497 エルフの里での最終決戦⑭
メアルさんがダルクローアの神具を逆に利用して、奴を追い詰めていた。
だが、神具の力はあまりに強力で、このままではダルクローアを倒せても、メアルさんとデューラさんまで消滅しかねない。
「デューラ殿、メアル殿!」
アイラ姉が武器を構え、二人の救出に向かう。
オレもアイラ姉に続いた。
「来るな、お前達まで巻き込まれるぞ!!」
デューラさんが近付こうとするオレ達を制止する。神具に力を吸われているメアルさんを庇いながら、ダルクローアを決して逃さない姿勢だ。
「ここはあたし達に任せな! 肉体の無い、今のあたし達ならともかく、命あるアンタ達にはキツいはずだ」
メアルさんもオレ達のことを止めてくる。
いくら幽体の身体だと言っても、神具に力を吸われていることに変わりはない。
メアルさん達だって、かなり無理をしているはずだ。
「おのれっ······一時的にとはいえ、この地の楔を外し、封印の一部を解放に成功し、魔神様の完全降臨はもう目前だというのですよ······! 貴様らごときにこれ以上、邪魔立てさせるものですか······!!」
ダルクローアが神具の力に対して、最後の抵抗を見せる。
自身の身体に突き立てられた神具を掴み、剥がそうとするが、それをメアルさんとデューラさんが許さない。
一見、拮抗しているように見えるが、魔神の肉体を持つダルクローアの抵抗が凄まじい。
「レイ、私に合わせろ。メアル殿達と神将を引き剥がす! あの二人で犠牲にしてなるものか!」
もちろん、オレ達はこのまま黙って見ているつもりはない。アイラ姉の言葉に頷き、オレは剣を構える。
デューラさんはオレ達のことを心配してくれていたが、神具の吸収能力は(全状態異常無効)スキルで防げているので、影響はない。
神具の力すらも無効化するとは、改めて反則的なスキルだ。
「アイラさん、レイ君! 私達も力を貸すわ!」
「皆の者、勇者殿達に力を貸すのだ!」
後方から学園長やエルフ達がオレとアイラ姉に支援魔法をかけてくれた。
神具の効果でオレ達以外は近付くのも危険だが、皆力を合わせて援護してくれている。
エルフ達全員の支援魔法を受けて、オレとアイラ姉のステータスが大幅に上昇した。
人数が多いというのもあるだろうけど、魔法に長けた種族だけあって効果が凄いな。
「小生も、微力ながら協力するであります!」
さらにはルナシェアの聖女の力も加わった。
神具の能力も、オレ達に向けられた力は吸収出来ないみたいだな。
皆の力が、余すことなくオレとアイラ姉に注がれていく。
「幽体となってまで生にしがみつく下等種族が······! 消え失せなさい!」
ダルクローアが神具を無理矢理に引き抜き、勢いのまま、神具の刃先をメアルさんに向けた。
「させるかっ!!」
デューラさんが剣で受け止めるが、神具の力に負け、剣が砕け散った。
デューラさんの幽体の身体が貫かれ、背後のメアルさんにも神具が突き刺さる。
あれはヤバい······!!
「それ以上、好きにさせぬ! 幻想······無限桜!」
アイラ姉の奥義で、ダルクローアの身体を大きく斬り裂いた。
神具に力を吸収され、神将の身体はかなり脆くなっていたみたいだ。
「おのれっ······女勇者、女神の下僕の分際で!」
相当なダメージを負っているが、まだ致命傷には至っていないか。
ダルクローアが反撃でアイラ姉に攻撃を仕掛けるが、怒りのあまり、周りが見えていない。
オレの存在が目に入っていないな。
「神閃牙衝っ!!!」
手加減無しの(神聖剣術)で、ダルクローアの胸部を貫いた。
鑑定魔法と(神眼)のスキルを駆使してわかったが、コイツの身体には全部で7つの〝核〟があり、それぞれが再生能力を兼ね備えているようだ。
1つでも残っていると〝核〟の再生能力で、他の〝核〟まで修復してしまい、倒し切ることが出来ない。
だが肉体と比べて、〝核〟は修復するのに結構時間がかかるっぽい。
アイラ姉の奥義と今のオレの攻撃で、残る〝核〟はあと1つまで追い詰めた。
「ぐっ······調子に乗るなっ!!!」
神具に力を吸われ、〝核〟も次々と潰されたことで、かなり焦っているみたいだな。
ダルクローアの全身から触手が飛び出し、オレとアイラ姉の攻撃を阻んできた。
後、一押しでいけそうなんだが······。
「もう許しませんよ······。勇者も聖女もエルフ共も、すべて消え去りなさい······!!」
ダルクローアの両手に、尋常ではない魔力が一気に集まっていく。
先ほどの「炎」魔法とは比べ物にならないくらいの魔力だ。
コイツ、まだそんな力が残っていたのか!?
さっきの「炎」でもギリギリだったのに、これが放たれたら防ぎ切れそうにない。
というか、そんなものを放ったら、ダルクローア自身も無事じゃ済まないはずだろ。
追い詰められて、なりふり構わなくなったか?
長く続きましたが、次の話で決着する予定です。