475 世界樹の最終階層へ
冥王テュサメレーラの力で、迷宮の最終階層まで一気に行くことが可能らしい。
ただ、入口と最奥を行き来することは出来るが、攻略途中のアイラ姉達と合流するのは無理だそうだ。
けど、広大な迷宮の最奥にいきなり行けるのは、充分にチートだな。
最奥ということは迷宮の守護者がいるだろう。
オレは(超越者)のスキルを手に入れて大幅にパワーアップしたが、迷宮の守護者に勝つことは可能だろうか?
楽勝の可能性もあるし、まるで歯が立たないくらい、とんでもない強敵の可能性もある。
現在、転移魔法を使えないので強敵だった場合、最悪逃げることも出来ないかも。
だが、ダルクローアはどこに行ったかわからないし、呪いを受けたというミールの行方も気になる。
あまり悠長にはしていられない。
守護者を倒せば、世界樹の異変を止めてダルクローアの企みを完全に潰せるかもしれない。
「わかった。オレを迷宮の最終階層まで連れて行ってくれ」
「躊躇するかと思ったら、なかなかに自信満々ダネ。ま、僕もそれなりに力を貸してあげるから、大船に乗ったつもりでいるといいヨ」
自信があるわけではないが、弱気になっていてはどうしようもないからな。
冥王も味方してくれるようだし、なんとかなると思おう。
「わ、わたしも行くからね、レイ君!」
エイミもやる気十分だ。
ここまで連れて来て、置いて行ったりしない。
「テュサ様、お気をつけて、私もすぐに向かいますから! アンタ達、それまでテュサ様の足を引っ張るんじゃないわよ!」
フルフルは冥王が解放した傀儡兵達を教育するためにここに残るようだ。
それが終わったらすぐに駆けつけるとか言ってるけど、フルフルは冥王の力無しで自力で最終階層まで来れるのかな?
まあ、いいか。
「それじゃあ準備はいいカイ? 最終階層まで移動するヨ」
冥王が呪文のような言葉をつぶやくと、足下に魔法陣が現れた。
エンジェが使っていた転移魔法陣とは少し違うな。そもそも、ここでは転移魔法は使えないんだし、冥王特有の移動魔法だろうか?
次の瞬間、オレ達は魔法陣から放たれた光に包まれた。
光が収まり目を開けると、さっきまでの白い空間とは打って変わって、黒く変色した禍々しい壁に囲まれた異様な雰囲気の大部屋に立っていた。
世界樹の中だから、神樹のような植物に囲まれた迷宮を想像していたのだが、どちらかと言うと学園地下迷宮の最奥付近のような気持ち悪い見た目だ。
ここが迷宮の最奥なのか?
バグ空間から脱出出来たみたいだが、相変わらずMAPは開けない。
部屋の中を見回していると、横で何かを見つけたエイミが叫んだ。
「ミ、ミール······!?」
エイミの声を聞いて気付いたが、奥の方に謎の液体で満たされた水槽のような容器があり、その中に行方がわからなかったミールがいた。
意識はなく、液体の中で微動だにしない。
死んでるんじゃないかと不安になったが、探知魔法でしっかり反応が確認出来るので生きているようだ。
どこに連れて行かれたのかと思っていたが、迷宮の最終階層に捕らえられていたのか。
ともかく、行方がわかってよかった。
「エイミ、離れて。今、ミールを助けるから」
心配そうに容器を覗き込むエイミを下がらせ、オレは奈落の剣を構えた。
容器の中の液体が何なのかもわからないし、早いところミールを助け出した方がいいだろう。
「おや、それはまさか奈落の守護者の剣カナ? どうしてキミがそれヲ······」
冥王に見せるのは初めてだったっけ。
冥王が奈落の剣を見て不思議そうにしているが、今はフォローする時間も惜しい。
剣に魔力を込めて、容器を壊そうと剣技を放とうとしたところで······。
――――――――――!!!!!
大部屋の空間に亀裂が走り、四方から巨大な人影が姿を現した。現れた奴らは魔神の一部と呼ばれていた巨人と同じ姿をしている。
それが全部で四体。
外で現れた巨人と同じく、コイツらも鑑定魔法でステータスが表示されない。
コイツらがこの迷宮の守護者か?
それにしても外に出て来た巨人は大ボスかと思っていたが、複数いる一体に過ぎなかったのかよ。
まあいい。
(超越者)のスキルを手に入れた今なら、たとえ複数現れても相手に出来るだろう。