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閑話⑱ 2 人形娘vsスライム娘

 人形娘達のじゃれ合いに、ディリーとアトリまで加わろうとしていた。

 この二人はアイラ姉達に鍛えられて、以前よりもレベルアップしているが、それでも人形娘達相手は厳しいだろう。


「そこまでですです!」

「これ以上、騒ぐなら全員溶かしますよ?」


 ディリーとアトリが人形娘達の間に入って言う。

 二人の登場に、周りの生徒達が歓声をあげた。

 普通にお祭り気分だな。

 一応、まだ大きな問題にはなっていないみたいだし、様子を見守ろう。

 どういう状況なのか、まだよくわからないし。


「――――――ディリーメイド長にアトリ副官?」

「――――――二人も、こちらにいらしたのですか」


 アーテルとアルブスが揃って首を傾げた。

 二人は以前にクラントールの町でディリーとアトリに色々と指導されていたっけ。


「――――――ディリーメイド長、誤解です。この騒ぎは私達ではなく、アーテルとアルブスが原因です」

「――――――ヴェルデは遊びたかっただけだもん!」


 向こうでは、サフィルスとヴェルデが言い訳じみたことを言う。立場上はディリー達の方が上だと教えているので、一応は弁えてくれているみたいだな。

 見たところ、サフィルスとヴェルデ、アーテルとアルブスの二対二で対決しているようだが、どういう経緯でそんな状況に?



「レイ、戻ってきていたか。あれは俺達では手に負えん。どうにかしてくれ」

「えーと······とりあえず、これはどういう状況なんだ、ロディン?」


 生徒達の誘導をしているロディンに事情を説明してもらうことにした。

 リイネさん達は周囲に被害を出さないための結界を張るのに精一杯で、話を聞ける雰囲気じゃないからな。


「学園の雑用係のメイド達が突然、姿を消したんだ。あの緑髪の子は残っていたんだが、消えた他の皆が遊び行ったんだと騒ぎ出してな」


 事前にレニーとユヅキに説明されていた内容と同じだな。暴れたそうな様子のヴェルデをサフィルスが宥めていたらしいが、だんだんエスカレートしていき、その様子に気付いたリイネさん達も全力で止めに行き、騒ぎが大きくなっていったそうだ。

 仕方無いのでヴェルデを落ち着かせるためにグラウンドに移動して、リイネさん達とサフィルスが模擬戦としてヴェルデの相手をしていたらしい。


 他の生徒も集まり出して、イベントの一環ということにして大盛り上がりになっていたところで、今度はアーテルとアルブスが突然現れて、乱入してきたと。


 アーテルとアルブスは二人ともレベル950という実力者のため、さすがのリイネさん達でも手に負えず、今度はサフィルスとヴェルデが二人を止める立場になった、と。

 うん、説明されてもよくわからない状況だ。


 オレはとりあえず、ロディンにエルフの里での出来事を簡単に話した。



「学園のメイド達がいなくなったのは、そのためか。そっちの方は無事に解決出来たのはよかった」


 こっちでも騒ぎが起きてるとは思わなかったけどな。さて、どうしようか。

 アーテルとアルブスはオレを探しているみたいだし、オレが出て行ったら、解決するかな?

 まだ、二人がここに来た目的はわからないけど。


 しかし、周りの生徒達が楽しそうに盛り上がってる中で、出て行くのはちょっと気が引けるのだが。

 楽しそうなのは周りの生徒達で、リイネさん達は結界を維持するのに必死な様子だけど。


 そんなことを考えている内に、事態が動いた。




「覚悟するですです!」


 ディリーが武器を取り出して、アーテルとアルブスに斬りかかった。

 メイド長として、二人を指導するつもりらしい。

 ディリーの武器はアダマンタイトの剣にオリハルコンを合成し、さらにはアイラ姉のスキルで強化された物だ。

 ディリーは、ああ見えて剣術に長けていて、たまにアイラ姉とも稽古しているらしい。


「――――――相手になる」

「――――――お相手しましょう」


 ディリーの剣を躱して、アーテルとアルブスも臨戦態勢に入った。

 ディリーは剣技を駆使して追撃する。

 ディリーと人形娘達はかなりのレベル差があるはずだが、充分に渡り合っているな。


 ちなみにサフィルスとヴェルデは、その場から少し距離を取っていた。

 サフィルスとヴェルデはアーテル達を相手に負傷していたので、回復に専念するつもりのようだ。


「溶けて反省しなさい。アシッドフォール!!」


 アトリがアーテルとアルブスの頭上から大量の液体を降らした。

 あれは(激強酸)を上回る(極強酸)スキルによるものだ。アトリのスキルも、いつの間にかレベルアップしているな。

 ディリーに気を取られていた二人は、強力な酸の雨······いや、滝をまともに浴びた。

 おいおい、人形娘達とはいえ、大丈夫だろうか?



「――――――なかなかやる」

「――――――さすがは、メイド長と副官ですね。戦闘面でも、なかなかに侮れないようです」


 (極強酸)を全身に浴びても、二人の身体は無傷だった。やはり、これだけレベル差があると二人にダメージを与えるのも難しいようだ。

 ただ、無事だったのは二人の()()で、着ていた服が強酸で溶けて、えらいことになっている。

 アーテルとアルブス自身は、気にした様子もないが、周囲で観戦している生徒······主に男子生徒が興奮した声をあげている。

 人形といっても、見た目は人間と変わらないからな。



「まだ、やるですです?」

「今度は着物だけでは済みませんよ?」


 ディリーとアトリが改めて構える。

 この二人、人形娘達と渡り合えるなんて、オレが思っていた以上に強くなっているな。


 などと暢気に考えてる場合じゃない。

 アーテルとアルブスも、ディリー達に手加減無用と本気になったようだ。

 これ以上は、さすがに止めないとヤバそうだ。



 そう思って動こうとしたオレの手には、()()()が握られていた。





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