達もああなっていたかもしれない。
今の声、そしてこんな無茶苦茶なことが出来る奴には心当たりがある。
――――――――――!!!!!
ゴーレムの残骸の中から黒い影が飛び出し、オレに攻撃を仕掛けてきた。
オレは咄嗟にオリハルコンの剣で攻撃を受け止めた。
「············ん? 生き残りのゴーレムかと思ったら、レイじゃねえか。なんでお前がこんなところにいるんだよ」
攻撃の力を緩めず、さらにオレを押し込もうとしていたが、ようやくオレを認識したらしく止まってくれた。
「久しぶりだってのに、あんまりな挨拶じゃないか? バルフィーユ」
攻撃がもう来ないことを確認して、オレも剣を収めた。
やはりというか、オレに攻撃してきた黒い影は戦闘狂の魔人バルフィーユだった。
コイツと合流出来たのは運が良いのか悪いのか、判断出来ないな。