503 妖精族の浮島へ
リンから龍人族の国での出来事を教えてもらった。
浮島に住む妖精族を支配した魔王軍幹部率いる魔人族が、その浮島を利用して、龍人族の国に攻撃を仕掛けてきたらしい。
黙って見てるわけにはいかない龍人族側は、ユウ達と共に浮島に乗り込み、魔王軍幹部の魔人含む、元凶達を捕らえることに成功したとのこと。
魔王軍幹部と言っても、神将ほどの実力はなかったようだな。フレンリーズ王国に現れたギュランという魔人くらいの強さかな?
ちなみに魔王軍幹部はゲーエルという名で、今は他の魔人ともども龍王の城で拘束中だとか。
「魔人達は龍人族や妖精族、それにユウさん達の活躍で、それほど苦戦せずに鎮圧出来ました。問題だったのは、ゲーエルが妖精族の浮島中にばら撒いた魔虫の方で······」
話を聞く限り、どうやらエルフの里で神将ダルクローアが使っていたのと同じ、生物に寄生して操る型の魔虫のようだな。
その魔虫にテリアが寄生されてしまったのか。
テリアはかなりの実力者であり、レベルは以前見た時はスミレ達と同じくらいあったはず。
もしかしたら、今はもっと強くなっているかもしれない。
そんなテリアが魔虫に寄生され、操られてしまったら、魔王軍幹部を相手にするより、ずっとヤバいだろう。
どうにか寄生した魔虫をテリアから追い出し、倒すことは出来たようだが、未だに意識不明というのが現状か。
ダルクローアが使っていた魔虫も、長く寄生されていると生命力や魂の力が吸い尽くされ、手遅れになるという話だった。
テリアは寄生されて、そんなに時間は経っていないはずだし、まだ手遅れではないはずだ。
「それで、テリアはどこに? 龍王の城?」
「龍王の城ではなく、妖精女王の城で治療中です。妖精族は魔法が得意な種族で、精神系の治療も行えますので」
妖精女王の城というと、上にある浮島か。
ユウや聖女セーラ達も、そこにいるようだ。
それにしても、あんな大きな島が浮いてるなんて、改めて、ここはファンタジーな世界なんだと実感するな。
「話は済んだか? なら、すぐに飛び立つぞ」
リンの後ろから、フードを被った人物が姿を現した。冥界の神の使いを名乗っていた、メデューサの少女ジャネンだ。
この子も、まだ龍人族の国にいたのか。
側には霊獣カオスレイヴンが待機している。
「すみません、ジャネンさん。お願いします」
どうやらリンは、ジャネンの使役する霊獣に乗せてもらって、浮島から降りてきたようだ。
「また会ったな。もう一人の勇者······レイだったな」
「ああ。前に会った時より、顔色が良くなってるな。もう神将に受けた傷は大丈夫なのか?」
ジャネンの肌は少し灰色っぽいのでわかりづらいが、以前よりも血色が良いように見える。
「へ〜、フードから蛇みたいなのが少し見えてるけど、もしかして冥界のメデューサ族かな? うっわぁ〜、珍しいね」
メリッサがオレ達の間に遠慮なく入って、ジャネンの顔を覗き込んだ。
メリッサは前に龍人族の国に来たことがあったけど、その時はジャネンと顔を合わせなかったんだっけ?
ジャネンは顔をしかめながら、メリッサから視線を逸らす。
「ところで、レイさん。今、気付きましたけど、シノブさんとスミレさんを連れて来たのはともかく、何故、魔人の手先である、その少女がいるんですか?」
リンがメリッサを見て、警戒している。
以前、メリッサが来たのは、魔人バルフィーユと共に龍王の城を襲撃した時だからな。
オレと一緒にいるから、その程度の反応だっただけで、本来なら問答無用で捕らえるなり、攻撃を仕掛けてもおかしくない。
「ああ、メリッサとは実は――――――」
オレはメリッサを側に置くことになった出来事を簡単に話した。
バルフィーユが幻獣人族の里に現れて、なんやかんやあってメリッサともう一人の魔人を置いていったことを。(本編322話辺りを参照してください)
「そんなことがあったんですか······」
オレの話を聞いて、リンが思案顔を見せる。
まあ、こっちはこっちで色々あったからな。
「師匠、リン殿も。今はそれよりも、テリア殿のことが先決でござるよ」
シノブの言う通りだな。
積もる話は後でいいだろう。
テリアの容態を見たら、改めてリンやセーラ達と色々と情報交換しよう。
オレ達は霊獣カオスレイヴンの背に乗り、妖精族の住むという浮島へと向かった。