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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 9 妖精女王の城

(エレナside)


「ほら、エレエレ〜。早くしないと置いて行っちゃいますよぉ?」

「ちょっと待ってよ、ミリィ。霧で見えづらいんだし、もうちょっと、ゆっくり進もうよ」


 急な突風に飛ばされてユウ達とはぐれてしまい、私は現在、ミリィと二人で霧に包まれた森を歩いている。

 ミリィは早くユウと合流したいようで、急かしてくる。まあ、私もミリィと同じ気持ちなんだけど。

 霧で道がわからないから、ミリィの夢魔族としての感知能力を頼りに進んでいるんだけど、本当に大丈夫なのかな?



「あれぇ? どっちから来たんでしたっけぇ」


 そう心配しながら進んでいたら、やっぱり的中した。しばらく進むと、ミリィがそんなことを言い出した。


「道がわからなくなったの、ミリィ?」

「おかしいですねぇ? この霧、もしかしたら普通の霧じゃないかもしれないですよぉ」


 適当に進んでいたわけじゃなく、霧がミリィの感知能力を妨害しているらしい。

 もしかしたら、この霧は妖精族の放つ特殊なものなのかもしれないわね。



 道がわからないんじゃ、迂闊に動くのも危険だわ。どうしようかと考えていたら、急に霧が晴れてきた。

 霧が晴れてくると、近くに二つの人影が見えた。


「エレナにミリィか。まずは、お前達と合流出来たか」

「あっ、ジャネン? それにマティアも」


 現れた人影はジャネンとマティアだった。

 私達と同じく、霧の中を彷徨っていたみたい。


「············ミリィにエレナだけ? ユウは······?」

「ミリィ達だって、ユウ様達を捜しているんですよぉ」


 マティアはユウがいないと聞いて、ガッカリしている様子だ。

 最近のマティアは、何かとユウから離れたがらない様子だったから、そのユウがいないと不安そうにしている。


「ユウ達なら、我々が心配する必要などないだろう。おそらくは、妖精女王の城に向かうだろうから、我らも先を急ぐぞ」


 ジャネンはユウ達の心配はしていないみたいね。

 なんだか、それだけの信頼関係を結んでいるようで、少し妬けてくるわ。


「霧が晴れてきたから、もう迷うこともなさそうですねぇ。でも、なんで急に霧が晴れたんですかねぇ?」

「そこにいる奴の仕業だったのだろう」


 ミリィの疑問にジャネンが指差し答える。

 そこには、体長30センチくらいの小人が数人ほど、目を回して気絶していた。


「妖精族だわ。ということは、やっぱりこの霧は妖精族の仕業だったのね」

「ああ、幻覚を見せて惑わせてきたので、(それがし)の魔眼で行動不能にさせておいた。しばらくは目を覚まさないと思うが、命に別状はないはずだ」


 どうやら、ジャネンの力で身体を痺れさせているようね。死んでるわけじゃなくて、よかったわ。

 けど、気を失っている妖精族達の近くに、ミミズのような虫の死骸があるのが気になるのだけど。

 あの虫、本で見たことがあるわ。

 あれって確か、ブレインワームという魔虫の一種じゃなかったかしら?


「妖精族は魔虫に寄生され、操られていたようだ。そいつらに寄生していた魔虫は、すでにマティアが排除しているから安心していい」

「へ〜、マーティってそんなことも出来るんですかぁ」

「············たいしたことじゃない」


 ミリィにそう言われ、マティアは少し照れた様子を見せた。やっぱりマティアって、以前よりも感情が芽生えてきてる気がするわ。


 それにしても、魔虫を寄生され操られていたって怖いわね。それも魔人族の仕業なのかしら?

 だとしたら許せないわね。


 でも、操られているんだとしても、私も聖女としての力で浄化することが出来るし、妖精族達を救うことは可能だと思うわ。


「気を付けておけ。森の中に何匹か魔虫が徘徊していた。見つける度に潰しておいたが、まだいるかもしれん。魔虫は寄生した生物の魔力を吸い、成長する。万が一、お前達が寄生されたら、手に負えないくらいの進化をしてしまう可能性があるからな」

「大丈夫ですよぉ。ミリィ達はそんな間抜けじゃありませんからぁ」


 私達は以前、神将を倒したことで信じられないくらいのレベルアップをしている。

 そんな私達の力を利用されたら、魔虫がどんな進化をするかわからない。

 身体の中に入られたらどうしようもないし、警戒しないといけないわね。



 早くユウ達と合流して、魔人族から妖精族を救わないと!









――――――――(side off)――――――――


 妖精族シルファンの協力で、ユウ達は霧に覆われた森を抜け、妖精女王の城までたどり着いた。

 入口付近には、魔人族の見張りが何人か見える。

 ユウ達は見つからないように隠れ、辺りを観察していた。


「妖精族の城を魔人族共が堂々と占拠しておるのう。シルファンの言う通り、妖精女王や城の中の妖精族も、魔人族(やつら)の手に落ちていると見るべきじゃな」

「そうみたいだね。妖精女王とゲーエルとかいう魔王軍の幹部はどこにいるのかな?」


 シャルルアとユウが小声で言う。


「――――――ボクが見張りの奴らを殲滅しちゃおうか? あいつらを死なない程度に尋問すれば、答えてくれるんじゃないかな、かな?」


 プルルスは暴れたくて、ウズウズしているようだ。

 見張りを蹴散らして、正面突破しようとも考えたが、操られている妖精族を人質に取られたら厄介なので、プルルスの提案は却下された。



「女王様は多分、玉座の間にいるはずだから、オイラが案内するんダヨ! オイラの幻影スキルを使えば、皆の姿を上手く隠しながら進めるんダヨ」


 シルファンの力で、ユウ達の姿を魔人族の目から隠しながら侵入することにした。


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