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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 15 呪い

――――――(side off)――――――――


 魔虫に寄生されたテリアは、ゲーエル達魔人族の力も吸収し、歯止めが効かなくなっていた。

 テリアに刺されたユウの傷をエレナが懸命に治癒しているが、まるで効果はなく、容態はどんどん悪化している。


「······エレナ、もう、大丈夫だよ······」

「動いちゃダメ! まだ血も止まってないんだから」


 ユウが聖剣を杖代わりにして、無理に立ち上がる。エレナは止めようとするが、ユウはまっすぐにテリアを見据える。

 そんなユウを見ても、テリアは薄く笑うだけで、特に反応を見せない。


「――――――ユウ君、おとなしくしておきなよ。今のテリちゃんには、何を言っても無駄だよ、だよ」


 プルルスが前に出て、テリアとユウ達の間に立つ。プルルスは、いつもの無邪気な笑顔は消え、真顔でテリアを見つめる。


「事あるごとにダルクローア様を侮蔑の目を向ける、神将(トゥーレミシア)の人形か。勇者に加担するとは、どういうつもりだ?」

「――――――だんだん魔虫の意思の方が強くなっているみたいだね、ね。早くテリちゃんの身体から出ていってくれないかな、かな? じゃないと力ずくで排除しちゃうよ」

「たかが人形ごときが、いい気になるなよ」

「――――――そっちこそ、ただの虫けらじゃないのかな、かな?」


 お互いに煽り返し、不穏な空気となる。

 プルルスが戦闘態勢に入り、テリアもそれに対抗して構える。


「――――――テリちゃんとも本気で戦ってみたいと思ってたんだよね、ね。出来れば魔虫に操られた不完全な状態じゃない時に。虫けらなんかじゃ、テリちゃんの身体をまともに操れるわけないんだから」


 その言葉を合図にプルルスが動いた。 

 テリアに対して「土」魔法で先制攻撃を仕掛け、拘束した。


「人形風情が、消えろ!」


 「土」の拘束を簡単に砕き、テリアがプルルスに向けて巨大な矢を放つ。

 プルルスは防御魔法で防ごうとするが、障壁を破られ、矢が腹部に突き刺さった。


「――――――そんな程度じゃ、ボクにはダメージにもならないよ。それじゃあ、ボクも少し本気でやろうかな、かな」


 刺さった矢を無理矢理抜き、さらにプルルスがテリアに攻撃を仕掛ける。

 二人のぶつかり合う衝撃は凄まじく、玉座の間の壁の至る所にひび割れが入る。



――――――――――!!!!!



 ぶつかり合いながら二人は壁を突き抜け、城の外にまで出てしまった。

 そのまま戦闘を継続しているようで、外から激しい振動と音が響いてきている。


「一体何者カヤ? あの二人は······」


 あまりに非常識と言える二人の実力を目の当たりにして、妖精女王が呆然とつぶやいていた。


「そちらの者達は気を失っている魔人共を改めて拘束しておくのじゃ! リュガント達は外に出た二人を追うのじゃ! 可能ならば、プルルスの援護をせよ! わかっておると思うが、なるべくテリアも傷付けぬようにな」

「はっ! お任せを、シャルルア様」


 シャルルアが龍人族の戦士達に指示を出す。

 妖精女王もすぐに気を取り直し、妖精達にそれぞれ指示を出した。



「ユウ君の容態は!?」

「セーラさん、お願い。私の力じゃ、ユウの傷を治せない······」


 聖女セーラが傷付いたユウの下に駆け寄る。

 懸命に治癒魔法をかけ続けているエレナが、泣きそうな表情でセーラに助けを求めた。

 セーラも治癒魔法をかけるが、ユウの傷口は一向に塞がらない。


「どいてくれ。ユウ、傷を見せてみろ」


 ジャネンがセーラとエレナの間に割って入り、ユウの容態を確認する。

 ジャネンはユウの傷口に手を当て、魔力を込める。


「ユウ様を治せるですかぁ? ジャーネ······」

「············しっかりして、ユウ」


 ミリィとマティアが心配そうにジャネンの行動を見守る。


「傷口に治癒を妨害する、かなり強力な呪いがかけられているな。冥王(テュサメレーラ)に習った解呪方法を使う。尋常ではない苦痛が襲うが、神剣の反動にも負けなかったお前なら耐えられるはずだ。いいな、ユウ?」

「うん······ぼくなら、大丈夫。頼むよ、ジャネン」


 ジャネンがユウの身体に魔力を流し込む。

 するとユウの傷口から、黒い煙のようなものが噴き出してきた。


「············っ············」


 ユウが多少、苦悶の表情を見せるが、ジャネンはそのまま魔力を送り続ける。

 しばらくすると、ユウの傷口から出血が止まっていた。


「もう、大丈夫。ありがとう、ジャネン······」

「悪いな。()()()の力では、それで精一杯だ」

「血が止まっただけで、充分だよ」


 傷が完全に治ったわけではないが、呪いによって、これ以上悪化することもなくなった。

 それを確認して、ユウが改めて立ち上がる。


「ユウ、無茶よ! まだ治癒魔法が効いてないのに」

「ぼくのことなら、もう心配ないよ、エレナ。それよりも、早くテリアに寄生した魔虫を退治しないとね」


 心配するエレナに、ユウは笑顔で答える。

 その表情を見る限りでは、無理をしている感じではないが、出血が収まっただけで呪いが完全に消えたわけでもなく、ユウが重傷なことに変わりはない。


 そして魔虫も、テリアの身体を自在に扱えているようで、「聖」魔法なども弾かれてしまい、妖精族達を解放したように簡単にはいかない。

 しかし、ユウも引く気はなさそうだ。



「我らも協力するカヤ、幼き勇者よ。そもそもこの事態は、魔人共などに不覚を取った我らの責任でもあるカヤ。我らの力で、あの娘に取り憑いた悪しき魔虫を排除してみせよう」


 妖精女王がユウ達に協力を申し出る。


「ユウ、とりあえず、これを使うと良いんダヨ! オイラ達妖精族の作った特殊ポーションなんダヨ」


 シルファンがどこからか持ってきた薬を、ユウに渡した。それは上級ポーションと同等の効果があるらしいが、今のユウの傷には効果は薄い。

 だが、無いよりはマシであった。


「ありがとう、シルファン、女王さん」


 ユウが礼を言い、プルルスと魔虫に寄生されたテリアの戦いの場に向かった。




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