528 強制転移
突如現れた3体の謎のゴーレムの放った光に包まれて、オレとサフィルスは別の場所まで飛ばされていた。
やはり今の光は転移魔法の一種だったのか。
ここは一体どこだ?
周りは王都とは明らかに違う、なんというか近未来的な建物に囲まれていて、ファンタジー世界というよりSF世界に迷い込んだような気分だ。
「――――――ここは天使族の遺跡です、主人。どういった方法かはわかりませんが、主人を巻き込んだ上で連れ戻されてしまったようです」
ここが話に聞いていた天使族の遺跡なのか。
正直、想像していたのと全然違うな。
天使というから、花畑とかに囲まれた楽園のような場所かと思っていた。
「転送完了、改メテ侵入者ヲ排除シマス」
などと呑気に考えてる場合じゃないようだ。
3体のゴーレムが攻撃を仕掛けてきた。
両腕からレーザー光線を放ち、問答無用で殺す気としか思えない様子だ。
オレはサフィルスを抱えて、光線を避けた。
一歩遅れていたら蜂の巣になっていたかもしれないな。
結局は殺すつもりで攻撃するなんて、それならなんでわざわざ転移魔法を使ってまでここに連れ戻したんだ?
あの場で排除してもよかっただろうに。
························なんて考えてる場合じゃないな!
――――――――――!!!!!
オレは新たなオリハルコンの剣を取り出し、手加減無しの一撃でゴーレムの1体を斬り倒した。
ゴーレムはかなりの強度だったが、力を込めて無理矢理に斬ってやった。
コイツらはサフィルス達殺戮人形と同等の戦闘能力を秘めているみたいだが、本気を出せば今のオレの敵じゃない。
(超越者)のスキルを手に入れていてよかった。
「ギ······ギギッ」
「想定外ノ脅威ヲ確認。至急、排除ス······」
させるかよ!
残る2体が攻撃態勢に入る前に、まとめて斬り伏せた。
鑑定魔法で表示されないから予想するしかないが、やはりこのゴーレム達、サフィルスと同じか少し強いくらいだな。
――――――――――!!!!!
オレ達をここに連れて来た3体のゴーレムは倒したが、周りの建物から同型のゴーレムが次々と出てきた。
殺戮人形級の強さのゴーレムがただの量産機とか、冗談じゃないぞ。
倒せない相手じゃないが、これは倒してもキリがなさそうだ。
「サフィルス、もう動けるか?」
「――――――はい。自己修復は八割がた完了しています」
「それじゃあ、ひとまずこの場を離れるぞ!」
転移魔法で逃げようかと思ったが、どうやらここでは使えないらしい。
MAPも表示されないから、天使族の遺跡とやらの全容も掴めない。
サフィルスが天使族の遺跡では索敵魔法の類いが使えないと言っていたのは本当のようだ。
サフィルスも大分回復したようだし、とりあえずこの場から逃げよう。
オレとサフィルスは飛び上がり、ゴーレムの囲いから脱出した。
「――――――主人、追手が迫って来ています」
「ああ、わかってる」
ゴーレムの何体かが、飛び上がったオレ達を追いかけてきた。背中が変形してロケットのように飛び、オレ達に付いてきている。
どうやらすべてのゴーレムに飛行能力があるわけじゃないようだな。
追いかけてくるゴーレムを撃退しながら、安全そうな場所を探す。
広すぎて、どこに何があるかもわからないな。
このまま遺跡の外まで脱出しようかと考えたが、どうやら天使族の遺跡全体がドーム状の壁に覆われているため、それは出来そうにない。
どこかにあるはずの出入り口を探す必要があるのか。
飛んだままでは目立ちすぎて追手を振り切れそうにないから、とりあえずは敵がいなさそうな場所に降りよう。
「サフィルス、あの建物の中に入るぞ」
「――――――了解、主人」
周囲にゴーレムがいないのを確認して、適当な建物の中に隠れることにした。
建物の扉をぶち破ろうとしたが、扉は自動的に横にスライドして開いた。自動ドアか?
すんなり入れると思ってなかったから驚いた。
この建物は······中は特に何かあるわけでもない、だだっ広い部屋がいくつかあるだけだった。
搬入前の倉庫か何かか?
けど、床や壁はホコリ一つないくらいピカピカで、以前に何か置いてあったような形跡もない。
何の建物かわからないが、ゴーレム達がやってくる様子もないので、とりあえずは休めるな。
まずは状況を確認だ。
転移魔法は使えず、王都に戻ることは出来ない。
MAPも開けないので天使族の遺跡の全容も不明。
オレ達の現状を伝えようとミールに念話しようとしたが、何かに妨害されてるようにまったく繋がらない。
自力でここから脱出しようにも、まずは出入り口を探さないとならないのか。