閑話⑱ 10 新たな滞在者
下ネタ要素あり。
エルフの里での件が解決して、王都の学園に戻ってきたら、ヴェルデがわがまま言っていると聞き、駆けつけたらアーテルとアルブスがやってきていたり、それが終わったと思ったら、今度はサフィルス達のお姉さん、シルヴァラが来襲してきたりと立て続けに散々な出来事に襲われた。
色々あったが、それらもようやく一段落した。
さっき、リイネさんはアイラ姉に念話で連絡を取ったらしく、手が空いたら、こっちに来るそうだ。
「······それじゃあ、レイ。わたしは、まだやることがあるので失礼するぞ。さっき取り乱したことは忘れてくれ」
リイネさんがそう言って戻っていった。
まだリイネさんの顔は赤く染まり、オレに視線を合わせられないという様子だ。
さっき、オレの裸を思い切りリイネさんに見られたんだよな······。忘れてほしいのは寧ろ、オレの方なのだが。
当然だが、すでにオレや他の皆も服を着ている。
ディリーとアトリにはリイネさん達の手伝いをお願いしたので、一緒に出て行った。
この場に残っているのは、オレと人形娘達だけだ。
そして、人形娘というのはシルヴァラも含まれている。
「――――――さあ、煮るなり焼くなり好きにするがいい! 我とて、戦いに敗れた時のことなど、覚悟しているぞ!」
「――――――シルヴァラ、どうか落ち着いてください。普段のあなたらしくありません」
さっきまでは気を失っていたシルヴァラだが、目を覚ました後は暴れることなく、おとなしくしている。
いや、これはおとなしくしていると言っていいのだろうか?
羞恥の表情でこちらを睨みつけてくるのを、サフィルス達がなんとか宥めているのだが。
「えっと、シルヴァラさん? オレはあなたをどうこうするつもりはないんだけど」
暴れたりしないんだったら、本当に危害を加えるつもりはない。
なんだかんだ、サフィルス達だってそう言って、ここに滞在しているんだし。
「――――――そんな話を素直に信じろと? 創造主から、貴様はとんでもない変態で危険人物だと聞いている。サフィ達も貴様の毒牙にかかり、創造主から離反してしまったではないか」
それはオレの意図したことじゃ······。
なんだかトゥーレミシアから、オレのことを曲解して伝えられていそうだな。
ただ、完全否定出来ないのがツラい。
「――――――そ、それに、あんな······いかがわしいモノを我の顔面に押し付けておきながら、何もしないなどと、よく言えたものだな! あんな辱めを受けたのは初めてだ」
そこを指摘されるのもツラい。
自分で言っておいて思い出したのか、シルヴァラの表情が湯気が出そうなくらい真っ赤になっている。
あれは不可抗力というか、あなたが暴れたからだと言い訳したいが、それを言うと火に油を注ぎそうだ。
「――――――大丈夫です、シルヴァラ。私も同じように受けたことがありますから。主人の持つ男の武器に殺傷力はありません。特殊効果はありそうですが」
横からサフィルスが火に油を注ぎそうな発言をしてしまった。
特殊効果なんてないだろ。ないよな?
サフィルスはフォローしてくれているつもりなのだろうけど、全然フォローになっていないし、それを今言うのはマズい。
「「――――――シルヴァラ、あたし(アタシ)達も同様(です)。その方のたくましい男性のシンボルを受け(まし)た。アレはいかがわしいモノなどではない(ありません)」」
「――――――ヴェルデも主人のをシタことある! さっき変態男のも無理矢理、押し付けられたけど」
アーテル、アルブス、そしてヴェルデの言葉を聞いて、シルヴァラのオレに対する不信感は、さらに増してしまったように見える。
いたたまれない気分になるから、その話はやめてほしいのだが、事実だから反論出来ない。
「――――――サフィやヴェルデだけでなく、アーテル、アルブスにまで、あのような卑猥なモノを······。まさか、それだけでは飽き足らずに、身体にまで手を出し······」
いや、仮面姿の時はともかく、それ以外の時は、オレが無理矢理襲われた方なんだけど。
それに、さすがに身体にまで手を出してはいない。
「――――――と、ともかく、戦いに敗れた以上、我の身体も貴様の好きにするがいい。夜伽なら創造主を相手に慣れている。男を相手にするのは初めてだがな······!!」
何を思ったのか、シルヴァラは覚悟を決めた表情でそんなことを言い出した。
夜伽なら慣れている?
あの人、自分の人形相手に何をさせているんだ?
興味はあるけど、聞いてはいけない領域な気がする。
「だから、何度も言うように、暴れたりしないんだったら何もしないって。サフィルス達にも不可抗力でそういうことはしたかもしれないけど、あなたが思っているようなことはしていないよ」
ちょっと興奮気味だったシルヴァラも、オレがそう言って宥めると、だんだんと冷静になっていった。
「――――――確かに、創造主から話を聞いただけで、我自身は貴様のことを知らない。ならば、我が目で貴様のことを見極めさせてもらうぞ」
え、それってもしかして、アーテルとアルブスだけでなく、シルヴァラも少しの間とはいえ、王都に滞在するってこと?
サフィルス達も滞在しているんだし、シルヴァラ達だけ断るのもあれかな。
暴れたりしないのなら、いいかもしれないけど、大丈夫かな?
どちらにしろ、オレの独断で決めるわけにはいかないか。
その後、連絡を受けてやってきたアイラ姉と相談して、サフィルス達同様にアーテル、アルブス、そしてシルヴァラが学園内に滞在することが決まった。
まあ、近い内にトゥーレミシアからの召集がかかるみたいだし、しばらくならいいかな。
閑話は一旦、これで終わりになります。