閑話⑱ 4 神出鬼没な正義の味方(※)
※(注)変態男が登場します。
(リーフィside)
黒髪と白髪の女の子、アーテルとアルブスが自身の秘めている魔力を解放したのですよ。
その力は、リイネ様をも上回るほどの凄まじさなのですよ。
ミウネーレさん達が張っている結界から、二人の魔力が漏れ、それに触れた一般生徒達がたじろいでいるのが見えます。
「――――――アーテル、アルブス。この場にいる人族に手出ししないでください」
「――――――暴れたいなら、ヴェルデ達が相手になる!」
サフィルスさんとヴェルデさんが、リイネ様を庇う形で前に出たのですよ。
リイネ様は二人の解放した魔力をまともに触れたため、立っていられずに膝をついているのですよ。
「リイネ〜、しっかり〜」
「すまん、キリシェ。情けない姿を見せた。しかし、あの二人は一体······」
キリシェさんがリイネ様を支えて、黒髪白髪の子達から距離を取らせたのですよ。
リイネ様達が離れたら、アーテルとアルブス、そしてサフィルスさんとヴェルデさんでバトルを開始したのですよ。
サフィルスさんは全身から物騒な刃物を次々と取り出して、黒髪のアーテルさんに攻撃を仕掛けたのですよ。
本気で斬りかかっているように見えますけど、本当にイベントの演出なのですかね?
ヴェルデさんは白髪のアルブスさんに爆裂魔法を浴びせているのですよ。
四人の戦いは激しく、リイネ様も周囲に結界を張るのに協力していますが、今にも破れそうなのですよ。
以前にアンデッドの群れが現れた時よりも、戦いの規模が激しい感じがするのは、気の所為ですかね?
「えーと······とりあえず、これはどういう状況なんだ、ロディン?」
おや、あそこでロディン様に話しかけているのは、レイっちじゃないですか?
エルフの里に行っていたはずなのに、もう帰ってきたのですかね。
いくらなんでも、戻って来るのが早すぎると思うのですが?
まあ、エルフの里での出来事は後で聞くことにするのですよ。
それよりも、レイっちも、この騒ぎが何事かとロディン様に聞いているみたいなのですよ。
ここからでは、会話がよく聞き取れないのですが。
「そこまでですです!」
「これ以上、騒ぐなら全員溶かしますよ?」
あっちではディリーさんとアトリさんが現れ、サフィルスさん達の戦いに乱入しているのですよ。
サフィルスさん達が下がって、選手交代ですかね?
学園で働くメイドさんの中でも、この二人は人気があるので、周囲はさらに盛り上がっているのですよ。
ディリーさんが巧みな剣捌きで攻撃を加え、対するアーテルさん達は両手から細い糸のようなものを出して、ディリーさんを捕らえようとしているのですよ。
「溶けて反省しなさい。アシッドフォール!!」
ディリーさんに気を取られていた二人に対して、アトリさんが魔法を放ったのですよ。
激しい滝のような「水」がアーテルさんとアルブスさんに降りそそいだのですよ。
「――――――なかなかやる」
「――――――ただのスライムと、侮れないようです」
大量の水を浴びて、ずぶ濡れになっただけでなく、二人の着ている服が溶けちゃってるのですよ。
あれ、もしかしてただの水ではないのですか?
ちょっ、その格好はマズいのですよ!?
色々と見えちゃいけないところが見えちゃってるのですよ!?
二人はまったく気にしていない様子ですけど、男子も見ているのですから、もっと恥じらいを持つべきなのですよ!
幸いにも、二人は魔力の膜のようなもので全身を包み、着ていた服はすぐに修復されたので、見えていたのは僅かな時間でしたが。
サラッと流しましたが、あれは何の魔法ですかね? まあ、それはいいのですよ。
服を直した二人は攻撃を再開したのですよ。
ディリーさんの剣技にアトリさんの魔法攻撃、それに対抗してアーテルさんとアルブスさんは上級魔法を連続で放ち、戦いが激しさを増していっているのですよ。
これ、結界が破られませんかね?
――――――――――!!!!!
そう思っていたら、とうとうリイネ様達の張った結界が砕け散り、魔法の余波がここまで押し寄せてきたのですよ。
これはさすがにマズいのではないですか?
「全員、退避しろ!」
ロディン様が周囲の生徒達に指示を出して、安全な場所まで誘導しているのですよ。
リイネ様達も生徒の誘導に専念していますね。
これはもう、どう見ても、ただのイベントではないですよね?
「――――――デスクリムゾン!」
「そんなの効かないですです!」
結界が破られて尚、ディリーさん達は戦闘をやめないのですよ。
今もアルブスさんが放った「炎」魔法を受け流し、反撃しているのですよ。
アトリさんとアーテルさんも激しい魔法合戦を繰り広げています。
結界がなくなったので、魔法の余波が直にやってくるのですよ。
結界越しだったから、あの程度で済んでいたのですね。直接感じるアーテルさん達の魔力は、背筋が凍るほどに凄まじいものなのですよ。
今更なのですが、あの人達、一体何者なのですかね?
ディリーさん達のようにゴーレムやスライムではないようですし、ただのメイドさんとは思えませんよ。
――――――――――!!!!!
ディリーさん達が受け流した魔法が、こっちに来たのですよ!?
相殺出来るような威力ではありませんし、避けることも出来そうにないのですよ。
思わず私は目をつぶり、身構えたのですが、急に身体がふわっと軽くなる感覚に襲われました。
誰かが私を抱えて、助けてくれたようなのですよ。しかし、一体誰が······?
「もう大丈夫です、お嬢さん。どうかご安心ください」
「············!!?」
おそるおそる目を開け、その人物を確認したら、心臓が飛び出そうなくらい驚いてしまったのですよ。
その人物とは、黒のマスクで顔を隠し、下着のみを身に付けただけのほとんど裸のような格好の男性······正義の仮面を名乗る人物だったのですよ。
もう現れないのでは、と思っていたところで、再び姿を現すとは······。
相変わらず神出鬼没な人物なのですよ。