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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第七章 古代天上都市フェーマ 天使族の置き土産
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閑話⑳ 9 クラントール領主邸の騒動

 そうして領主の屋敷に潜入したオレとローウルは、目的の王女のいる部屋を目指した。

 王女専属の騎士団まるまる泊まれるだけあって屋敷の中は広く、普通なら迷いそうだが、MAPで確認すれば問題ない。


 事前情報によると、どうやら領主やその息子(確かノーマスという名だったかな?)は外出中で、屋敷にはいないようだ。

 王女(ミューニィ)や護衛騎士団、それに屋敷の警備やお手伝いさん達はいるので、探知魔法の反応は多いが。




「侵入者だ! すぐに捕らえろ!」


 隠密魔法で姿を隠していたんだが、すぐに見つかってしまった。

 城の中のセキュリティーは、オレが思っていた以上に万全だったようだ。


「ちぃっ、さっき侵入した時よりも強力な魔法と魔道具を使っていたのだが、これでも駄目か!」


 ローウルが軽く舌打ちをする。

 なるほど、これなら自称凄腕の怪盗が失敗したのも納得のセキュリティだ。

 などと考えてる場合じゃないな。




 警備の人達がどんどん集まってきたので、MAPで自分の位置を確認しつつ、駆け出した。

 逃げずに警備の人達を無力化することも可能だが、あまり大事にはしたくない。

 この状況じゃ、今更か?



「「「キャアアアアッ!!?」」」



 近くの扉を開けて、部屋に入り込んだら悲鳴が響き渡った。屋敷のメイドさんと思われる数人の女性達が、まさに着替えの真っ最中だったからだ。

 ここは更衣室だったのか? なんて考えてる場合じゃない。


「何をしているんだ!? 騒ぎを大きくしてどうする!」

「わ、悪い······」


 ローウルの叱責に反射的に謝った。

 言い争ってる時じゃないので、すぐに部屋を出て別の方へ走った。

 今の叫びを聞いて、さらに人が集まってきてしまった。もはや王女を捜すどころではない騒ぎだ。



 何か良い案がないかと考えていたら、オレの手には()()()()()が握られていた。







(ミューニィside)


 私は第四王女ミューニィ。

 今は帝都ではなく、辺境に位置するクラントールの町に来ているわ。

 この町は色々と騒ぎが起きていると、帝都にまで報告が来ていたのだけど、あまり重要視されていなかったため誰も積極的に調査に乗り出さなかった。

 そんな中、私が半ば押し付けられる形で、この町の視察に訪れることになった。


 最初こそ乗り気じゃなかったけど、この町では色々な発見があったわ。

 食べ物は美味しいし、私に似合う宝石も見つけたしで、来て正解だったわ。






「まさか、ミューニィ様直々にクラントールまで来られるとは思いませんでしたわ」

「ふふっ、お兄様やお姉様達は忙しいからね。私に白羽の矢が立ったのよ」


 視察という名目で来ているのだし、今日は一通り町を回り、今はクラントール領主の屋敷の一室で、久しぶりに知人と出会ったので楽しく談笑をしているわ。


 彼女はマレット=ライランクス。

 ライランクス家は貴族の中でも上位に位置する名家であり、本来はこのような辺境の地に家を構えたりしないのだけど、帝都での権力争いから遠ざかるために、一時的にクラントールに住んでいるのだったわね。

 帝都に居た頃は、年も近く、マレットとはよく一緒に過ごしていたのだけど、元気そうで何よりだわ。


「マレットはこんな地······というのも失礼かしら? この町に居て、不便はないの?」

「ええ、以前は食べる物が不足していたり、町に魔物が攻め込んできたりで大変でしたけど、今はご覧の通り不便はありませんわよ」


 マレットの様子を見る限り、どうやら心配することじゃなかったみたいね。


「食料不足の解消は、あのレイという他国の貴族の働きのおかげなのよね? 私が見たこともないような果実を作っていたけど、マレットは彼のことを何かご存知かしら?」

「ごめんなさい、わたくしも詳しいことはわかりませんのよ。けど、悪い方ではないのは間違いありませんわ。住民の方々に配っているのも、純粋な善意からみたいですし」


 本当、信じられない話なのだけど。

 あそこで作られている果実、帝都で販売すれば金貨が飛び交うほどになるでしょうに、それを庶民、貴族問わずに無償で分け与えているなんて。


 そして、そのことをこの町の領主のフォーサイハン家が黙認しているのも気になることだわ。

 欲深いと、よく耳にするフォーサイハン家の当主が何もせずに野放しにするとは思えないのだけど。


「それに関しては、わたくしも詳しくは存じないのですけど、彼らと領主様との間で、何やら話し合ったそうですわよ」


 つまりは他国の貴族である彼と交渉して、双方が納得する形で決着がついたということなのね。

 その内容が気になるけど、それは後日聞いてみることにしましょう。


「魔物の件については、本当に大丈夫だったの? この町の警備兵は、私の護衛騎士達に比べて頼りないし、正直まともに対応出来たとは思えないのだけど」


 話を聞く限りだと、()()()()強力な魔物の群れに襲われたそうなのだけど、犠牲者はいないとのこと。

 次期領主のノーマスの話だと、()()()が自分達を救ってくれたと言っていたけど、リヴィア教の聖女がこの国にやってきたという話は聞いていないのよね。


「ええ、そうですわね。わたくしを見捨てて逃げ出した不届き者もいましたわ。ですが、もう駄目かと思った時に()()()()()()()が颯爽と駆けつけ、わたくしを救ってくださいましたわ」

「正義のヒーロー? そんな人がいるの?」

「最近は姿を見なくなってしまいましたが、とても逞しく男らしい方ですわよ。ああ······思い出しただけで胸がドキドキしてきますわ」


 マレットがまるで恋する乙女のような表情で、そう言った。この町に、そんな正義のヒーローを名乗る存在がいるなんて意外だわ。

 マレットがここまで言うなんて、どんな人物なのかしら?



 少し興味が出てきたし、会ってみたい気もするけど、そんな都合の良く私の前に現れたりするわけないわよね。

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