522 天使族の遺跡の謎のゴーレム
魔人族視点になります。
(バルフィーユside)
神槍を使い、天使族の遺跡を覆っている結界を吹き飛ばした。もともとはナークの専用武器だっただけに、扱いがかなり難しかったが、まあこれくらいなら余裕だ。
――――――――――!!!!!
結界が消えて、天使族の遺跡が姿を現した。
思っていた以上に大規模だな。
「さあ、皆いくわよ」
トゥーレが先導して、俺達は天使族の遺跡の調査を開始した。
「遺跡って言うより、まるで大都市だな」
まず最初に出た俺の感想がそれだ。
遺跡というから、てっきり古臭い建物とかを想像していたが、結界を抜けた先には大都市と呼べる規模の街並みが広がっていた。
まあ、珍しいがあり得ない話でもねえ。
町や国規模を結界で覆い隠して、外部から完全に遮断して隠れ住む前例もあったらしいからな。
天使族も、何らかの理由で外部との接触を避けていたのか?
「しかし妙ですね。荒れ果てている様子はないが、生物の気配がまるで感じられない」
ガストが周囲を見渡し言う。
確かに俺の感覚でも、生物の気配は感じねえな。
やっぱり天使族ってのは、とっくの昔に滅びちまったのか?
「天使族が地上から姿を消したのは何千年も前という話よ。その時に滅びたのなら、こんなにキレイに街並みが残るはずないわよ。周りの建物を見る限り、そんな長い時間放置した感じじゃないし」
トゥーレが言うように、周囲の建物は整備されたように小綺麗に残っている。
道端には石ころ一つ転がってねえ。
何千年も前に滅びたんなら、もっとボロボロに荒れ果てているはずだからな。
だが、だとするなら天使共はどこに消えたんだ?
あんな強力な結界が張ってあったんだから、外に出たってわけでもないだろうしな。
「――――――天使〜、どこいるの? 隠れてないで遊ぼうよ〜」
「――――――ヴェルデ、暴れたら天使出て来るかな?」
殺戮人形の中でも特にお子様な性格のロセウスとヴェルデが我慢出来ずに、周りを探り出した。
大声で天使を呼んだり、建物を不必要にガンガン叩いてやがる。
「――――――ロセウス、ヴェルデ! 不用意に動くのはやめなさい。あ、プルルスも勝手な行動は慎みなさい! グライス、プルルスを止めなさい」
殺戮人形のリーダー格であるアウルムが、あちこちで勝手に動こうとする他の人形達に苦慮していた。
シルヴァラや他の比較的まともな性格の奴らもアウルムを手伝い、勝手な行動を取ろうとする奴を止める。
戦力を揃えるためとはいえ、殺戮人形を全員連れてきたのは失敗だったんじゃねえか?
戦力面ならアウルムとシルヴァラ辺りが居れば充分だろうしな。
当の人形使いは、殺戮人形共の勝手な行動をあまり気にせず、周囲の建物の調査に夢中になっている。
「この建物に使われている素材、見たことのない金属ね。魔人族や人族とは違った技術力を持っているみたいだわ。こうなると天使族の暮らしぶりも気になるわね」
やれやれ、ああなると声をかけても耳に入らないかもしれねえな。
天使族どころか他の生物の気配もねえし、俺からしたら退屈な調査になりそうだ――――――
――――――――――!!!!!
と思っていたら、周囲の建物の入口の扉が開き、何かが出てきた。
「生体反応、確認」
出てきたのは、見たことのないような金属に覆われた人型のゴーレムだった。
サイズは俺らより一回りでかいくらいで、ゴーレムとしては小型の部類に入るな。
数は······全部で5体か。
「ドノ認識番号トモ一致シナイ。侵入者ト判断。速ヤカニ排除シマス」
ゴーレムがそう言うと同時に、腕から突起物が生えてきて、そこから魔力の塊を放ってきた。
とんでもない力を込めた攻撃だ。
まあ、まともに喰らうようなトロい奴はこの場にはいねえから、全員それぞれゴーレムの攻撃を避けていた。(ガストはグライスに抱えられていた)
ゴーレムの攻撃が通った地面が見事に抉られていた。まともに喰らえば確かにやべぇかもな。
「ゴーレム? 天使族の使役している物かしら」
トゥーレが興味深そうにゴーレムを見る。
あんまり不用心に近付くんじゃねえぞ。
「あなた達と敵対する気はないわ。あなた達を使役する主人がいるのなら、一度話し合いを······」
「侵入者ハ排除シマス」
――――――――――!!!!!
対話を求めたトゥーレだったが、ゴーレムは問答無用で攻撃を加えてきた。
俺はすぐにトゥーレを抱え、ゴーレムから距離を取る。こりゃあ、話は通じそうにねえな。
「話し合いは無理っぽいな。ま、せっかくの歓迎だし、派手に暴れてもいいだろ?」
荒事なら、俺からすれば寧ろ望むところだ。
俺だけでなく、殺戮人形共も戦いたがっているようだしな。
「仕方無いわね。ゴーレムを全滅させれば主人が姿を見せるかもしれないし。けど、あのゴーレム達かなり強いわよ。バルフィーユは心配いらないでしょうけど、貴女達は気を付けて戦いなさい」
はっ、言われなくても心配いらねえよ。
殺戮人形共も、そこらのゴーレムにやられるほどヤワじゃねえだろうに、少しばかし過保護すぎやしないか?
まあ、いい。
退屈な調査になるかと思っていたが、これなら俺も楽しめそうだ。
天使族の使役するゴーレム······その力、見させてもらうぜ。