467 神具の力
ダルクローアが自分からオレ達の前に現れてくれたのは僥倖だ。
全ての元凶であるコイツを倒すなり捕らえるなりして無力化すれば、異変を解決出来るかもしれない。
もう手駒は残っていないのか、新たに傀儡兵を呼び出したりはしないようだな。
まあ、レベル100くらいの傀儡兵を出してきたところで、どうにでもなるし、デューラさんのような手練れはそうそういないのだろう。
問題は奴が手にしている槍の形をした神具だ。
鑑定が出来ないから、どんな特殊な力があるかわからないが、神具というからには決して弱くはないだろう。
「ヒッヒッヒッ、さあ、ひれ伏しなさい」
ダルクローアが神具を掲げた。
さっそく使ってきたか。
奴の持つ神具が不気味な光を放った。
〈――――の効果を抵抗しました〉
メニュー画面にそんな表示が出た。
特殊能力の名前は塗りつぶされたようになっていてわからないが、無効化は出来たらしい。
神具の特殊能力は名前表示が出来ないのかな?
「スミレ殿、フルフル殿、大丈夫でござるか!?」
オレと同じく(全状態異常無効)スキルを持つシノブは平気なようだが、スミレとフルフルが体調悪そうに膝をついていた。
エイミはルナシェアの「聖」なる力に護られて大丈夫そうだ。
「おや、勇者や聖女はともかく、そちらのお嬢さんまで神具の力に耐えるとは······。加減し過ぎましたかな?」
ダルクローアはシノブが平気そうにしているのを見て、心底不思議そうな様子だ。
神具の力も防げるとは、やはり(全状態異常無効)はかなり強力なスキルのようだな。
ただ、絶対に効かないとは慢心出来ないな。
神具は強力なアイテムだし、何度も受けたらスキルの効果を貫通してくるかもしれない。
「くらえっ! 神魔斬衝剣!!!」
スミレとフルフルの治療はシノブに任せて、オレはダルクローアに向けて(神聖剣術)を放った。
ダルクローアは神具でオレの剣を受け止めた。
「くっ······あの女勇者程ではありませんが、貴方も本当にお強いですね」
オレはアイラ姉のようにレベル1000を超えていないが、力勝負ならダルクローアに勝てそうだ。
だが、そのまま神具を破壊してやろうと力を込めたが、まるでビクともしない。
やはり神具は破壊不可能なのか?
「ヒッヒッヒッ、無駄ですよ。神具を破壊することなど不可能ですから」
オレの考えてることを見透かしたように、ダルクローアが言う。
けど、破壊不可能と言っているが以前にメアルさん達に壊されたんじゃなかったか?
メアルさんがどうやって神具を壊したのかわからないが、少なくとも破壊する手段があるということだ。
考えつく手段と言えば、こちらも同様の力を持つ神具で対抗するとかだが、オレは神具なんて大それた物は持っていない。
いや、そういえば例のあの謎のマスクは神具と表示されていたような······。
アレを身に付けている状態だと、普段とは比べ物にならない力を発揮出来るし、聖剣を神剣に進化させたりするような特殊なことも出来たんだよな。
アレは出来れば使いたくないが、こんな状況じゃそんなことも言ってられないか?
と思っていたら、アイテムボックスから別の物が反応を示し、勝手に飛び出してきた。
「何······!? その輝きは、まさか神具!?」
それを見てダルクローアが驚きの表情をうかべる。オレも予期せぬことで少し驚いた。
出てきたのは虹色に輝く石で、例のマスクではない。
(次元渡りの石〈アイテムランクーーー〉)
別世界への移動を可能にする神具。
アイテムボックスから出てきたのは、神樹の迷宮の報酬として手に入れた物だ。
そういえばこれも神具の一種だったな。
けど、いくら神具とはいえ、この状況で役に立つアイテムとは思えないが。
エネルギー残量不足で使えなかったはずだし······。
――――――――――!!!!!
そう思っていたら、次元渡りの石が眩い光を放ち、ダルクローアの持つ神具に纏う力を吸い込んでいる。
「バカな、私の神具の集めた力を吸収している!? その石は一体······」
どうやらオレの持つ次元渡りの石が奴の持つ神具の力を奪っているみたいだ。
まさかこの石にそんな力があったとはな。
次元渡りの石はその名の通り、別の次元に存在する世界に移動する力を持っているらしいのだが、エネルギー残量不足のため、その力を使うことが出来なかった。
どうやってエネルギーを注ぐのかも不明だったのだが、もしやこうやって別の神具の力を奪って、エネルギーを貯めることが出来るのか?
まあいい。
これなら、このままダルクローアの神具を無力化することが出来るかもしれない。
その上、元の世界に戻るためのエネルギーも貯まる可能性もあるし、一石二鳥だ。