表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
618/735

閑話⑰ 4 凄腕怪盗?

 天井付近から例の怪盗と思われる、狐のお面を付けた人物が姿を現した。

 芝居がかったセリフを言いながら高笑いをしている。



「この怪盗ローウル様の屋敷に侵入してきたことを後悔す――――――――――ふぎゃっ!!?」


 笑っている最中に手か足を滑らせたのか、バランスを崩して顔面から床に落下した。

 結構な高さから落ちたけど、大丈夫なのか?


()っ······は、鼻を思い切りぶつけてしまった······」


 痛そうにしているが大した怪我はしてないみたいだ。ただ、今の衝撃で狐のお面が外れて、素顔が露わになっている。


 男だと思っていたら、怪盗の正体は顔立ちの整った可愛らしい女の子だった。

 見た目はスミレやメリッサより少し上くらい、リーアと同じくらいの年齢かな?

 まさか、こんな少女と言っていいくらいの子が王都を騒がせている怪盗だとはな。


 凄腕と聞いていたけど今のを見る限り、かなりお間抜けな印象なんだが。

 この広い屋敷に一人で住んでるのかな?

 探知魔法で調べた限り、屋敷の中にある反応はこの子だけだ。

 親御さんとかはいないのだろうか?



「えーと、とりあえず大丈夫?」

「な、情けは無用! このくらい、なんともないわ!」


 声をかけたら、バツが悪そうに顔を真っ赤にしてそう言った。

 一応は平気そうだな。


「あなたですか、世間を騒がせている怪盗は? わたしの店から盗んだ物を返して欲しいのですけど」


 リーアが前に出て怪盗の女の子に言う。


「むっ、私の正体を見破るとは、お主只者ではないな!?」


 いや、正体見破るとか······自分で名乗っていただろう。

 顔を隠していたお面が外れたのもドジしたからだし。本当にこの子が凄腕の怪盗なのか?

 だんだん怪しくなってきたな。


「バレてしまっては仕方無い。その通り、我が名は怪盗ローウル! いずれ全世界に名を轟かせる稀代の怪盗なり!」


 このローウルって子、ひょっとして厨二病が入ってる?

 異世界にも厨二病ってのがあるのか。


「············人の物を盗るのはいけない」


 スミレがまともな指摘をする。

 アイラ姉の教育のおかげで、スミレもずいぶん常識が身についたものだ。


「被害報告を考えて、もうずいぶんの量の宝石類を盗んだはずですわよね? 少々、欲張り過ぎではありませんか?」


 リーアの言うように王都での怪盗の被害は数十件にも及んでいる。

 結構高価な宝石も盗まれたらしいし、2〜3件盗めば相当な稼ぎになっているはずだ。



「私とて無意味に盗みを繰り返していたわけではない。この国には正義の仮面を名乗るヒーローがいるそうではないか。数々の事件を解決していると話に聞いたので、世紀の怪盗である(われ)を捕らえられる実力があるか試しに来たのだ!」


 ん? なんか話がおかしな方向に行ってるような······。


「しかし、何度も怪盗として動いても一向に現れる気配はない。ヒーローがいるという話はデマだったのか?」


 えーと、つまり正義の仮面に会うために盗みを働き続けたと?

 それって怪盗騒ぎが続いていたのはオレのせいってことになるのか?

 というか正義の仮面ってどのくらい話が広まっているのだろうか?


「その話は本当ですわね。あの方にはわたしも何度かお世話になっていますし。ですが、最近は活躍を聞かなくなってしまったので、もう王都にはいないのではと言われていますわ」

「むう、やはりそうなのか。さてはこの怪盗ローウル様を恐れて逃げ出してしまったのだな」


 怪盗ローウルなんて今日初めて聞いたけどな。

 厨二病怪盗が不本意ながら少し有名になっているヒーローに挑戦しに来たってことか。

 どうやら正義の仮面が()()()姿()()()()()()()までは知らないようだ。


「まあ、そんなことはいいよ。それよりも目的がそれなら盗んだ物には興味ないんだろ? 全部返してもらおうか」


 あまり深く正義の仮面の話はしてほしくないので、本題に入ることにした。

 この子が怪盗なら、盗まれた物はこの屋敷のどこかにあるのだろう。


「興味ないなんてことはないぞ。美しい宝石は華麗な怪盗である私に相応しいしな。簡単に返してやる理由なんてないな」


 やはり、はいそうですかと返してくれないか。

 けどその返答に好戦的なお子様達(スミレとメリッサ)は嬉しそうにしていた。


「にししっ、だったらアチシ達と遊ぼうよ。怪盗って言うくらいだから強いんでしょ?」

「············ボク達が相手をしてあげる」


「むぅ、子供の遊びに付き合ってあげるほど私は暇ではないのだが。いいだろう、この怪盗ローウル様の凄さを見せ付けてやろうではないか」


 ローウルが好戦的な二人を見て怪訝な表情をするが、すぐに切り替えて自信満々にそう言った。



 いや、大丈夫かな?

 その二人は見た目はただのお子様だが、とんでもなく高レベルなんだぞ?



 下手したら怪盗ローウル(この子)を大怪我じゃすまない目に合わせてしまうかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ