閑話⑰ 8 怪盗逃亡
(リーアside)
正義の仮面さんによって怪盗は無力化されたので、今の内に盗まれた宝石類を探すことにしました。
おそらくはこの屋敷のどこかにあるはずです。
「ふ······ブニョっとした、グニョンとしたモノが······ふふふっ······」
ちなみに怪盗は意識があるのかないのかよくわからない状態で時折、訳のわからない言葉をつぶやいています。
まあ、わたしも正義の仮面さんのアレを経験したことがあるので、気持ちはわかりますけど。
今でもあの時の感触を思い出すとドキドキしてしまいますし。
ですが、わたしはあの方の下着に少々触れた程度で直接見たことはないんですよね。
怪盗はあのような状態だったので当然、正義の仮面さんの下着の中を見ているはずですわよね。
あのように男性のを直に拝見するなんて、いくらなんでも刺激的過ぎますけど。
でも、今度またあの方に会うことが出来たら、新作魔道具の実験とでも理由をつけてまた勝負を挑んで見ましょうか。
あの方の素顔も気になりますが、下の方も興味ありますし、わたしも怪盗のように······。
おっと、これではわたしも変態みたいですわね。
それはそれとして、盗まれた物を探すとしましょう。屋敷内を探索中にレイさんと合流しました。
今までどこに行っていたのか聞くと、怪盗の相手はスミレさん達に任せて、一足早くこの屋敷を探索していたそうです。
なんだか少々、違和感を覚えますわね。
まるで正義の仮面さんと入れ替わるようにレイさんが現れたような······?
そういえば以前もレイさんがいない時に正義の仮面さんが現れましたわね。
これは偶然なのでしょうか? それとも······。
そのことはまた今度、追究することにしましょう。
探索を続けていると盗まれた物は屋敷内の一室に保管されていました。
王都中から盗んだ物は全部ありそうな量です。
盗んできた物をそのまま置いていた感じで、わたしの店から盗った物もすぐに見つかりました。
「わ〜、キラキラがいっぱいだね。アチシも少し貰ってもいい?」
「これは盗品だから駄目だよ、メリッサ」
メリッサさんが宝石類を持っていこうとしていたのでレイさんが優しく止めています。
王都に戻って衛兵や冒険者ギルドに報告すれば、それなりの報酬が出ると思うので、それで満足してもらいましょう。
スミレさんにもオススメの戦闘用魔道具を提供してあげることにしましょうか。
問題は宝石類の量が多く、とても持ち切れないのでどうしようかと思ったのですが、レイさんが収納魔法を使えるそうで、ここにある宝石類は余裕で入るようです。
とてつもない収納量ですわね。
ともあれ怪盗を捕らえ、盗まれた物も取り戻せたので、この件はこれで解決ですわね。
思っていたより早く解決してしまいました。
「えっ、もう怪盗を捕まえたの?」
レイさん達と共に怪盗を連れて王都の店に戻り、お姉様に報告すると大層驚いていました。
誰も姿すら確認出来なかった怪盗を、その日の内に捕らえたのですからね。
わたしは怪盗の屋敷で起きたことをすべて話しました。
「ま、またあの仮面の人が現れたんだ······。まあ、無事に解決出来たのならよかったよ」
正義の仮面さんが現れたことを話すと、お姉様は何とも言えない表情で、そう言いました。
「アチシはもっと遊びたかったんだけどな〜」
「············あんまり手応えがなかった」
メリッサさんとスミレさんは暴れ足りないといった感じですわね。
怪盗の操る人形をあれだけ相手にしていたというのに、まだまだ体力が有り余っているみたいです。
その後、町の衛兵に連絡して、盗まれた宝石類は持ち主に返還されることになりました。
ただ、問題の怪盗も一緒に引き渡すつもりだったのですが、それは出来ませんでした。
気を失った状態で拘束していたこともあり、少し目を離してしまったのがいけませんでした。
〈今日のところは負けを認めてやる。次こそはあの男には負けないんだからな!〉
という書き置きを残して、いつの間にか姿を消していました。
正義の仮面さんのお仕置きで完全に懲らしめられたと思っていたのですけど、まだまだ懲りていなかったみたいです。
あの様子で逃げる気力が残っているとは思いませんでした。
「ごめん、ちゃんと見張っておくべきだったよ」
「いえ、レイさんの責任ではありませんよ。わたしも強力な拘束用魔道具を使うべきでした」
逃がしてしまったものは仕方ありません。
盗まれた物はすべて戻ってきたので、それで良しとしましょう。
結局、あの怪盗が何者だったのか、わからずじまいになりましたが、この様子ならまた正義の仮面さんに挑むために現れそうなので、その時に素性を暴けばいいでしょう。
どちらかと言うと、わたしは怪盗よりも正義の仮面さんの正体の方が気になりますけど。
閑話はこれで終わりです。
次回より本編に戻ります。