59 セーラの苦悩と決意(※)
※(注)引き続き変態男が現れます。
苦手な方は本当にスミマセン。
(セーラside)
今日はついに試練を行う日です。
前回はオークの件で断念せざるを得ませんでしたが今日は万全です。
気を引き締めなければ。
「おはようございますセーラさん、今日はあなたの試練の日でしたわね」
そう言って私の部屋に入ってきたのはアルケミアさんです。
私と同じく聖女の資格を持つ方。
「アルケミアさん? 何か御用ですか?」
こんな朝早くアルケミアさんが訪ねてくるなんて珍しいです。
「少々あなたにお話がありまして、そこに座っていいかしら?」
アルケミアさんが部屋の椅子に腰掛けたので私も向かい合って座ります。
アルケミアさんは飲み物を自分と私の分を用意して話を切り出しました。
「セーラさん、あなたは聖女となった後のことは考えているのかしら?」
「なった後······ですか?」
「そうです、聖女とは人々を導く希望の存在。そんな重圧にあなたは向かい合えますか?」
それは············いつも考えていたことです。
私に聖女という役目が務まるのか。
「無理をせずにやめることも考えるべきですわ。聖女の資格を持つのはあなただけではない。分不相応な重圧は身を滅ぼしますよ?」
確かに······私よりもアルケミアさんやルナシェアさんの方が聖女にふさわしいと思います。
ですが私を応援してくださる方もいます。
その期待に応えたい。
無意識に私は目の前の飲み物を口にしていました。
その瞬間、意識が遠のいていきました。
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「お目覚めかしら? セーラさん」
「ア、アルケミアさん······ここは······」
ここはさっきまでの神殿の私の部屋ではない。
部屋には窓はなく扉は一つ。
アルケミアさん、まさか私をここに閉じ込めて試練を受けさせないつもりでしょうか?
「悪いのですけどセーラさんには今日1日この部屋で過ごしていただきますわ」
思った通りのようです。
その後アルケミアさんから聖女について色々と言われました。
その言葉が胸に刺さります。
何故女神リヴィア様は私なんかを聖女候補に選んだのでしょう?
やはり······私は······。
「セーラ様!」
少し時間が過ぎた時、リンが部屋に入ってきました。
私を探して心配してくれていたようです。
こんな私を······。
「リン······」
「セーラ様、ご無事でしたか!」
私の顔を見てホッとした表情をするリンでしたが、すぐに私の様子がおかしいことに気付いたみたいです。
リンがアルケミアさんに問いただします。
アルケミアさんに言われたことは私の問題なんですよね············私は聖女を諦めるべきでしょうか?
「な、何を言うのですか!? セーラ様は聖女にふさわしい方です! けして中途半端な気持ちではありませんよ!」
「············リン」
リンの言葉に励まされます。
そうでしたね。リンや皆の期待に応えたくて私は聖女を目指していたんです。
私は一人ではありません、それならば······。
そんな時突然部屋の明かりがすべて消えました。
「「「キャッ!!?」」」
三人の声が同時に響きます。
アルケミアさんも驚いていますし、明かりが消えたのは彼女の仕業ではないようです。
真っ暗で何も見えません。
近くにリンの気配はしますがアルケミアさんはどこでしょうか?
次の瞬間、今度は明かりが突然つきました。
「魔力を込める道具はこちらです。そこは違います」
「······え? キャアアアアーーッ!!!??」
アルケミアさんの悲鳴が響きます。
あれは正義の仮面さん!? 何故ここに?
横でリンも驚いています。
「私の名は正義の仮面。聖女アルケミアよ、同じ立場であるのにも関わらず聖女セーラ殿の試練を邪魔しようとは許せません。あなたにはお仕置きをする必要がありそうですな」
正義の仮面さんが言います。
アルケミアさんは突然現れた彼に驚いています。
相変わらずというか······目のやり場に困る姿ですからね。
正義の仮面さんは私を擁護してくれています。
私は聖女にふさわしいと。
アルケミアさんも反論しますが正義の仮面さんが押しています。
彼はアルケミアさんの方は聖女にふさわしいのかと問いただしています。
「ならば試してみましょう。あなたが聖女にふさわしいのかを」
何をするつもりなのでしょうか?
そう思っていると正義の仮面さんは自分の下着に手をかけました。
「はっ!!」
「「きゃっ!!?」」
彼の行動に私とアルケミアさんが同時に悲鳴をあげました。彼はこともあろうに唯一身に付けていた下着を脱いでしまいました。
これで彼は全裸······正義の仮面さんの大切な場所が露に·········あら?
不自然な光の反射でちょうど彼の大切な部分が見えません。ホッとしたような少し残念なような······。
何でしょうかあの光は?
しかしアルケミアさんは顔を真っ赤にして目を背けています。
もしかしてアルケミアさんには見えているのですか?
「セーラ様、見てはいけません!!」
リンが後ろから私の目を塞いできました。
もしかしてリンにも見えているのでしょうか?
「ふむ、やはりあなたは聖女にふさわしくないのでは?この程度のことで心を乱すとは」
リンに目を塞がれているので正義の仮面さんとアルケミアさんの言い合いだけが聞こえます。
私もかなり心が乱れたのですけど······。
アルケミアさん、声が震えているようですけど強気に答えています。
「た、たとえ何をされようと私は屈しませんわよ」
一体何をしているのでしょうか?
足音を聞く限り、正義の仮面さんがアルケミアさんにどんどん近づいていってるようですが。
「ちょ、ちょっとお待ちなさい······それ以上は!?」
アルケミアさんの慌てたような声が聞こえます。
どうしたのでしょうか?
「ま、待ちなさ·········いやあああーーっ!!?」
慌てた声が悲鳴に変わりました。
何が起きているのでしょうか?
「わ、わかりましたわっ! わ、私が悪かったですわ!? 考えを改めますからや、やめ······」
そこからはアルケミアさんの悲鳴しか聞こえなくなりました。
リンに目を塞がれているので何をしているのかわかりませんが、アルケミアさんの悲鳴しか聞こえず余計に生々しいです······。
しばらくすると悲鳴すら聞こえなくなりました。
足音がこちらに向かって来ているような?
「ひっ!?」
リンが声をあげ、私から手を離します。
視界が戻ると目の前に正義の仮面さんが立っていました。
何をされたのかはわかりませんがアルケミアさんは気を失って倒れています。
「セーラ殿、あなたは聖女にふさわしい方です。もっと自分に自信を持ちなさい。アルケミア殿の考えも間違ってはいませんが彼女は視野が狭すぎました。しかし今日のことは反省し、きっと良い方向に向かうことでしょう」
「せ、正義の仮面さん······」
そうですね。リンのように私を応援してくれる人達のためにももっと自分に自信を持つべきですね。
ありがとうございます正義の仮面さん。
色々と吹っ切れた気がします。
「これからは聖女同士仲良く力を合わせて試練を乗り越えるのです」
「はい、色々とありがとうございます」
「せっかくなのでセーラ殿、儀式の場までお送りしましょう。転移!」
正義の仮面さんがそう言うと一瞬で周りの景色が変わりました。
広大な美しい湖が目の前にあります。
ここはエルティオ湖!? 私が試練を行う場所です。
「ここは!?」
リンと気を失っているアルケミアさんも一緒です。
リンも突然のことに驚いています。
転移魔法。
やはり正義の仮面さんもレイさん達と同じ異世界人なのでしょうか?
「もうすぐ儀式にちょうど良い時間になるでしょう」
正義の仮面さんの言葉で気が付きましたが、確かにもう陽が沈みかけています。
もうそんな時間だったのですね。
「ありがとうございます正義の仮面さん、すぐに儀式の準備を始めます············ですがその前に······せめて下だけでも何か身に付けてもらえませんか?」
謎の光によって大切な部分は見えませんが正義の仮面さんは未だに全裸です。
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儀式の準備が整いました。
といっても専用の衣装に着替えただけですけど。
神殿の方々には黙ってここまで来てしまいましたね。
今頃神殿は私達の姿がなくて大騒ぎかもしれません。
後で謝らなくては······。
時間も来ました。文句無しの晴天です。
空には3つの月かすべて真円に輝いています。
今こそ試練を果たす時です。
「セーラ様、頑張ってください」
リンが言葉をかけてくれます。
少し離れた場所では正義の仮面さんとアルケミアさんが見ています。
アルケミアさんはついさっき目を覚ました所です。
まだ正義の仮面さんを怖がっているのか震えていますが大丈夫でしょうか?
「さあアルケミア殿、セーラ殿のことをよく見ておくことです。聖女にふさわしい方かどうかその目で見極めるのです」
「わ、わかっていますわ············!」
そんな会話が聞こえてきました。
······聖女として恥ずかしくない舞を行いましょう。
「女神リヴィア様、今試練を果たします」
私は大きく息を吸って舞を始めました。