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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 10 操られた妖精女王

――――――(side off)――――――――


 妖精シルファンの能力によって、見張りや巡回している魔人族達に気付かれることなく、ユウ達は城の中を進んでいた。


「すごいね、シルファン。霧が出てるわけでもないのに、魔人達、ぼく達に全然気付いていないよ」

「オイラの周囲を特殊幻影で纏って見えなくしてるんダヨ。だから、オイラから離れないでなんダヨ」


 魔人族が見回りしている中、ユウ達は堂々と歩いているのに、まるで気付かれる様子はない。

 シルファンの幻影スキルは相当に高性能のようだ。


「妖精族は魔人族共に、いいように使われているようじゃのう」


 シャルルアが小声でつぶやく。

 城の中に妖精族の姿もチラホラ見られるが皆、魔人族の命令に黙って従っていた。

 おそらくは魔虫に寄生され、魔人族に従うよう思考誘導されているのだろう。


「――――――ん〜、暴れられなくて物足りないけど、これはコレで、かくれんぼみたいで悪くないかな、かな」


 少し物騒なことを言っているが、プルルスもなんだかんだで、おとなしくしていた。







 そうして、何事もなく妖精女王の城の玉座の間にたどり着いた。


「ここが女王様のいる、玉座の間なんダヨ。魔人達に気付かれる前に女王様を······」


――――――――――!!!!!



 玉座の間に入ると同時に、ユウ達を纏っていたシルファンの幻影能力がかき消された。


「我が城に潜入してくるとは、良い度胸の者達カヤ。覚悟は出来ておるカヤ?」


 玉座に座っている人物がユウ達に向けて、手をかざしていた。

 どうやら、シルファンの幻影能力を見破られていたようである。


 玉座に座っているのは、煌びやかな衣装を身に付けた大人の女性で、シルファンのように背中に羽を生やしているので、妖精族だということがわかる。

 しかし体長はユウ達よりも少し大きいくらいで、羽が無ければ妖精族というより、人族に近い見た目だ。

 この女性が妖精女王のようだ。


「これが妖精族を束ねる女王······。ユウよ、気を引き締めた方がいいぞ。想像以上の魔力を感じる」


 シャルルアが思わず流れた汗を拭う。

 妖精女王から感じる魔力は、ユウ達から見ても油断ならないくらいに強大だった。


「女王様! ユウ達は悪い人じゃないんダヨ! 魔人達からオイラ達を救ってくれる勇者······」

「黙るカヤ、シルファン! 侵入者の手引きをするとは、この裏切り者め、お前は相応の罰を覚悟するカヤ! 皆の者、出合え出合え!!」


 シルファンの言葉にまったく耳を貸さず、妖精女王が城の警備をしている妖精達を呼び寄せた。

 玉座の間にたくさんの妖精が集まって来る。


「火の妖精達よ、侵入者共を焼き尽くすカヤ!」


 妖精女王の命令で妖精達がユウ達を取り囲み、一斉に「炎」の魔法を放ってきた。

 ユウ達どころか、共にいるシルファンすらも焼き尽くそうとする威力である。


「問答無用とは物騒じゃのう」

「――――――じゃあボクも殲滅しちゃっていいかな、かな?」


 シャルルアが魔法障壁を張り、攻撃を防いだ。

 そして、攻撃を仕掛けてきた妖精達を見て、プルルスが無邪気で邪悪な笑みをうかべている。


「女王も妖精達も、魔虫ってやつに操られているみたいだね」

「女王様、話を聞いてほしいんダヨ!」


 ユウがプルルスを制して前に出る。

 シルファンは必死に女王に訴えるが、まるで聞き入れてくれない。


「ぬうぅ······侵入者共め、なかなかの手練れのようカヤ。それならば水の妖精達よ、彼奴(きゃつ)らの動きを封じるカヤ!」


 女王の指示で、今度は別の妖精達が動いた。

 先ほどが火の妖精、そして今動いたのが水の妖精と呼ばれ、それぞれ役割が違うようだ。

 妖精達が「水」の上級魔法を放ち、ユウ達を水攻めにしてきた。


「――――――ふふ〜ん。ねぇ、ユウ君。これだけ攻撃されたんだから、ボクも反撃していいよね、いいよね?」

「操られてるだけなんだから、殺しちゃダメだよ?」

「――――――わかってるって。ボクに任せて、任せて」


 自信満々に言うので、ユウはプルルスに任せてみることにした。

 プルルスが翼を拡げて、妖精達が放った「水」から逃れた。

 ユウとシャルルアも、少し段差の高い位置にある場所に逃れていた。


「ええいっ、何をやっておるカヤ! 殺しても構わぬ! 火、水、風、すべて束になってかかるカヤ!」


 女王の指示に従い、妖精達がまずは一番目立つ位置を飛んでいるプルルスに狙いを定めた。

 待ってましたと言わんばかりに、プルルスが笑みをうかべる。


「――――――そ〜れ、アースリストレイント!」


 プルルスの魔法によって玉座の間の床が、まるで生き物のように脈動して動き、女王含む、すべての妖精族を拘束した。

 プルルスは「土」属性の魔法を得意としていて、その強大な魔力で壁や地面を自在に操れるのである。

 盛り上がった床にキツく締め付けられ、妖精族達は逃れることが出来ない。


「――――――今だよ、ユウ君、シャルちゃん! 勇者と神子の力で、寄生してる魔虫を追い出しちゃえ〜!」

「わかったよ。ルル、いくよ!」

「承知した! 神子の力を最大限で発揮してくれるわ」


 プルルスの言葉に頷き、ユウが聖剣を手にして構え、シャルルアも自身の魔力を集中した。

 そして二人が、玉座の間全体に広がるように力を解き放った。



――――――――――!!!!!



「かはっ」「けほっ」「うぐっ」


 妖精達がそれぞれ、体内に寄生していた魔虫を吐き出した。

 体外に排出された魔虫は、ユウとシャルルアの放つ力によって消滅していった。

 残った妖精族達は皆、先ほどのシルファンのように苦しそうに咳き込んでいるが、これで魔虫からは解放された。


「よし、上手くいったようじゃぞ······――――」

「ルル、危ないっ!!」


 気を抜いたシャルルアに向けて魔法攻撃が飛んできていたので、それに気付いたユウが咄嗟に庇い、難を逃れた。



「我が妖精兵達をこうも容易く無力化するとは、なかなかやるカヤ。だが、我は簡単には、やられはせぬカヤ」


 妖精女王のみが、プルルスの拘束を解き、ユウとシャルルアの攻撃を避けていた。

 妖精女王は、他の妖精族と違い、一筋縄ではいかないようだ。



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