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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 16 追い詰められた魔虫

――――――(side off)――――――――


 妖精女王の城を飛び出した、テリアとプルルスが激しい戦いを繰り広げていた。

 リュガント率いる龍人族の戦士達も駆けつけていたが、あまりに激しい戦闘に手を出せずにいた。



「――――――ストーン·シャワー!!」

妖幻流星矢(ようげんりゅうせいや)!!」


 二人の戦いは、ほぼ互角に見えたがプルルスの方が若干押されていた。

 テリアの放つ矢を受け、血は流れていないが、身体中に傷が目立ってきていた。

 プルルスは自己修復機能を持っているが、それでもテリアから受けるダメージの方が大きいようだ。


「人形風情が、やはりその程度か。殺戮人形(キラードール)などと、笑わせてくれるな」


 テリアがプルルスを嘲笑する。

 その表情を見るに、もはやテリアの人格は魔虫に完全に支配されていた。


 しかし、プルルスもやられっぱなしではない。


「――――――虫なんかに笑われるのは我慢ならないね、ね。それならボクの本気を見せてあげる。ユウ君、悪いけど、殺さないように加減するのは無理っぽいかな、かな」


 プルルスが全身に魔力を巡らせる。

 そして、いつもの無邪気な笑顔とは明らかに違う、凶悪な笑みをうかべた。


「――――――リミッター解除」


 次の瞬間、プルルスは目にも止まらぬ速さで、テリアに迫っていた。

 あまりに速すぎる動きに、テリアはまったく反応できなかった。


「な、なにっ······!?」

「――――――殲滅対象確認。排除実行」


 そのままの勢いでテリアの身体を掴み、叩きつけた。プルルスは、さらに攻撃を加え続ける。

 その姿は、さっきまで無邪気な笑みをうかべていたプルルスとは、別人のようだった。


「ぐっ······人形ごときがっ」


 テリアが一度距離を取り、(物質具現化)スキルで弓矢を作り出して次々と放つが、プルルスはそれをすべて弾き落とした。


「――――――天変地異(カタストロフィ)!!!」


 プルルスが両手を掲げると、大きく地響きが起き、テリアの足元が激しく隆起した。

 そしてバランスを崩したテリアを呑み込むように、地面が大きく裂けた。


「バカな、さっきまでとは戦闘能力が違いすぎる······!?」


 寸前で飛び上がり、なんとか避けたが、すでに大きなダメージを受けているため、思うように動けない。

 そんなテリアを、プルルスは休む間もなく攻め続ける。


「ごふっ······!? き、貴様······理由は知らないが、勇者に加担しているのだろう? こ、この身体(テリア)を壊すつもりか······!?」


 防戦一方になったテリアがそう言うが、プルルスはお構いなしに攻撃を続ける。

 そして、トドメと言わんばかりに両手に、これまでとは桁違いの魔力を込め、テリアに向けて放った。



――――――――――!!!!!



 プルルスの放った一撃が、テリアに命中した············と思われたが、そうはならなかった。


「プルルス、悪いけど、それ以上はやめてくれるかな? ここからはぼくがやるから」


 テリアとプルルスの間に、聖剣を構えたユウが立ち、攻撃を受け止めていた。


「――――――ユウ君?」


 ユウの姿を見て、だんだんとプルルスの表情に、いつもの無邪気さが戻る。


 城の方からは、妖精女王やシャルルア達も次々と駆けつけた。


「ユウ、無茶をするでないぞ!」

「大丈夫だよ、ルル。皆はプルルスのことを見てあげて。テリアはぼくが助けるから」


 シャルルアや他の皆が心配そうに言うが、ユウはそのままテリアに目を向ける。

 シャルルア達はユウの言葉を聞き、プルルスの様子を見た。人形であるプルルスは疲れを感じないはずなのだが、今は先ほどまでの暴走状態の反動で、疲労困憊の様子だ。




「勇者······。その状態で我が前に立つとは、呪いを抑え付けているのか」


 プルルスから受けたダメージはまだ大きいようで、テリアはふらつきながら、立ち上がる。


「お前は魔虫なんだろ? テリアの身体を使って、勝手に喋るのはやめてほしいね」

「············あら、わたしは正真正銘テリアよ? そんなふうに言うなんてヒドイんじゃないかしら、ユウ」


 ユウの言葉を受けて、寄生している魔虫はテリアの口調でそう返した。

 だが、テリアとしての口調を再現しているつもりなのかもしれないが、明らかに違和感があった。


「下手くそな演技だね。テリアはぼくに、そういうことは言わないよ」

「信じてくれないなんて、本当にヒドイわ。わたしが魔虫なんかに操られるわけないじゃない」


 ユウを挑発するように、魔虫はテリアの振りを続けながら距離を詰めてくる。

 そして再び、ナイフを手にしてユウに突き刺した。


「ふっ、ははははっ!! 同じ手にやられるなんて、情けない勇者だ。上書きされた呪いは、今度こそ抑えることなど出来ぬぞ」

「一体何のことを言ってるのかな?」


 勝ち誇った表情を見せたテリアだが、よく見るとナイフはユウの身体に刺さってはいなかった。

 ユウの身体には見えにくいように、小さな魔法障壁が張られていたからだ。



「な、なんだと······!?」

「今度はこっちの番だよ。早く、テリアの身体から出て行け。さもないと、お前を滅する」


 ユウはテリアの身体を掴み、自身の魔力を流し込んだ。



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