466 状況の把握
本編再開です。
465話からの続きです。
世界樹の広場は平和そうな雰囲気で、もう異変は解決したのかと思ったがそうではなかったようだ。
ルナシェアから事情を聞いたが、ダルクローアが世界樹の力を使って迷宮を出現させて、アイラ姉達を引き込んだらしい。
ずいぶん前(本編37話)に邪気溜まりが作り出した迷宮に引き込まれた経験があるけど、あの時のように近くにいた人物を無差別に取り込んだのだろうか?
「エイミは身体に異常ない?」
「冥王が〝呪い〟を取り除いてくれたようで、小生が見る限り異常はないであります」
エイミはダルクローアの持っていた神具によって〝呪い〟とやらを受けたらしいが、今は意識がないだけで異常は見当たらない。
冥王は前にもジャネンという人物の呪いを取り除いたこともあったし、そういう類の力に対抗出来るようだ。
とすると問題なのは、ダルクローアの薬によって呪われたというミールだ。
念話にも一切応答せず、状況がまるでわからない。無事だといいのだが······。
「ふ〜ん、あのエルフ取り込まれちゃったんだ。そっちの子と同じで、なんか怪しい感じはしてたんだよね」
フルフルがエイミを見ながら、そんなことをつぶやいた。どういうことだ?
少なくともエイミもミールも、オレが見ていた時は特に異常は感じなかったが。
「もともと、過去にあの神将の呪いを受けてたんじゃない? ただ今までは発動はしてなくて、神具やその薬ってのがきっかけに発現したとか? 直接見たわけじゃないから、なんとも言えないけどさ」
フルフルの言葉を聞いて思い出したが、ダルクローアはエイミとミールがエルフの里に来ていることを知って嬉しい誤算だとか言っていたな。
どういう方法かわからないが、エルフや精霊を支配出来なかったから二人を利用して世界樹の力を解放したのか?
だとしたら、二人をエルフの里に連れて来たのはマズかったのだろうか。
いや、今更そんなことを考えても仕方無い。
「······ん、あ、あれ? レイ君? シノブちゃん達も」
エイミが目を覚ました。
見たところ、身体に異常は見られず〝呪い〟とやらを受けた影響はなさそうだ。
ひとまずは安心してよさそうだな。
目覚めたエイミに現在の状況を説明した。
ミールが呪いを受けてダルクローアの手に落ちてしまったことは話すか悩んだが、隠しても仕方無いと思い、全部話した。
「そんな······ミールがわたしのせいで。お母さん達まで連れて行かれちゃったなんて······」
「エイミ殿の責任ではないでありますよ。全てはあの元凶のせいであります!」
混乱するエイミをルナシェアが慰める。
エイミは責任を感じているが、ルナシェアの言う通り全てはあのダルクローアの仕組んだことだ。
それに今は責任の有無よりも、皆の無事を信じて助けに行くしかない。
ミールがそんな簡単にダルクローアの思い通りにならないと思うし、アイラ姉達も心配ないと思うが。
「アイラ殿達は世界樹の中に取り込まれたのでござるか? 追おうにも、入り口らしきものは見当たらないでござるが」
シノブの言うように神樹の時と違い、世界樹やその周辺に迷宮の入り口は見当たらない。
世界樹に無理矢理に穴を開けて侵入するべきか?
迷宮はよくわからない異次元空間に存在するものらしいから、そんな物理的方法で入れるか不明だが。
それに世界樹を傷付けるのはさすがにマズイか?
「ヒッヒッヒッ、やはり貴方も来ましたか。子供まで連れて来て、ピクニック気分ですかな?」
突然、世界樹の中からすり抜けてきたようにダルクローアが姿を現した。
コイツが逃げた本体か?
それとも他にもまだいるのか?
いや、今はそれよりも······。
「先に来た皆をどこへやった?」
「世界樹の力を使い、私が新たに創造した世界にご招待しましたよ。今頃、存分に楽しんでいるんじゃないですかね?」
創造した世界ってのは迷宮のことだろう。
迷宮は人為的に創り出せる物だったのか?
いや、今はそんなことはいい。
迷宮に取り込まれたのだとしてもアイラ姉なら転移魔法を使えるし、いつでも脱出出来るはずだが、出て来ないということは何かあったと考えた方がいいかもしれない。
目の前に元凶が現れてくれたのは、もしかしてチャンスか?
今ここでコイツをなんとかしてしまえば、少なくともこれ以上の異変が起きることは防げるかも。
簡単に倒せる相手ではないが、絶望的に強すぎるわけでもない。
「ヒッヒッヒッ、私を倒して助けに行くつもりですか? 今更遅いと思いますけどね」
ダルクローアがオレが剣を構えたのを見て、不敵に笑う。コイツが手にしている異様な気配を放つ槍が気になる。
鑑定しても一切の表示が出ないが、おそらくはあれがルナシェアからの話で聞いた神具か。
あれをなんとかして奴から奪えば、事態を好転出来るかな?