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498 エルフの里での最終決戦⑮

 ダルクローアが悪足掻きなのか、両手に桁違いの魔力を集中している。

 おそらくは自身でも制御出来ないであろうくらいの魔力量だ。

 奴の身体にある複数の〝核〟も大部分を潰し、後一つというところまで追い詰めたのに。

 止めようにも、奴の身体から出る触手に阻まれ、間に合わない。



「ヒッヒッヒッ、何もかも全て消え去りなさい! 次元大崩壊(デス·カタストロフィ)!!!」


 ダルクローアが集めた全魔力を解き放った。

 奴を中心に大地が······いや、空間そのものが崩壊するように消滅していく。


「クソ外道の好きにはさせないって、何度も言ってんだろがっ!!!」

「消えるのはお前だ、ダルクローア!」


 再び神具を手にしたメアルさんが、デューラさんと協力して、勢いのままダルクローアに突き刺した。

 先ほど、その神具に貫かれていたため、メアルさんの身体は消滅寸前に見える。

 デューラさんも同様だ。


 さらには、空間の崩壊が周囲に拡がっていくのは止まったが、逆にダルクローア周辺の崩壊が加速している。


「はっはーっ! 精霊達に頼んで、力の流れを逆にしてもらったよ。里周辺すべてを崩壊させようとした力、自分自身で喰らいなっ!」


 ダルクローアの周りの空間が崩壊しているのは、メアルさんが仕組んだもののようだ。

 だが、これではメアルさんもデューラさんも巻き込まれる。二人とも、ダルクローアと心中する気か!?



「お父さん、お母さん!」

「父様、母様!?」


 エイミとミールが二人の下に行こうとするが、神具の吸収能力の効果が続いているため、近付くことが出来ない。


「エイミ、ミール、安心しな。このクソ外道は、ここでぶっ潰してやるから」

「ですが、このままでは母様達まで······!」


 メアルさんは母親らしい穏やかな表情なのに対して、ミール達は悲痛な様子だ。


「俺もメアルも、すでに終わった命だ。お前達さえ救えれば、ここで朽ち果てても悔いはない。お前達は必ず生き延びろ······!」


 デューラさん達が力を込めて、さらに神具をダルクローアに深く突き刺した。

 〝核〟はまだ残っているが、神具の力には抗えないようで、ダルクローアが苦しみの叫びをあげる。


「グオォアアアッ······!? ば、馬鹿なのですか、あなた方は!? これは魂すらも消滅させる禁呪魔法······自身の存在そのものが消えてしまうのですよ!? それでも尚、私と共に消えるつもりですか!?」


 魔法を放ったダルクローア自身が相当に焦っている。そんな危険な魔法を放ったのかよ。


「ははっ、自分でも制御出来ないようなのを使った報いだね! 魂まで消えちゃ、いくらお前でも、もう復活も出来ないだろう? 自分で自分の首を絞めるとは滑稽だ」


 そんなダルクローアの言葉を、メアルさんは気にした様子も見せない。

 いやいや、待て待て!

 メアルさん達が犠牲になるのは絶対に避けたい。


「お、おのれぇーーっ!! 私は滅びませんよ、滅びるのは、そちらの方なのですから······!!」


 ダルクローアが自身に突き刺さる神具を強引に抜こうとする。

 それをさせまいと、メアルさんとデューラさんが動く。


「どうせ消えちまう命だ。全部、お前に注ぎ込んでやる。デューラ、やるよ!」

「ああ、共に逝こう······メアル!」


 二人が神具に魔力や生命力といった、自身のすべての力を注ぎ込んでいる。

 その力を吸収して、ダルクローアに刺さった神具が膨張し、奴の身体そのものを崩壊させていく。


「ええいっ!! 小賢しい真似を······消え失せなさい!!」


 ダルクローアが力を振り絞り、メアルさんとデューラさんを引き剥がした。

 神具は刺さったままだが、二人の注いでいた力が霧散したことで、奴の身体の崩壊が、ギリギリのところで踏みとどまっている。


「終の太刀······幻想無限桜!!!」


 そんなダルクローアを放って置くアイラ姉ではない。奴の触手を掻い潜り、残る最後の〝核〟に向けて奥義を放った。


「女勇者っ、その程度で私は······!!」


 あと一歩だったのたが、奴の防御(ガード)が寸前で間に合い、〝核〟を貫くには至っていない。

 オレも黙って見てるわけにはいかない。

 奴の触手攻撃がアイラ姉に向いていたので、オレの方が手薄になっている。


「くらえっ、神魔斬衝剣(しんまざんしょうけん)っ!!!」


 オレは奈落の(アビスブレード)を持ち、全力を込めて(神聖剣術)で奴に向かっていった。

 アイラ姉の奥義を防いだ直後であり、奴の体勢が崩れていたため、奴の防御(ガード)に隙が出来ている。



――――――――――!!!!!



「ぐっ、おおおっ!! ゆ、勇者如きに滅ぼされて、たまるものですか······!!」


 〝核〟を貫く一歩手前で、オレの剣技が阻まれた。もう少しだというのに、本当にしぶとい。

 オレの持つ奈落の剣(アビスブレード)が弾かれ、宙を舞った。


「これで終わりでござる! 覚悟······!!!」


 弾かれた奈落の剣(アビスブレード)をシノブが掴み、ダルクローアの〝核〟に突き刺した。

 シノブも(全状態異常無効)スキルを持っているので、神具の力の影響を受けずに近付いて来れたか。


 シノブの一撃により、ダルクローアの残る最後の〝核〟が砕け散った。

 すべての〝核〟を砕かれた奴の身体は、支えを失ったように一気に崩壊していく。



「そ、そんな······魔神様の力を得た私が、こんなところで······!!? この地の楔を抜き、残る楔もあと僅か······魔神様の完全降臨は、もう間近だというのに······!!!」


 なんとか身体の崩壊を止めようと足掻くが、もう奴自身にもどうしようもないみたいだ。

 メアルさんも言っていたが、自身の放った崩壊魔法が決め手になるとは、まさに自業自得だな。



「これで、終わってなるも、の············ぐ、あああーーーーっっっっ!!!!!」


 まだ何かするかと警戒したが、ダルクローアは為す術もなく、そのまま完全に消滅した。



〈レベルが上がりました。各種ステータスが上がります〉

 


 レベルアップの表示が出た。

 どうやら本当に終わったと思ってよさそうだ。

 やはり、魔神の力を得たほどの強敵だっただけあって、一気にレベルアップしたぞ。


 トドメを刺したシノブもレベルが上がり、1000を超えて(超越者)のスキルを獲得していた。

 これでオレとアイラ姉とシノブ、三人揃って、(超越者)を得ることが出来たな。


 いや、そんなステータス確認なんか、後でいい。

 それよりも、ダルクローアは消滅したけど、メアルさんとデューラさんは無事なのか?








「お父さん、お母さん!」


 二人の下にエイミとミールが駆け寄っている。

 神具もダルクローア消滅と同時に、沈黙して力を発していないため、近付くことが出来たか。

 そして、肝心のメアルさんとデューラさんは······。



「いい!? アンタらの命はね、もうテュサ様の物なのよ! テュサ様に死ねと命じられたら、喜んで命を捧げるのが私達幽体(レイス)なのよ。勝手に満足して消えるなんて、許されないんだからね!」


 何故かフルフルの説教を受けていた。

 フルフルが何らかの力を使ったようで、消滅しかかっていた二人の身体は、普通の状態(透けているけど)に戻っていた。

 さすがは選ばれし幽体(エリート·レイス)を自称するだけある。


「ははっ、そうだったね。悪かったよ、選ばれし幽体(エリート·レイス)様」

「ふっ、また死に損なってしまったか······」


 メアルさんとデューラさんはフルフルの説教を聞きながら、自嘲気味に微笑んでいた。

 なんだかんだで、二人が犠牲になることは避けられたみたいだな。



 こうして、ようやく元凶は消滅し、エルフの里での騒動は終結した。




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