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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第七章 古代天上都市フェーマ 天使族の置き土産
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閑話⑳ 5 怪盗捕獲

 クラントールの町の領主の屋敷から飛び出してきたのは、以前にもアルフィーネ王国王都で盗みを働いていた、怪盗ローウルだった。

 怪盗を追って領主の屋敷からは、警備の人達が続々と出てきた。


「仲間もいたのか! 絶対に逃がすなっ!」

「王女様の私物に手を出すとは、不届きな奴らめ!」


 ヤバい、オレまで怪盗の仲間だと思われている。

 この状況では誤解だと言って弁明したとして、素直に信じてくれるかわからない。


「後は任せたぞ、()()!!」


 怪盗ローウルは、そう言ってオレの肩を叩いて駆け出した。

 コイツ、警備の人達が誤解しているのをいいことに、オレを巻き込みやがった。

 こうなると、ますます誤解を解くのが難しくなった。


 怪盗は背中から蝙蝠のような翼を生やし、飛び上がった。そういえばコイツ、人族ではなく、吸血鬼(ヴァンパイア)とかいう特殊な種族だって話だったっけ。


「ふはははっ! では、さらばだ!!」


 怪盗はそのまま、一目散に飛び去っていってしまった。追おうにも一歩遅れてしまい、探知魔法からも反応が消えてしまった。

 さすがは怪盗、逃げ足が早い。


「逃がすなっ、あの男だけでも捕らえるんだ!」


 ヤバい、このままだとオレだけが捕まってしまう。オレもこの場から逃げ出し、隠密魔法を駆使して警備の人達を上手く撒くことにした。








 なんとか、あの場は逃げ出せたが、怪盗もまんまと逃がしてしまったな。

 どこへ逃げていったのだろうか?

 もう町の外に出てしまったのか、それともまだ町の中に潜んでいるのか。


 捜そうにも、オレも怪盗(あいつ)の仲間だと誤解されてしまっているんだよな。

 距離があったから警備の人達にはオレの顔をハッキリとは見られていないと思うが、あんまり町の中をウロウロせず、ひとまず帰るとしよう。




 というわけで屋敷まで戻ると、後片付けはすでに終わっていたようだ。

 ディリーとアトリが、住人達と和気あいあいと話しているのが見えた。


「おかえりなさいですです、マスター」

「片付けは、すでに完了しています」


 戻ったオレを二人が出迎えてくれたので、オレも労いの言葉をかけた。

 今日の仕事は終わりだと、住人達も帰っていったので、オレも久しぶりのクラントールの屋敷で休むとするかな。

 態度には出さないけど、ディリーとアトリも疲れているかもしれないからね。



 そう思って屋敷の中に入ろうとしたのだが、何やら人の気配を感じる。

 住人達は帰ったし、王女の連れていた騎士団も全員引き上げていたはずだが、まだ誰か残っていたのか?


 とはいえ入口の扉に手を掛けるまで、オレも気配に気付がなかったし、探知魔法での反応も希薄だ。

 これ、ひょっとして気配を消すような隠密魔法を使っているんじゃないか?


「敵の気配ですです? マスター」

「お下がりください、マスター様。わたしが確かめて参ります」


 ディリーとアトリも気付いたようだ。

 アトリが前に出て、屋敷に入ろうとしたが、オレは手で制した。


「いや、オレが調べるよ。泥棒だった場合、二人とも逃さないように警戒しておいて」


 怪盗の次は泥棒かと、げんなりしそうになったが、ここは油断しないように気を引き締めよう。

 泥棒かわからないが、扉越しに耳を当てると物色しているような音が聞こえる。

 オレは勢いよく扉を開けた。


「誰だ、そこにいるのは!?」

「何っ、気配を絶っていたはずなのに何故······って、またお前か!?」


 中にいたのは、狐のお面をつけた黒装束の人物······怪盗ローウルだった。

 コイツ、逃げたと思ったら、早速また盗みを働いていたのか。

 それも、よりにもよってウチで。

 怪盗も意外そうな反応を見せているので、オレを狙って屋敷にいたわけでもないらしい。


「逃さないですです!」

「何者か知りませんが、おとなしく観念なさい」


 怪盗が逃げようと駆け出したが、ディリーとアトリが入口を塞いだ。

 怪盗は一瞬、たじろいだが、すぐに気を取り直して懐から数体の人形を取り出した。

 そうだ、コイツは人形を自在に操れる、人形使いでもあったんだ。


 人形を囮にして、二人の気を逸らすつもりのようだが、そうはさせるか。


「悪いけど、それは使わせないよ」

「ちょっ······うわっ!?」


 オレに腕を掴まれたことに驚き、人形を床に落とし、怪盗自身もバランスを崩してしまう。

 オレも怪盗に引っ張られる形で、一緒に倒れ込んでしまった。



――――――――――ムニョンッ



 咄嗟にオレは、右手に柔らかいモノを掴んでいた。これは怪盗の······。


「ひゃっ······は、破廉恥な!? て、て、手を離せ!」


 狐のお面が外れて、羞恥で真っ赤に染まった怪盗の素顔が露わとなった。

 そうだった、怪盗ローウルは女の子だったっけ。

 知ってはいたんだけど、今は忘れていた。


 そして、言うまでもないかもしれないがオレの右手が掴んでいるのは、怪盗ローウルの胸だった。

 ローウルはオレよりも少し年下の容姿だけど、胸は思っていたよりもサイズのある、とても良い感触だ。


「さっさと離せと言ってるんだ! いつまで揉みしだく気だ!!」


 ローウルが羞恥と怒りが入り混じった表情で叫んだ。

 つい、手を離すタイミングを逃してしまっていたが、言うほど揉みしだいてはいないのだが。

 一応、一言謝ってから手を離した。



 まだ興奮気味だが、とりあえずは逃げようとする素振りはなくなったし、落ち着いたら怪盗の目的を聞き出すとするかな。


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