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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 14 テリアの異能

――――――(side off)――――――――


 テリアが手にしたナイフで、ユウの胸を深々と突き刺した。

 ユウは胸から、大量の血を流し倒れる。


「ユウ!? テリア、何をしてるの!?」

「何のつもりですか、テリっちぃ!!?」


 エレナがユウに駆け寄り、ミリィが怒りのままテリアを弾き飛ばす。

 マティアも心配そうに、エレナと共にユウの容態を見ている。


「ど、どうして······!? ユウの傷口が塞がらない!」


 すぐにエレナが「聖」魔法でユウの傷を癒そうとするが、傷口は回復魔法を拒むように効き目がない。





「何事じゃ!? 何故、テリアがユウを······!?」


 突然の事態に、妖精女王やシャルルア達も話し合いを中断して、ユウ達の方に目を向けた。

 ミリィに力任せに弾き飛ばされたテリアが、ゆっくりと立ち上がる。


「ふっ、ふふふっ······勇者と言えど、油断させて仕留めれば簡単なものね」


 テリアが今まで見せたことのないような、凶悪な笑みをうかべていた。

 明らかにテリアが普通の状態ではないと、シャルルア達は理解した。



「気を付けてください、テリアさんから悪しき気配を感じます!」


 聖女セーラが構える。

 護衛騎士のリンも、何が起きてもいいように警戒している。



――――――――――!!!!!



 ジャネンが(魔眼)の力をテリアに向けて放った。テリアの身体の一部が石化して、徐々に全身へと広がっていく。


「ふっ、はははっ!! こんなのが、わたしに効くと思ったのかしら、ジャネン?」


 テリアが石化した部分に魔力を込めて、(魔眼)の力を解除した。

 ジャネンはさらに何度か(魔眼)と(邪眼)のスキルを使用するが、テリアには一切、通用しなくなっていた。


「間違いなくテリアは魔虫に寄生されているようだ。しかも、これは思考誘導されているレベルではない。肉体の主導権のほとんどを魔虫に握られている」


 ジャネンがテリアの状況を分析する。

 今のテリアには、妖精達の時と違い、本人の意思があるのかも怪しい状態だという。


「············テリア、······っ」

「ユウ、まだ動いちゃダメよ!?」


 テリアに刺された胸から大量の血を流しながら、ユウが立ち上がる。

 胸からだけでなく、口からも血を吐き、傷の深さを物語っている。


「あら、まだ生きているなんて、しぶといわね。けど、その傷口にはダルクローア様より授かった呪術を付与している。聖女の魔法でも癒せないはずよ」


 ただ刺しただけでなく、何やら厄介な呪いをかけているらしく、そのせいでエレナの魔法もポーションも効き目がない。

 なんとかギリギリで致命傷は避けたようだが、このままでは失血死してもおかしくないくらい、ユウの傷は深い。


「呪いを解きたければ、わたしを殺せばいいのよ。そうすれば聖女の魔法が効くようになるわ。お前達に仲間を殺す覚悟があるのならね。はっ、はははっ!!!」


 そう言って笑い声をあげる姿に、もはやテリア自身の意思はないのが明白だった。




「おおっ、魔虫が勇者の従者に寄生することに成功していたのか! よし、ならばさっさとコイツらを始末して、我らの拘束を解くのだ!」


 その様子を見ていたゲーエル含む、魔人族達が勝ち誇った表情を見せる。

 テリアは魔人達を見張っていた龍人族や妖精族を蹴散らし、ゲーエル達の前に立つ。


「ふっはははっ!! 見た目はただの小娘だが、なんという強さだ! よし、早く我らを解放し――――」


 命令に従い、拘束を解くかと思われたが、何を思ったのか、テリアはゲーエルを掴み上げた。


「ぐっああっ······い、一体何を······!?」

「わたしが主と仰ぐのは魔王様、そしてダルクローア様のみ。もう、貴方に従う必要はないし、用もないわ。せめて、その脆弱な魔力と生命力をわたしの糧にしてあげる」


 テリアが掴み上げた腕から、ゲーエルの魔力と生命力を吸い上げている。

 ゲーエルは力を限界まで吸われ、意識を失った。

 そんなゲーエルをテリアはゴミのように投げ捨てた。


「ゲーエル様······!?」「魔虫の暴走か!?」


 自分達の味方のはずの魔虫が寄生したテリアの所業に、魔人達が慌てふためく。

 そんな魔人達に構わず、テリアは手をかざし、魔力と生命力を吸収していく。


「「「ぐ、あああーーっ!!?」」」


 直接、触れずとも範囲内の対象の魔力を奪えるらしい。力を奪われた魔人達は次々と意識を失い、倒れた。

 ゲーエル達は死んではいないが、魔力と生命力を限界まで吸われ、しばらく意識が戻りそうにはない。


「どういうことだ? 魔虫は寄生した生物の力を扱えるだけで、それ以上のことは出来ないはず······。テリアは(魔力吸収(マジックドレイン))と(生命力吸収(ライフドレイン))の力を使えたのか?」


 魔人達の力を次々と吸収していくテリアを見て、ジャネンが驚愕する。

 だが、今はそんなことを考えている場合ではなかった。


「ふっ、ふふふ······。腐っても魔王様の下僕ね。良い感じに力が溢れてくるわ」


 ゲーエル達の魔力と生命力を吸収したことで、テリアが凄まじい力を発している。

 通常でも、テリアは相当の力を持っているのに加え、魔人達の力まで吸収し、さらには魔虫により身体能力のリミッターまで外されている状態だ。



 ユウが重傷でろくに動けない今、まさに最悪の事態となっていた。





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