491 エルフの里での最終決戦➇
この魔神の一部と言われる巨大な魔物に、神将ダルクローアが憑依しているようだな。
憑依している奴こそが、本体なのか?
それともコイツも分体とかいうニセモノか?
まあ、そんなこと今はいいか。
本体だろうが分体だろうが、少なくともこんな魔神の一部のような代わりが他にもいるとは思えないし、コイツさえ倒せば乗り移れる強者ももういないだろう。
問題なのは、コイツ自身の強さが、どれほどのものなのかだな。
(超越者)のスキルを手に入れたオレの鑑定魔法でも、コイツのステータスは見えない。
レベル1000を超えていた、世界樹の精霊のステータスは見えたのに。
それと暴走している世界樹もなんとか鎮めないといけない。おそらくは世界樹に突き刺さっている、あの神具が原因だろう。
明らかに禍々しい力を放っている。
もう一度オレの持つ次元渡りの石で、あの神具の力を吸収出来ないか?
「おっと、その神具は使わせませんよ!」
オレが次元渡りの石を取り出すのを見て、ダルクローアが妙な力を放つのが見えた。
すると、次元渡りの石がまったく反応しなくなり吸収する力が使えなくなった。
何をしたんだ?
以前の奴にはそんな力はなかったはずだから、魔神特有の能力ってやつか?
いや、ゆっくり考えている暇はない。
ともかく、次元渡りの石の吸収能力に頼れないな。
「お前の相手は僕のはずダロ? よそ見していていいのカナ」
冥王が神将に魔法を放つ。
それを神将は片腕を振るい、相殺して、さらに攻撃を仕掛けた。
冥王と神将、どちらの力も強大で、一見互角の勝負をしているようだが、魔神の一部の力を得たダルクローアの方が総合的な強さは上っぽい。
冥王はただでさえ仮の肉体であり、本体ではないからな。
――――――――――!!!!!
暴走する世界樹の根が、そこら中から突き出して、襲いかかってきた。
冥王が神将の相手をしている内に、世界樹をなんとかしないとな。
「レイ殿、世界樹に刺さった神具が······!?」
ルナシェアの言葉で、神具に目を向けると、何やら怪しい力を放っていた。
〈――――の効果を抵抗しました〉
また、あの神具の周囲の力を吸収する効果か。
オレには(全状態異常無効)スキルのおかげで効かないが、他の皆は······?
「これは、小生の「聖」魔法でも抑え切れないで、あります······」
「クウウッ······」
ルナシェアが「聖」魔法で抵抗していたが、神具の力はさっきまでよりも強くなっているらしく、抗い切れていない。
霊獣のフェルも動けずに、縮こまっている。
「くううっ、また、力が抜けるのよ······」
あっちではフルフルが辛そうにしてるのが見えた。フルフル配下の幽体や元傀儡兵達も、力を奪われ動けなくなっている。
スミレも顔色悪く、シノブに支えられている。
アイラ姉やデューラさん、それにメリッサとパールスは平気そうだが、これはマズい状況だな······。
「レイ、シノブ! ルナシェア殿と協力して、「聖」魔法で皆を守れ! デューラ殿、私に合わせてくれ」
アイラ姉に言われ、オレとシノブはルナシェアと共に周囲へねや「聖」魔法の影響を強めた。
その間、メリッサとパールスが世界樹の根や枝を防いでくれたので、魔法に集中出来た。
これで多少だが、神具の効果が緩和された。
そして、オレ達がそうしている内に、アイラ姉とデューラさんは世界樹に向かって駆け出した。
迫る二人に、世界樹が無数の枝を襲いかからせる。
「アイラ、俺が気を引いている内に神具を······!」
「承知した、デューラ殿!」
デューラさんが遅い来る枝を斬り刻み、道を拓く。息がピッタリだな。
世界樹の中にいた時も二人で行動していたみたいだし、いつの間にか、それなりの信頼関係を築けているようだ。
「百花繚乱······桜花無双撃!!!」
アイラ姉が世界樹に刺さった神具に向けて、剣技を放った。だが、アイラ姉の力を持ってしても神具は破壊出来ない。
「破壊出来ぬのは想定内だ! ぬおおおーーっ!!」
勢いのまま、刺さった神具の所まで駆け上がり、掴んだ。そして、アイラ姉は力を思い切り込めて世界樹から神具を引き抜いた。
神具が世界樹から抜かれたことで、暴走が収まってきている。やはり世界樹暴走の原因はあの神具だったようだな。
破壊不可能なら、アイテムボックスに入れちゃえば、もう奴に手出し出来なくなるんじゃないか?
「アイラ、今すぐ神具から手を離せ!」
デューラさんが忠告するのと同時に、神具から無数の触手が生えてきて、アイラ姉に絡み付いた。
アイラ姉は素早く触手を斬り裂き、神具から手を離した。
「ギィイイイッ······」
神具の刃の部分が生物の口のように開き、鳴き声をあげた。
触手だけでなく、舌のようなものも見える。
この神具、生き物······魔物だったのか!?