62 スミレとエアリィに事情を話す
次の日、エアリィの指導でスミレが仕事を覚えていく。なかなかの働き者であると同時にすごく大食いだ。
よほどここの食事が気に入ったようで、あの小さい身体のどこに入るんだというくらいよく食べる。
シノブや他の子供達ともうまくやっているようだし、このまま特に問題も起きないだろう。
そう思っていた時期がありました。
問題は更に次の日の朝に起きた。
オレは朝起きるのが苦手で大抵シノブかエアリィに起こされる。
(全状態異常無効)スキルでも朝が弱いのは直らないらしい。
その日も夢うつつで目覚めた時、下半身に違和感を感じた。フトンの中に何かいると思ってめくって見ると···········。
「······ん、おはよう······」
スミレがいた。
ここでは表現してはいけないことをしている。
「スミレ······何をしているんだ?」
「······朝のご奉仕······?」
何故疑問系?
「そんなこと、どこで覚えた?」
「ご主人様の部屋の書物······」
ふと本棚の方に目を向けると裏に隠していた所謂お宝本が散乱していた。
見つかった!? スミレはそれを読んだのか。
というかご主人様ってオレのことか?
「レイはボクのご主人様······たっぷり尽くす······」
オレの奴隷になっていいとは言ってたけどここまでするとは思わなかった。
[スミレ] レベル105
〈体力〉7750/7750
〈力〉3120〈敏捷〉3540〈魔力〉2510
〈スキル〉
(幻獣化〈✕〉)(身体強化〈中〉)
(異世界人の加護〈小〉〈NEW〉)
スミレのステータスが大幅に上がっている。
いつの間にか(異世界人の加護〈小〉)のスキルが加わっていた。
[レイ] レベル398
〈体力〉27700/27700
〈力〉19800〈敏捷〉17850〈魔力〉29200
〈スキル〉
(全状態異常無効)(素材召喚)
(獲得経験値10倍)(同時詠唱)(暴食)
(各種言語習得)(異世界の絆〈2/5〉)
オレのステータスも大幅に上がっている。
絆スキルの数字が1つ上がっていた。
「その書物に書いてあった通りにやった············
······満足?」
そんな無垢な目で言われても返答に困る。
「スミレ、別にこんなことをしなくてもいいんだぞ?」
「大丈夫······やっててボクも楽しかった······」
「いや、そう言われてもな······」
何て言えばいいんだ?
どうするべきか困っていた時に············。
「コラァーッ! レイ!! まだ寝てるノヨ!? スミレが起こしに行ったのにどれだけ寝てるノヨ············へ?」
エアリィが勢いよく部屋に入ってきた。
そして今のオレとスミレの状況を見て一瞬固まる。
「キャアアアーッ!!? な、な、な······何やってるノヨ!?」
真っ赤になって目を逸らしながら叫ぶエアリィ。
「······エアリィ、うるさい······せっかくいい所だったのに」
珍しく不満そうな口調と表情をするスミレ。
いい所だったって何がだ?
いやそれよりもエアリィにこの状況をどう説明すればいいんだ?
「エアリィ、ちょっと話を······」
「キャッ······そ、それより先にそれを仕舞いなさいなノヨ!?」
エアリィはオレの下の方を指差して言う。
その騒ぎを聞いて更に部屋に入ってくる者が現れた。
「朝から騒がしいぞレイ、一体どうし······」
「何の騒ぎでござるか?」
アイラ姉とシノブだ。
オレ達の状況を見てアイラ姉達はエアリィ同様に一瞬固まる。
「一体これはどういう状況だ!? レイ、スミレ!!」
アイラ姉の怒号が響いた。
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アイラ姉を宥めるのにかなりの時間を要した。
当然本棚に散らばっていたお宝本は没収、焼却処分行きとなった。
オレの(素材召喚)を使えばまた出せるんだけどしばらくはそういう本は出さない方がいいだろうな······。
スミレはアイラ姉のお説教を受けている。
しかし何が駄目なのかわかっていないように首を傾げている。
「まったく······少しは自重しろレイ」
「ごめんなさい······」
スミレの行動はオレのせいじゃないのでは、と思ったが素直に謝る。
「スミレ殿も加護をもらったでござるか。拙者も師匠の加護が欲しいでござるな」
シノブがそんなことを言い出した。
同じ世界出身では加護は与えられないんじゃないかな?
いやわからないか。
けどまさか試すわけにもいかないしな。
「加護って何の話なノヨ?」
エアリィは加護のこともオレ達が異世界人だということも知らないんだったな。
どうする、誤魔化すか?
いや······一緒に住んでいるしある程度オレ達の事情も話しておいた方がいいかな。
スミレにも加護がついた以上話した方がいいだろうし。
「エアリィ、スミレ、この話は他の人に言ったら駄目だぞ?」
一応釘は刺しておく。
特にエアリィは口が軽そうだからもし話したらここから出ていってもらうことになると半分脅しを入れて。
「――――――というわけなんだが」
エアリィとスミレに加護のことやオレ達が異世界人だということを話した。
「へえ~、レイ達って別世界の住人だったノヨね。色々納得いったノヨ」
エアリィが言う。
スミレは特に反応はないな。
「納得いったってエアリィは異世界人について何か知っているのか?」
「アタシは見るのは初めてだけどかつて妖精族の里に訪れた勇者が別世界の住人だって話は聞いたことあるノヨ」
またかつての勇者か。
前にも勇者が異世界人だって話は聞いていたな。
「妖精族って臆病で人とは関わらないんじゃなかったか? 勇者は妖精族の里に何しにきたんだ?」
「確か当時の魔王を倒すために妖精族に協力を求めてきたとかなノヨ? 何百年も前の話だからアタシも詳しくは知らないノヨ。」
エアリィの話しによると勇者は妖精族に何らかの力添えを求めてきたらしい。
その見返りに色々と規格外なことを妖精族にもたらしたそうだが。
「その勇者は魔王を倒した後はどうなったんだ? 元の世界に帰れたのか?」
「だーかーらー、アタシも詳しく知らないって言ったノヨ! そんなこと知らないノヨ」
う~んわからないか。
けど妖精族のお偉いさんなら何か知っているかもしれないな。
もし妖精族の里に行くことがあったら聞いてみたいな。
元の世界に帰る手がかりは少しでも手に入れておきたい。