閑話⑲ 1 事情説明(※)
※(注)もう少しだけ閑話を挟みます。
そして、変態男が登場します。
「じゃあ、レイ君。改めて、ちゃんと説明してくれるかな?」
オレは今、エイミに尋問されていた。
ちなみに、ここはエルフの里にあるエイミとミールの実家の一室だ。
二人の両親であるメアルさんとデューラさんは、エルフの長老達の所に話し合いに行っているため、ここにはいない。アイラ姉やルナシェアもその話し合いに参加している。
シノブはメリッサとスミレを連れて、転移魔法で王都に戻っている。
なので、この場にいるのはオレとエイミ、そしてミールの三人だけだ。
「えっと······」
エイミに何について尋問されているのかというと、例の黒いマスクについてだ。
色々あって、はぐらかしてきたけど、エイミにも仮面男の正体がオレだと知られてしまったんだよな。
そのことについて、強く追求されている。
どういうことかと言われても、オレ自身、この黒いマスクについては何もわからない同然なんだが。
とりあえずはミールにも説明したように、元の世界にいた時から、何故か手元にあった黒いマスクについてのこと。そしてマスクを着けた時は、オレの意思に反して身体が動いてしまうことなどを話した。
あの格好はオレの趣味ではないと、特に強調しておいた。
「これが、仮面の人の······。何かが取り憑いてる特殊なアイテムってことなのかな?」
「多分、そうなのかな?」
エイミがアイテムボックスから取り出した例のマスクを興味津々に見ている。
エイミの言う通り、確かに悪霊の類が取り憑いていても不思議ではない。
だから無意識に身に付けてしまうし、ああいった行動を取ってしまうとも言える。
「まあ、悪い効果ではないのでいいんじゃないですか? 悪いことをした人を懲らしめたり、人助けをするだけで、何か被害を出したりはしないんですから」
ミールがなんでもないように言う。
いや、良くはないと思うが。
「これではっきりしてよかったですね、姉さん。お仕置きとして受けたのが、見ず知らずの男性のモノではなくて」
「な、なななっ、何のことを言ってるのかな、ミール!?」
ミールの発言に、エイミが顔を真っ赤にする。
そして、おそるおそるオレに質問してきた。
「あの恥ずかしい格好は、レイ君の趣味じゃないんだよね?」
「あ、ああ、それはもちろん」
それだけは断言しておく。
趣味だと思われたら、たまったものじゃない。
「ねえ、ミールはいつから仮面の人の正体を知ったの?」
「学園内でレイさ······ではなく、仮面の人物と決闘した日ですね。あの日にレイさんに詰め寄ったら、白状しましたよ」
「そんなに前から知ってたの!?」
あれはミールに嵌められて、白状せざるを得なかったのだが。
というか、この話題、早く終わってほしい。
「正体についてはシノブさんやスミレさんは知ってるようですけど、アイラさんは知らないみたいですね。知っている人の方が少ないですよ。ルナシェアさんは、レイさんをかなり疑っていましたが」
ミールが言うように、ルナシェアは確証がないだけで、すでに感付いていると思う。
未だに誤魔化してはいるけど。
「これってレイ君以外が着けたら、どうなるの?」
「さあ······? 試そうとも思ってないし」
エイミがそんなことを言う。
以前にミールも、自分が身に付けてみようかと言い出したことがあったが、呪われかねないのでやめた方がいいと止めたんだよな。
「なんなら、姉さんが身に付けてみたらどうですか?」
「や、やらないよ······!? レイ君、これ返すねっ」
ミールに言われ、エイミが慌ててオレの方に例のマスクを差し出してきた。
そのまま、何事もなく受け取れればよかったのだが、慌てていたため、エイミが足をつまずいてしまった。
そして、狙ったかのようにオレの頭にすっぽり被された。
(ルナシェアside)
エルフの里での騒動も解決し、後始末もある程度の目処がついたであります。
近くの町に待機していた、神殿騎士や小生の叔父でもあるソールド騎士隊長もエルフの里に呼び、復興を手伝っているであります。
聖女の試練も達成したでありますし、そろそろエルフの里での役目も終わりでありますな。
時間が出来たので、レイ殿と話をしようかと思ったでありますが、姿が見えないでありますな。
アイラ殿に聞くと、どうやらレイ殿達はエイミ殿とミール殿の実家で休んでいるようであります。
ハーフエルフということで、エルフの里はエイミ殿達にとって居心地の良い場所ではないらしく、なるべく里の住人の目に触れないように実家にいるそうであります。
レイ殿はお二人に付き合ったのでありますかな。
過去の悲劇はダルクローアという魔人が元凶だと、里の住人にも知れ渡ったでありますが、だからといって、そう簡単には割り切れないこともあるでありますからな。
それについては、お二人の両親であるメアル殿とデューラ殿が長老と話し合っていたので、小生が口を挟める問題ではないであります。
ともかく、お二人の実家に行こうとしたでありますが、場所がわからないでありました。
場所を聞こうにも、メアル殿とデューラ殿は、まだ長老や他のエルフ達との話し合いが続いているので、しばらくかかりそうであります。
「ルナさん、それならアタクシが案内いたしますわよ」
丁度、小生と同じく手の空いたフェニア殿がそう言ってくれたであります。
エルフであるフェニア殿なら、里の案内をお任せ出来るでありますな。
ここはご好意に甘えておくであります。
フェニア殿の案内で、エイミ殿達の実家に向かうであります。
結構、他の方々の住まいから離れた場所にあるのでありますな。
「お恥ずかしい話ですけど、エイミさんとミールさんがハーフエルフということで、特異な目で見てしまいますからね」
だから人目につかない、離れた場所に住んでいるでありますか。
あまりに不憫な扱いでありますな。
でも、フェニア殿のように奇異な目で見ない人もいるので、この先変わっていくといいでありますな。
そうして話ながら歩いていると、お二人の実家に着いたであります。
さっそく玄関をノックしようかと思ったら、何やら中が騒がしいような?
そう思った次の瞬間、玄関の扉が開かれたであります。
「おや、これはこれは。誰か来たのかと思えば、聖女ルナシェア殿にフェニア殿でしたか」
小生達を迎えてくれたのは、黒いマスクを被った半裸の人物······正義の仮面殿でありました。
何故、この方がここにいるでありますか?