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勇者(候補)ユウの冒険章➇ 7 協力

――――――(side off)――――――――


 プルルスが妖精族のシルファンに寄生していた魔虫を取り除いた。

 シルファンはまだ苦しそうに咳き込んでいるが、だんだんと落ち着いてきていた。


「げほっ、げほっ······あ、あれ? オイラ一体······」

「大丈夫? まだ苦しいんなら、ポーションでも飲む?」


 ユウがシルファンを気遣い言う。


「魔虫に寄生されていたのじゃが、大丈夫なのかの?」

「――――――心配いらないんじゃないかな、かな。見た感じ、寄生されて日は浅かったみたいだし、ちょっと思考誘導されてただけで、身体には影響は少ないと思うよ」


 シャルルアの言葉にプルルスが答える。

 問題の魔虫もすでに退治したので、後はシルファンの回復を待って、事情を聞くことにした。



「えーと、改めて、ぼく達のこと、わかるかな?」

「あ、ああ······ユウにシャルルア、そっちの怖いのはプルルス······ダヨな? あれ、オイラ一体何してたんダヨ? 確か、イタズラなんてしてる場合じゃなかったはず······」


 ユウの質問にシルファンが答える。

 まだ記憶が朧気なようで、ユウ達に出会う前に自身に起きた出来事を、頭を抱えながら必死に思い出そうとしている。


「そ、そうだ······!? 魔人達がオイラ達の国に攻めてきて、女王様の城を占領されたんダヨ······!! オイラは奴らに捕まって変な虫を植え付けられたんダヨ!?」

「落ち着いて、もう虫はプルルスが退治したから」


 シルファンが一瞬、慌てふためくがユウが冷静に宥めた。

 シルファンが思い出した情報によると、数日前に魔人族が妖精族の住む浮島の結界を破り、攻めてきたらしい。

 妖精族は魔法に長けた種族だが、戦闘が得意なわけではないので、強い力を持つ魔人族を相手に劣勢に追い込まれ、敗れたそうだ。

 幸いにも殺されることはなかったが、妖精女王含む、妖精族は皆、魔虫を寄生させられて魔人族のいいように操られていたということだ。


「なるほどのう。それで妖精族を支配した魔人族は、この浮島を利用して、今度は我が龍人族の都に攻撃を仕掛けてきたわけか」

「いざとなったら、操っている妖精族を盾にするつもりなのかもしれないね」


 シャルルアとユウが言う。

 シルファンの情報から、大まかな現状を把握することが出来た。

 やはり妖精族は魔人族に利用されているだけのようだ。


「女王様や皆を早く助けないとなんダヨ! けど、魔人は恐ろしく強いから、オイラの力じゃ、アイツらには敵わないんダヨ」

「ぼく達に任せなよ、シルファン。ぼく達が魔人達を倒して、妖精女王達を助けてあげるからさ」


 落ち込むシルファンにユウがそう言った。


「妾達に任せよ。妾は龍神様の神子であり、魔人共など軽く蹴散らしてくれるわ。そして、ユウは人族の選ばれし勇者じゃ」

「え、龍神の神子······? それに勇者? ほ、本当なんダヨ?」

「そんなウソをついてどうする? しかも、ユウはただの勇者ではなく、神将すら倒した真の勇者なのじゃ。妾達が協力すれば、魔人共などに負けるはずあるまいぞ」


 シャルルアの自信満々の態度に、落ち込んでいたシルファンも希望が見えて、目を輝かせた。


「お願いなんダヨ! 魔人達に操られてる女王様や仲間達を助けてほしいんダヨ」

「もちろん、最初からそのつもりだよ。任せなよ、シルファン」


 シルファンの懇願にユウは笑顔で答えた。


「――――――ふっふ〜ん、ユウ君は本当に強いからね、ね。大船に乗ったつもりでいるといいさ。もちろん、ボクだって協力するよ、するよ!」

「当然、妾もじゃ」


 プルルスとシャルルアも、ユウに続いてシルファンに協力を約束した。

 シルファンが案内人として、妖精女王の城まで向かうことにした。




「ねぇ、シルファン。この森を覆っている霧、消すことって出来ないの?」


 ユウがシルファンに問う。

 ユウ達の周囲の霧は晴れているが、森全体の霧が消えたわけではない。

 少し歩けば、また深い霧の中を進むことになる。


「多分、オイラ以外にも複数の妖精が霧を発生させているんダヨ。オイラには、これ以上は無理なんダヨ」


 どうやら、森の中にはシルファン以外にも妖精族がいて、それぞれが霧を発生させて、森全体を覆っているらしい。

 そして、その妖精族達も魔虫によって操られているのだろう。


「大丈夫、オイラについて来れば女王様の城まで、たどり着けるんダヨ!」


 妖精族のシルファンなら、幻影や幻覚に惑わされることなく、先に進めるようだ。

 霧に隠れた妖精族を探すのは至難の業のため、ユウ達は素直にシルファンに案内を任せることにした。


「それにしても、魔虫を使うとは厄介じゃのう。操られているだけなら、迂闊に傷つけるわけにもいかぬしのう」

「もしかしたら、霧に紛れて襲って来るかもしれないし、気を付けないとね」


 シャルルアとユウが周囲を警戒しながら言う。

 霧の中では幻影の魔物だけでなく、魔人や魔虫にも警戒しなければならない。


「――――――ボクは平気だけど、ユウ君達は気を付けた方がいいよ、いいよ。魔虫が身体の中に入ったら、ユウ君達でも操られちゃうかもしれないからね、ね」

「そんなに強力なの? 魔虫って」

「――――――脳に直接寄生されたら、いくら勇者でも抗うのは難しいと思うよ」


 魔虫は体外にいる時はほとんど無力だが、体内に入られれば、どんなに強くとも自力で追い出すのは困難だという。ユウやシャルルアが考えている以上に、厄介な虫なのである。



「――――――もしかしたら、ユウ君の仲間の誰かが、魔虫に寄生されちゃってるかもしれないからね、ね。合流した時は警戒した方がいいかもよ?」


 プルルスのこの発言は冗談交じりでの言葉だったが、その後、この言葉が的中してしまうのだった。




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