閑話⑳ 13 変態大無双(※)
※(注)お見苦しい表現があります。
(ローウルside)
目的のペンダントを持つ王女を見つけたが、霧の催眠作用は効いておらず、ペンダントも渡さないという姿勢だ。
王女の護衛騎士達が武器を抜き、男を取り囲む。
私はまだ王女達には存在を認識されていないので、黙って様子を伺うことにしよう。
護衛騎士は五人おり、全員女性だが王女を守る立場にあるため、皆相応の実力がありそうだ。
いくら男の腕が立つといっても、全員を相手にするのは厳しいのではないか?
「私の護衛騎士は、そこらの男には負けない実力があるわよ。下手に抵抗しない方が身のためよ?」
確かに王女の言う通りかもしれない。
隠密魔法で身を隠し、気付かれないようにペンダントを奪い、この場を離れるべきだったのではないか?
まあ、まだ私の姿は認識されていない。
護衛騎士達が男の相手をしている内に、私が隙を見て王女からペンダントを奪うことも考えよう。
「さあ、遠慮はいりません。どこからでもかかって来なさい」
裸同然の格好のため、男は武器も持っていない。
目のやり場に困る姿ではあるが、王女の護衛騎士がそんなことで動揺するはずもない。
「ああ言ってるのだから、本当に遠慮する必要はないわ。畳み掛けて、捕らえなさい!」
「「「はっ、ミューニィ様!」」」
王女の指示を受けて、護衛騎士達が一斉に男に斬りかかっていく。
男は冷静にすべての攻撃を受け流した。
あれだけの連続攻撃を捌き切るとは······。
「つ、強い······」
「ただの変態ではないのか······」
私も男の実力は知っていたつもりだったが、それでも見くびっていたようだ。
男が予想以上の実力があると、護衛騎士達も警戒を強めた。
「どうしました? 王女様の護衛を担う騎士がその程度ですかな?」
男が騎士達を挑発する。
それに黙っている騎士達ではなく、今度は四方より一斉に攻撃を仕掛けた。
あれでは避けるのは難しい。
そう思ったのだが、男は容易く護衛騎士達の攻撃を躱している。
「では、今度はこちらから攻撃しましょうか」
男がそう宣言すると、攻撃してくる護衛騎士達にカウンターで軽く当て身を食らわした。
怪我をさせるつもりはなく、完全に自身の実力の方が上だとわからせるための攻撃か。
「この程度で、我々は怯まぬ!」
だが、護衛騎士達も引きはしない。
王女の前で無様な姿は見せられないと、より表情を引き締めた。
「その意気や良し。ならば私も特別なお仕置きで、貴女達の忠誠心に対抗しましょう」
男が何やら構えを取る。
この男の口からお仕置きと聞くと、背筋が寒くなるのだが······。
「「「かかれっ!!」」」
護衛騎士達が再び男に向かっていく。
男は最初の騎士達の攻撃は今までのように受け流し、最後の五人目の攻撃は武器を直接素手で受け止めた。
「なっ······は、離せ!?」
「さあ、まずは貴女から、お覚悟を」
「何を······え、ぎゃああああっっ!!!???」
男は武器を止められ動揺していた騎士の頭を掴み、自らの下半身に押し付け、騎士は為す術もなく悲鳴をあげた。
男の予想外の行動に、他の騎士達や王女は呆然としていた。何故か貴族令嬢だけは、興奮気味にその様子に釘付けになっていたが。
「·············っっっ」
男の下半身から離された騎士は、口から泡を吹きながら気を失っていた。
なんの覚悟もなく、あんなことをされればああなるのもわかる。
王女の護衛という選ばれた立場にいる彼女達も、男慣れしていないようだ。
「さあ、次はどなたから来ますかな?」
男の言葉に、残りの護衛騎士達が震え上がっていた。やはりこの男はとんでもない変態だった。
「ひぃいい〜〜〜っ!!??」
「きゃああああっ!!??」
「ま、待ってくれ!? 私はそういう経験はまだ············いやあああっっ!!??」
「ああっ······こ、これはこれでっ!!??」
まさに阿鼻叫喚な地獄絵図だった。
残りの者達も次々と最初の騎士と同じ目に合わされ、あっという間に無力化されていった。
それを見ていた私も以前のことを思い出し、顔が熱くなってしまっていた。
私とて男性経験などなく、男のなどまともに見たこともなかったのだ。
だが不快かと言われるとそうでもなく、とにかく衝撃的だったとしか言えない。
私ももう一度あの男の············いやいや、何を考えているんだ私は!?
「さあ、残るは貴女だけです」
「ひっ······ひいっ!!?」
男に指差され、呆然としていた王女がビクッと反応する。完全に男に対して怯えている表情だ。
まあ、自身の護衛騎士達がされた仕打ちを目の当たりにすれば、ああなるだろう。
「あ、あの······正義の仮面様、わたくしは?」
どうやら男は、あのマレットという無関係の令嬢は特にどうこうする気はないようだ。
というかあの令嬢、男に対して恐れを抱いている様子がないな。
どういう神経をしているんだ?
まあそれよりも方法はどうあれ、これで王女の護衛騎士達は無力化出来たな。
これなら王女も素直にペンダントを渡すしかないだろう。