閑話⑱ 5 騒ぎの収束(※)
※(注)変態男が登場しています。
(リーフィside)
ディリーさん達の戦いで巻き起こった魔法から、私を助けてくれたのは、例の正義の仮面を名乗る人物だったのですよ。
私は今、仮面の人に抱えられる状態となっているのですよ。
仮面の人は下着一枚を身に付けただけの姿ですから、私はその筋肉質な身体に直接触れている状態なので、内心ドキドキなのですよ。
このたくましい身体を見せつけるために、いつも裸でいるのですかね?
「では、今から私はこの騒ぎを止めてきますので」
仮面の人に優しく降ろされました。
もうちょっと、その身体に触れていたかった······いやいや、何を言ってるんですかね、私は。
私以外にも、魔法の巻き添えになりそうな人もいましたが、他はリイネ様やロディン様達が防いでいるようなのですよ。
しかし規模が大きくて私の所には手が回らず、そこにたまたま仮面の人が助けてくれたようなのですよ。
「リーフィ、大丈夫ですの?」
「あ、フレネイアさん。見ての通り、仮面の人に助けてもらったので怪我はないのですよ」
クラスメイトのフレネイアさんが声をかけてきたので、私は無事だとアピールしたのですよ。
フレネイアさん達、風紀委員の方々もリイネ様達に手を貸して、生徒の誘導をしているみたいです。
「颯爽と現れましたわよね、あの方。リーフィが羨ましいですわ。わたくしも魔法に巻き込まれそうになって、お助けいただきたいですわ」
「自分から危険に首を突っ込むのは駄目なのですよ、フレネイアさん?」
「ふふっ、わかっていますわよ、リーフィ」
本当にわかっていますかね?
フレネイアさんは仮面の人に対して、並々ならぬ情熱を注いでいるので、かなり無茶なことをしても不思議ではないのですよね。
フレネイアさんだけでなく他にも、そういう方はいますけどね。
フェニアさんなんかも、その一人です。
今は故郷のエルフの里に帰ってしまっているので、この場にはいませんけど、もし居たら、仮面の人の登場に興奮していることでしょう。
いえ、そういえば同じくエルフの里に行っていたはずのレイっちが戻ってきていましたね。
ということは、フェニアさんも帰ってきているのですかね?
あれ? レイっちの姿がどこにも見えませんね。
あちらの方でリイネ様やロディン様達が生徒の誘導をしているのは見えますけど、レイっちはどこに行ったのですかね?
――――――――――!!!!!
おっと、それよりも仮面の人がディリーさん達を止めに入ったのですよ。
今、ディリーさんとアルブスさんの戦いの間に割って入ったのですよ。
ディリーさんの剣技を、アルブスさんの魔法攻撃をそれぞれ片手で受け止めています。
あの威力の攻撃をたやすく止めるなんて、やっぱり仮面の人はとんでもない実力者なのですよ。
「そこまでです。周りの被害を顧みず、このような戦闘を続けることは見過ごせませんな」
「何者ですです? あれ? もしかして、マスターですます?」
「――――――貴方様は! ようやく見つけました」
仮面の人が二人にビシッと言ったのですよ。
二人は仮面の人の登場に驚いている様子なのですよ。ちょっと距離があるため、会話が上手く聞き取れませんが。
「喧嘩両成敗です。少々、懲らしめてあげましょう」
仮面の人がそう言うと、どこからか二本のロープを取り出し、それぞれ片方ずつ、二人に向けて投げつけたのですよ。
以前にフレネイアさんとフェニアさんを拘束した時と同じ手口ですね。
ロープは生き物のように二人に巻き付き、近くの校舎の壁に引っ掛けて、吊し上げたのですよ。
「ごめんなさいですです。少し、痛いですます!」
「――――――ああっ、この刺激、クセになりますね」
吊し上げられたことで、ロープがキツく喰い込み、かなり痛そうなのですよ。
でも、ディリーさんはともかく、アルブスさんは以前のフレネイアさん達のように、何やら喜んでいますね。
そんな二人を見て、私の横でフレネイアさんが羨ましそうにしているのですよ。
「さあ、もう一組の方もですな」
仮面の人は吊し上げた二人をそのまま放置して、今度はアトリさんとアーテルさんの方に向かったのですよ。
アトリさん達は、ディリーさん達が縛り上げられているのに気付いて、すでに戦闘を中断していました。
もっとも、そんなことはお構い無しに、仮面の人は二人にも同じようにロープを放ち、吊し上げました。
あまりの早業に、アトリさんもアーテルさんも反撃の余地はありませんでした。
「くぅっ······マ、マスター様ですよね? どうか、お許しを」
「――――――拘束が解けない。特殊な魔道具でもない、このロープは一体」
あっという間に、騒ぎを起こしていた四人を無力化してしまったのですよ。
本当に何者なのですかね、この人?
仮面の人は四人を吊し上げたまま、少し離れた場所で様子を見ていたリイネ様のもとに向かっていくのですよ。
すでに生徒の避難誘導を終えたようですね。
ロディン様や他の方々は、生徒達に状況説明などで、まだ忙しそうですけど。
「この通り、騒ぎは収めておきました。もう、ご安心ください」
「あ、ああ······また、お前に世話になってしまったな」
仮面の人にそう言われ、リイネ様がちょっと引き攣った表情で答えたのですよ。
やはり、あれはイベントではなく、何らかのトラブルだったのですかね。
「――――――ひぃっ、ま、また出た!?」
「――――――ヴェルデ、恐れる必要はありません。この方は······」
リイネ様の近くにいたヴェルデさんが、仮面の人を見て怯えたような声をあげているのですよ。
サフィルスさんの方は至って冷静ですけど。
「そうでしたな。そもそもの騒ぎの原因は、あなたでしたな?」
「――――――ひぃいいっ!!?」
仮面の人がヴェルデさんを問い詰めています。
確かに事の始まりは、ヴェルデさんが行っていた模擬戦(?)からでしたか。
ヴェルデさんは腰を抜かしたのか、怯えた声を出すだけで、逃げることも出来なさそうです。
あんなに怯えるなんて、そんなに仮面の人が怖いのですかね。
私も初めて見た時は驚きましたけど、特に怖いとは思いませんでしたが。
サフィルスさんは特に何かするわけでもなく、ただ傍観しているだけですね。
リイネ様も仮面の人を止めない······というより、どうするべきかわからず、動けないようです。
「――――――ごめんなさい、ごめんなさい。もう暴れないから許して!?」
「あなただけは、私の特別なお仕置きで反省してもらいましょうか」
「――――――ひぃいっ、来ないで来ないで!? サフィ、助け······」
仮面の人の特別なお仕置きって、もしかして?
ヴェルデさんのような、少し幼い子にもアレをするつもりなのですか?
それとも、私にしたお仕置きとは違うのですかね?
この距離だと、はっきり見えないのですよ。
フレネイアさんも興味津々な様子なのです。
も、もう少し、近付いて······。
「――――――ぎゃああああっっ!!!???」
やはりというか、私の思っていた通りのお仕置きなのでした。
そして、仮面の人のお仕置きを受けた、ヴェルデさんの叫び声が響き渡ったのですよ。