505 妖精の国の殺戮人形
神薬を飲ませたことで、テリアの体力が回復している。まだ目を覚まさないけど、鑑定魔法で見る限りでは特に異常はない。
しばらくは様子見かな。
「ありがとうございます、レイさん! テリアの顔色が良くなってきているので、もう大丈夫だと思います」
テリアの容態が回復して、エレナが嬉しそうにお礼を言った。意識が戻るまでは安心出来ないが、テリアは小さく先ほどまでは聞こえなかった寝息をたてている。
リンやセーラも、その様子を見て安堵していた。
「そういえば、ユウ達はどこに行ってるの?」
疑問に思っていたので聞いてみた。
ユウ達が、この状態のテリアをほったらかしにしておくとは思えないのだが。
「ユウさん達なら、精神を癒す薬草を採取しに、外の森に行っています」
オレの疑問にセーラが答えてくれた。
妖精族の住む浮島の森では、色々な薬草が採れるらしい。
ユウ達もテリアのために何か出来ることはないかと、行動していたってことか。
「――――――あれあれ? テリちゃんの顔色が良くなっているね、ね。ユウ君達に頼まれて急いで届けに来たんだけど、もしかして必要なかったかな、かな?」
両手いっぱいに薬草を持った女の子が部屋に入ってきた。整った可愛らしい容姿で、茶色い髪とそれと同じ色の翼を生やした少女だ。
妖精族ではないが、人族でもなさそうだ。
というか、この少女······どことなく見覚えのある顔立ちだが。
「あれ、プルルスじゃん。なんでここにいるの?」
「――――――ありゃ、メリッサ? そっちこそ、なんでここにいるのかな、かな?」
メリッサが茶髪の少女を見て声をかけた。
少女の方もメリッサを見て、意外そうな反応だ。
「メリッサ殿、知り合いでござるか?」
「うん! プルルスって名前で、アチシと同じトゥーレの子だよ」
シノブの問いに、元気良く答えた。
ってことは、この子は人形なのか。
見た目がサフィルス達とよく似ていると思ったんだよな。
[プルルス] レベル960
〈体力〉98000/1085000
〈力〉104000〈敏捷〉197600〈魔力〉142500
〈スキル〉
(神将の加護〈大〉)(状態異常耐性〈極〉)
(身体強化〈極〉)(同時詠唱)(大地の龍脈)
(願い星)(限界突破)(――――――)(――――――)
レベル900超えで、ステータスがサフィルス達と同じくらいある。
やっぱりこの子は殺戮人形の一体か。〈体力〉がやけに減少してるのが気になるけど、まあそのことはいいとして、なんでトゥーレミシアの殺戮人形がここにいるんだ?
ユウ達に頼まれて薬草を持ってきたって言っていたけど、やけに親しげだな。
「――――――ボクはプルルス! よろしくね、ね」
人形の子、プルルスがウインクしながら笑顔で名乗った。
詳しい話を聞くと、あの幻獣人族の里に現れたガストとかいう魔人が龍人族の国にも現れて、少しばかし騒動を起こしたらしい。
この子とグライスという2体の殺戮人形は魔人の護衛として同行していたとか。
魔人とグライスはすでに魔人領に撤退していったみたいだが、プルルスだけはユウ達を気に入り、ここに残ったそうだ。
本当にこっちでは色々なことがあったんだな。
「――――――へ〜、そのシノブって子と、そっちの男の人も勇者なんだね、だね。ユウ君も強かったけど、その二人からはそれ以上の力を感じるかな、かな?」
プルルスがオレとシノブの顔を交互に見比べる。表情豊かで人懐っこい性格みたいだな。
殺戮人形と呼ばれる存在とは、とても思えない。
鑑定魔法でステータスを確認しなかったら、普通に無邪気な子供としか思わなかったかも。
「――――――そっちの子は獣人? なんか違うかな、かな? もしかして幻獣人族ってやつ? うっわ〜、珍しいね、ね」
今度はスミレの方に目を向けた。
好奇心旺盛な子だ。
スミレは特に反応することなく、無表情のままだ。なんだかスミレの方が人形っぽいな。
「ねぇ、プルルスさん。ユウ達は?」
「――――――ああ、エレちゃん。ユウ君達なら、もう少し薬草を集めてから戻るって言ってたよ、よ」
エレナの問いに、プルルスが答える。
ユウ達は、まだしばらくは戻って来なさそうだな。
あのマティアって子も、一緒に薬草採りに行っているらしく、シノブ達も会いたがっていたので、少し残念だな。帰って来るまで待つか?
テリアもその内に目を覚ますだろうし、とりあえずは一件落着だ。
時間潰しに妖精族の城を見て回ろうかな。