56 スミレの決断(※)
※(注)変態男が現れます。
苦手な方はこの話はとばしてください。
(スミレside)
アルケミアにここを守れと言われたけど特にやることがない。
しばらくボーッと立っていると突然屋敷全体が霧に包まれた。
周りの人達が倒れていく。
眠っているだけみたい。
どうやらこの霧には人を眠らせる効果があるみたい。
ボクには耐性があるから効かないけど。
何かの魔法かな? 誰が使ったの?
すぐにその魔法を使った人物が入ってきた。
レイとせいじょの護衛騎士とかいう人だった。
「ここは通さない······」
誰が来たとしてもアルケミアの命令には逆らえない。レイはボクがここにいることに驚いているみたい。
「そこをどきなさい! さもないと叩きのめしますよ!」
「ムリ······ボクの意思じゃ命令に逆らえない」
護衛騎士の人が大きな剣を構えたからボクも武器を構えた。あの氷山にいた竜に刺さっていた剣。
結構使いやすい。
アルケミアも何も言わなかったし、ボクがもらってもいいんだよね?
剣を構えてたらレイに掴まれ抑え込まれた。
「リン! スミレはオレが抑えておくから先にセーラとアルケミアの所に! この先にある部屋にいるはずだ!」
「ありがとうございます、レイさん!」
レイに掴まれていたから護衛騎士の人が走っていくのを止められなかった。
ま、いいや。
ボクは剣を手放しレイの腕から逃れた。
この後どうしようか?
本気で戦ってもレイに勝てそうにない。
そう考えているとレイの手には何か黒いマスクが握られていた。
なんだろアレ?
レイはそのマスクを被り顔を隠した。
今さら顔を隠しても意味ないと思うけど?
マスクを被ったと思ったら今度は服を脱ぎ出した。それも一瞬で。
レイは下着だけの姿になった。
こうして見るとレイの身体って結構たくましいんだ。
お爺ちゃんもあんな感じの筋肉だったかな。
ユヅキはもっと細かったけど。
それはそうと何でここでそんな格好を?
でもあのマスクを被ったレイはさっきよりもさらに強くなった感じがする。
「私の名は正義の仮面! 少女スミレよ、あなたを無力化させてもらいます」
レイがそんなふうに名乗り出した。
正義の仮面? レイだよね?
よくわからないけど戦うつもりみたい。
「ボクは······簡単には負けない」
戦うからには全力でやる。
それにしてもレイはどうしたんだろ?
喋り方も変わったし、本当に別人みたい。
「少女スミレよ、戦うのはあなたの意思か? それとも命令されて仕方無くか?」
命令されているけど正直どっちでもいい。
ボクは流されるままに生きる。
その方が楽だから。
「どっちでもいい。ボクはただ言われたことをやるだけ············首輪が無くてもそれは同じ」
「なるほど、隷属の首輪に関係無くあなたの自分の意思の無さはいささか問題がある。私のお仕置きで目を覚まさせてあげよう」
お仕置き? 何をするつもりかわからないけど······。
ま、いいか。ボクは全力で戦う。
さっき剣を手放したからボクは懐から短刀を取り出し、レイ(?)に斬りかかる。
けどボクの攻撃は簡単に受け止められた。
やっぱり強い······。
「アースグレイブ!」
ボクは「土」属性の魔法をレイ(?)に放った。
その攻撃も簡単にかわされた。
「風」属性の魔法を撃っても同じだった。
動きが素早すぎる。
「魔法とはこう使うものです」
レイ(?)がボクの使った魔法と同じ魔法で反撃してきた。同じ魔法なのに威力が桁違い············。
まともに戦ったんじゃ勝ち目はない。
ボクはスキル(幻獣化)を使う。
「はああーーっ!!」
(幻獣化)スキルは里を追放された時にその力の大半を封じられていた。
けど無理矢理使えばステータスを上昇させるくらいは出来る。
姿が変わることはないけど別にいい。
「ほう、それがあなたの本気ですかな? なかなかの力の上昇ですな」
余裕を見せていられるのも今の内············。
ボクの本気をぶつける。
「さあ来なさい、少女スミレよ!」
「言われなくても······!」
ボクは自分の出せる全ての力を込めてレイ(?)に向かった。
スキルの力を使ってもレイ(?)との力の差は全然埋まってなかった。
でもボクは構わずに全力で立ち向かった。
「············はあ、はあ······っ」
どれだけ攻撃したかな············。
もうスキルも体力も切れそう。
なのにレイ(?)はまったく息を切らしていない。
スキルを使っても勝てなかった······。
(幻獣化)が完全に使えてたらなんて言い訳にしかならない。
けどこんなに全力で動いたのなんてずいぶん久しぶりかも。レイ(?)との戦いを楽しんでいる自分がいた。
「そろそろ限界のようですな?」
「············うっ······」
レイ(?)の軽い攻撃を受けてボクは膝をついた。
確かにもう限界かも············
「ならばこれで終わりです、とうっ!」
「······え······うぶっ······!?」
レイ(?)が体当たりをしてきた。
ちょうど男の人の大事な部分がボクの顔にぶつかる。
······なんだろ? 自分でもよくわからない感覚。
でもイヤじゃない············かも。
ボクはそのまま倒れた。
もう力が入らないや············。
「私の勝ちですな」
ボクの負けだね············。
でもあんまり悔しくはないかな。
「少女スミレよ、あなたに自由を与えよう。ただしこれからはもっと自分の意思を持つようにしなさい、それが条件です」
そう言うとレイ(?)はボクの首に手をかざす。
すると隷属の首輪が外れた。
特別な首輪でボクやしんでんの人達が何をやっても外れなかったのに。
これでボクは自由?
ボクの意思······ボクのしたいこと······。
ボクは············。
「では私はこれで失礼する。まだ一人お仕置きすべき人物がいるようですからな」
そう言ってレイ(?)は奥に進んでいった。
ボクは倒れたまま今後どうするべきか考えた。