482 その頃、世界樹の広場では
(ルナシェアside)
レイ殿達が迷宮に入り、そこそこ時間が過ぎたであります。
何が起きてもいいように警戒しているでありますが、穏やかに時間だけが過ぎていくであります。
良い事ではありますが、何やら胸騒ぎもするであります。
「シノブー、スミレー、お待たせ〜! パールスがようやく目覚めたから、急いで来たよ! レイおにーさん達は?」
警戒しながら世界樹を見上げていると、広場にシノブ殿達と同じくらいの年と思われる女の子がやってきたであります。
パールス殿と一緒に来たので、シノブ殿達の知り合いなのでありましょうか。
「おおっ、メリッサ殿。パールス殿はもう大丈夫なのでござるか?」
「――――――不覚を取って醜態晒したさかい、その分、活躍するえ〜」
シノブ殿の言葉にパールス殿が元気よく答えたであります。
もう、魔人から受けたダメージは完全回復したようでありますな。
シノブ殿達からの紹介で、パールス殿と一緒に来た女の子はメリッサという名で、パールス殿と同じく人形なのだそうであります。
パールス殿もそうでありますが、メリッサ殿もとても人形には見えないであります。
どういった技術で作られたのでありましょうか?
「へ〜、この人が聖女さんなんだ〜? アチシはメリッサ。にししっ、よろしくね」
「こ、これはご丁寧に。小生はルナシェア=スウェーゲル。聖女といっても、まだ女神様より正式な祝福を受けていない候補に過ぎない身でありますが······」
メリッサ殿も、パールス殿程ではないでありますが、レベルが高い実力者でありますな。
トゥーレミシアという女性の魔人がメリッサ殿達の真の主だという話でありますが、これ程の力を持つ意思を持った人形を何十、何百と従えているというのは恐ろしい話でありますな。
もしかしなくても魔王軍よりも強いのでは······?
今後、敵対するようなことがないことを祈るばかりであります。
「レイおにーさん達は迷宮に入っちゃったんだね。アチシも入りたい入りたい入りたい!!!」
「メリッサ殿、少し落ち着くでござるよ」
「シノブ達はこんなところで待たされて退屈じゃないの?」
今の状況を話したら、メリッサ殿が駄々をこねだしたであります。
思い切り暴れたいとか、一歩間違えれば危険な考えを持っているでありますな。
シノブ殿が宥めているでありますが、本当に突撃しそうな勢いでありますな。
――――――――――
············なんでありますか?
今、妙な気配というか、空気が変わったような感覚があったでありますが。
「············何か来る」
やはり気の所為ではなかったでありますか。
スミレ殿がいち早く構え、シノブ殿達もそれぞれ周囲を警戒したであります。
「魔物でござる!」
地面から湧き出るように魔物が姿を現したであります。植物系のトレントや、昆虫系が多数でありますな。
レベルはおよそ100前後の強さで、普通なら手強い魔物ではありますが、今の小生達ならば充分に対抗出来る相手であります。
「にししっ、魔物だ魔物だ〜! 暴れていいんだよね? アチシ、大活躍するよ!」
「――――――病み上がりの運動には丁度良いえ〜。ウチも暴れさせてもらいますわ〜」
メリッサ殿がどこからか巨大な木槌を取り出して、大喜びで構えたであります。
パールス殿も好戦的な笑みをうかべているであります。
ちょっと不安を覚えるでありますが、頼もしいと思おうであります。
シノブ殿はともかく、スミレ殿もメリッサ殿と似たような雰囲気を見せているでありますし、思い切り身体を動かしたい年頃なのでありましょう。
「ここで食い止めるであります! 魔物をこの広場から出すわけにはいかないであります」
世界樹の広場から魔物達を逃がして、エルフの里にまで被害を出すわけにはいかないであります。
小生達はそれぞれ、湧き出てきた魔物を片っ端から倒していったであります。
しばらく魔物を倒し続けているでありますが、魔物が湧き出て来る一方で、止まる様子がないでありますな。
メリッサ殿やスミレ殿達が大はしゃぎで相手にしているので、今のところ問題ないでありますが、このままでは切りが無さそうであります。
こんなにも魔物が湧き出てくるなんて、迷宮内で何かが起きたのでありましょうか?
――――――――――!!!!!
世界樹の幹の部分に亀裂が走り、何かが飛び出してきたであります。
あれは······先ほどレイ殿が倒した巨人!?
小生では鑑定出来ない程の魔物で、これはマズい事態であります。
――――――――――!!!!!
――――――――――!!!!!
一体だけではない!?
さらに二体目、三体目と出てきたであります。
この巨人はレイ殿でも手を焼いていた相手······。
小生達だけで、どうにかなるでありましょうか?