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496 エルフの里での最終決戦⑬

 アイラ姉とデューラさん、二人の全力の剣技がダルクローアに見事に決まった。

 奴の身体が大きく斬り裂かれ、傷口から黒い煙のようなものがあがっている。

 そういえば、さっきから傷付きながらも血は出ていなかったけど、あの煙が魔神の肉体に流れる血みたいなものなのかな?


「くっ、魔神様の肉体を得た今の私をここまで傷付けるとは······。ですが、不滅の存在であるこの身体を滅することなど······」

「ギィイイイッ!!!」


 二人の剣技を受けても、ダルクローア自身はあまり追い詰められた様子を見せなかったが、奴と一体化している神具は別だったようだ。

 苦しげな叫び声をあげ、ダルクローアの身体から自ら分離して、飛び出してきた。


「なっ、お待ちなさい······!?」


 神具が自身から分離してしまったのは、奴にとっても想定外の事態のようだな。

 ダルクローアが咄嗟に神具を掴もうとするが、動きが早く掴み損なった。

 飛び出した神具は大量の魔力を求め、エルフ達の方へと向かっていた。


「神具、それも魔物化しているみたいだね。そいつは好都合だ······!」


 メアルさんが前に出て、神具を迎え撃った。

 精霊の力を借りて、膨大な魔力を発しているメアルさんに、神具が一直線に襲いかかった。


「精霊達よ! 〝邪〟の力を発する忌まわしき存在を浄化せよ!」

「ギッ······!!?」


 メアルさんが両手で神具を掴み、集中していた力を注ぎ込んだ。

 神具が抗おうと、刃の触手を伸ばすが、幽体(レイス)であるメアルさんには当たらず、すり抜けていた。

 けど、メアルさんは神具をガッシリ掴んでいるのを見るに、部分的な実体化は可能なのかな?

 

「ギィイイイイッ!!!?」


 メアルさんに精霊の力を注がれ、神具が変化していく。禍々しさが薄れ、だんだんと大人しくなっている。


「おのれっ、させませんよ······!!」

「させぬ、はこちらのセリフだ! メアル殿の邪魔はさせぬぞ!」


 ダルクローアがメアルさんに向けて攻撃しようとしたが、アイラ姉がそれを止めた。

 そうしている内に、神具は完全に動きを止めた。

 魔神化したダルクローアの身体に合わせて、巨大化していた神具は、メアルさんが手に持つのにピッタリのサイズとなっていた。


「よ〜し、良い子だ。あのクソ外道に使われて、さぞ不愉快だったろう? あたしも手伝ってやるから、鬱憤を晴らしてきな!!」


 メアルさんが神具を構え、ダルクローアに向かっていく。

 遠目からも、神具を持つメアルさんの手には、かなりの魔力を纏っているのがわかる。


「き、貴様······!? 魔神様より賜りし、私の神具を······!!」

「はっ! 大事な物だって言うなら、ちゃんと大事に扱いな。この子はお前が嫌いだって言ってるよ! アイラちゃん、そいつから離れな! 今からそいつに強烈なのをお見舞いしてやるから」


 メアルさんの言葉を受けて、アイラ姉が神将(やつ)から距離を取った。

 アイラ姉は離れる際に、奴の足下を斬りつけ、バランスを崩させていた。


「はっはーっ、アイラちゃん、ナイス! さあ、クソ外道、覚悟して受けな!!」


 メアルさんが高く飛び、ダルクローアの頭上を取り、手にした神具に全身全霊を込めて、奴に突き立てた。

 魔神化した奴の身体も、神具によって簡単に貫かれていた。


「ぐわぁああっ!!? 女エルフ、貴様ぁあっ!」

「はははっ! 自分(てめえ)の神具が決めてになるなんてね。策士策に溺れるってやつか? クソ外道には、お似合いの末路だよ!」


 神具の吸収能力によって、ダルクローアの魔神の力を吸い上げていっている。

 ダルクローアは神具を掴み、抜こうとしているが、メアルさんがそれを全力で阻んでいる。


「くっ······ま、マズい。どんどん力を吸われ······。神具よ、何故······私に逆らうのですか······!?」


 さんざん雑に扱ったからじゃないのか?

 自分以外を道具としか思ってないような奴が、その道具に裏切られるなんて確かにお似合いの末路かもな。



「女エルフ、神具は精霊の力を持ってしても、簡単には扱えない物······。このままでは貴様も、ただでは済みませんよ······!?」

「はっ、上等だね。クソ長老には言いたいことは言ったし、成長した娘達の姿も見れた。今更、あたしがそんなことを恐れるとでも思ってるのか!?」


 確かに、神具はダルクローアの力だけではなく、メアルさんと精霊の力も吸っている。

 よく見たら、メアルさんの身体が、どんどん薄くなっていた。

 このままじゃ、ダルクローアともども、消滅しかねない。



「メアル、お前だけに背負わせたりさせん!!」


 デューラさんが高く飛び、ダルクローアの身体を斬り刻む。

 ダルクローアの身体は、神具に力を吸われている影響で防御力は落ち、傷が再生することもない。


「デューラ、貴様まで······!!?」

「メアル、力を緩めるな! ここでコイツを確実に滅する!!」

「はっ、当たり前だろ! 最後まで付き合ってもらうよ、デューラ!!」


 デューラさんもメアルに加勢して、神具の吸収能力がさらに強まる。

 それによって、ダルクローアだけでなく、メアルさんとデューラさんも強い影響を受けている。

 

「お父さん、お母さん!?」

「父様、母様!」

「エイミ、ミール、無茶だ! それ以上、近付くな!」


 エイミとミールも助けに向かおうとするが、神具の力は凄まじく、迂闊に近付けば、あっという間にミイラにされかねないくらいの吸収力だ。

 オレは二人を止めて、前に出た。


「レイさん、このままでは母様と父様が······」

「わかってる。ここはオレに任せてくれ」


 ミールが悲痛の表情で訴える。

 メアルさんとデューラさんは死ぬ覚悟で、ああしているのだろうけど、オレだって、あの二人を犠牲にしたくはない。



 せっかく親子の再会を果たしたんだし、悲しい結末だけは避けたい。





 

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