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474 傀儡からの解放

 迷宮のバグ空間から脱出するための出口を切り開いたところで、無数の傀儡兵が姿を現した。

 もういないと思っていたのだが、こんなところに潜んでいたのか。


 オレは剣を構え、エイミとフルフルも臨戦態勢に入った。現れた傀儡兵は全員、レベル100もないので油断しなければどうにでもなる相手だ。

 しかしコイツら、構えを取らずに襲いかかってくる様子もない。

 何か企んでいるのか?




「ま、待ってくれ。我々はお前達と敵対する気はないんだ······!」


 動きを見せないので、こちらから仕掛けるべきかと身構えていると、傀儡兵達が持っている武器を捨てて、そう言葉を発した。

 どういうことだ?

 予想外の行動に少し戸惑ってしまった。


 今まで傀儡兵の中には言葉を発する奴もいたけど、機械的で感情が見られないような喋り方だったのに、コイツらは普通に流暢に話している。

 罠の可能性もある。ここは慎重に行こう。


「どういうことだ? お前らはあのダルクローアって奴の配下だろ?」


 いつ襲ってきても対処出来るように構えながら、オレは傀儡兵達に問う。


「信じてもらえないかもしれないが、あの方に従っていたのは自分の意思ではないんだ」


 まあ、傀儡兵達が操られていたってのはわかる。

 ダルクローアはブレインワームという魔虫を使って色々やっていたみたいだしな。


 コイツらはその呪縛から逃れたのか?

 まだ、演技の可能性があるので油断出来ないが。

 けど、どうしようか?

 演技かどうかを見破るには判断材料が特にないし、どう動くのが正解だろうか。



「そいつらの話は本当サ。何故なら僕が、そいつらの呪縛を解いてやったんだかラネ」


 どうしようか悩んでいたところで、何もない空間から突然、冥王(テュサメレーラ)が姿を現した。


「テュサメレーラ、どうしてここに?」

「ちょっとアンタ! テュサ様を呼び捨てにしてるんじゃないわよ!!」


 思わず冥王に問いかけたら、フルフルが怒声を浴びせられた。

 話が進まないので静かにしていてほしい。


 冥王も世界樹の中に入ったというのは聞いていたが、だとするとアイラ姉達もこの近くにいるのだろうか?


「フルフルも来てくれたのは丁度良いネ。フルフルに頼みたいことがあるかラサ」

「はいっ、テュサ様の頼みでしたら喜んで!!」


 尻尾があったらブンブン振ってそうな様子で冥王に駆け寄るフルフル。

 まずは冥王に状況説明をしてもらおう。


「それで、傀儡兵達(そいつら)の呪縛を解いたってのはどういうことなんだ?」

「言葉通りサ。もう、そいつらは神将(ダルクローア)の支配下にはないヨ。寄生していた魔虫は全て排除したシ、念の為、あらゆる解呪も施しておいたかラネ」


 冥王の説明によると、傀儡兵達はダルクローアによって魔虫を寄生させられた上で強化改造を受け、戦力としていいように使われていたらしい。

 彼らは魔人族ではあるが、元々は魔王軍には属さない一般人らしく、ダルクローアに無理矢理に攫われる形で傀儡兵にされたとのこと。

 それが本当なら傀儡兵(この人達)もダルクローアの被害者だということになるな。



「もっとも、コイツらは比較的最近、強化改造を受けた者達だから助けることが出来たノサ。すでに手遅れの者達は土に還って、()()()にいるヨ」


 冥王が指差した先には何体かの幽体(レイス)が漂っていた。

 魔虫に長く寄生されていたら、解放されても肉体が崩壊してしまうんだったな。

 手遅れだった傀儡兵達はデューラさんのように、冥王が幽体(レイス)に転生させたらしい。



「我々を呪縛より解放していただき、冥王様には心より感謝しております」

「ああ、大いに感謝しなヨ。仮の肉体(このからだ)じゃ解呪するのも結構大変だったんだかラネ」


 話をまとめると、冥王が全ての傀儡兵達をダルクローアの呪縛から解放したということか。

 正気に戻った傀儡兵達は、まともな性格をしているし、自分達を救ってくれた冥王を心から慕っているようだ。

 ていうか冥王、助ける義理なんてないだろうに傀儡兵達を解放するなんて、結構良い奴なんだな。


「今は我が神の大事な時期。僕も本当に忙しい身なんでネ。丁度、人手が欲しかったところなノサ」


 どうやら雑用を押し付ける人手が欲しかっただけらしい。おどけた表情で言うから照れ隠しなのか、本心なのかわからないな。

 まあ、ダルクローアの魔の手から傀儡兵達を救ったのは事実なんだし、理由なんてどっちでもいいかな。


「というわけでフルフル、コイツらの面倒を任せるヨ」

「はい、お任せください、テュサ様!」


 どうやら冥王は幽体(レイス)になった者達だけでなく、生き残った傀儡兵達も受け入れるつもりみたいだ。

 生き残った者達も強化改造とやらで異形の姿にされてしまっているので、魔人領に帰るという選択肢は取らないようだ。

 元の姿に戻る手段が見つかるまでは、冥王の下で働くのかな。



 まあ正気に戻ったのなら、もう敵対する意思もなさそうだし、後は冥王やフルフルに任せてもいいかな。

 傀儡兵達のことはそれでいいとして、オレはアイラ姉達のことが気になる。


「それで、アイラ姉達······他に世界樹に入った人達はどこにいるんだ?」

「ああ、彼女達なら迷宮を攻略中じゃないカナ? 悪いけど、なかなかに厄介な迷宮だかラネ。僕にも行方はわからないヨ」


 冥王もアイラ姉達の動向を把握出来ていないらしい。アイラ姉達でも手間取るくらいの迷宮なのかな。

 神樹の迷宮は全300階層と広大だったし、ここはそれ以上なのかもな。

 だとすると攻略に相当な時間がかかりそうだ。



「だけど、僕の力なら最終階層へ直接行くことは可能ダヨ。何が待ってるかわからないケド、今すぐ行ってみるカイ?」


 と思っていたら冥王がそんなことを言い出した。

 いくら冥王だからって、そんな身も蓋もないチート行為が出来るのか?



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