閑話⑰ 2 怪盗を追う手段
王都の魔道具専門店〝トゥラヴィス〟に訪れた。
ここには何度か来ていて、店員の姉妹リーナとリーアとは顔見知りであり、たまに魔石や鉱石を譲っている。
見返りに質の良い魔道具を安く売ってもらえたりしているし、なかなか良い関係を築けていると思う。
今日は、スミレの戦闘スタイルに合うような魔道具はないか探しに来た。
最近は周りの皆がどんどん強くなっているのを気にして、スミレも何か新しい武器となる物が欲しいらしい。
ちなみにメリッサは初めは連れて来るつもりはなかったのだが、オレ達のその話を聞いていて、一緒に来たいと駄々をこねたので同行させた。
まあ特別何かをする予定もない、ただの買い物だし別にいいかと思っていたのだが······。
「王都に怪盗が現れた?」
「怪盗というより、ただの泥棒ですわね。王都中に被害が出ていたのですけど、昨晩ウチもやられてしまいましたのです」
リーアの話によると王都では怪盗を名乗る泥棒の被害が多発していると。
だが、姿を見た者はおらず一切尻尾を掴ませないらしい。
そしてリーア達の店も被害を受け、魔道具に取り付けるための魔石や鉱石、宝石類をゴッソリ盗られたようだ。
「二人は大丈夫だったの? そいつに何かされたりは?」
「あたし達は特に何も······。肝心の泥棒の姿も見ていないし」
心配して聞いてみたが、物を盗まれただけで人的被害はないようだ。
リーナも言うように怪盗の姿は見ておらず、今朝になって被害に気付いたらしい。
この店は魔道具専門店であり、防犯用のアイテムもいくつかあるはずだが、それらを掻い潜って盗まれたということか。
「防犯用魔道具が役に立たないなんて、店の信用問題にも関わりますわ。なんとしても件の怪盗を捕らえ、改善しなくては······!」
リーアは物を盗られたことよりも、自身が作った魔道具が役に立たなかったことを問題視しているみたいだな。
「というわけで来店早々申し訳ないのですけど、例の怪盗を捕まえるのに協力してもらえないでしょうか? もちろん、冒険者ギルドを通じて正式な依頼として、報酬もお支払いいたしますわ」
リーアがそうお願いしてきた。
まあ、今日は特に予定があるわけでもないし、そういう事情なら正式な依頼じゃなくても協力するのは構わない。
「ああ、わかった。協力するよ」
「············ボクも手伝う」
オレだけじゃなく、スミレも協力的だ。
エルフの里の件では足を引っ張ったと思い込んでいるし、名誉挽回のつもりだろうか。
まあ、それならそれでいいかな。
それよりも、協力するにしてもどうしようか?
誰も姿を見たことないのなら、町での聞き込みも成果が出るとは思えないし。
ちょっと探したくらいじゃ、尻尾を掴ませてくれないだろう。
以前、リーアが作った人捜し用の魔道具は改良中で、今は使える状態じゃないらしいし。
「これが、そのかいとーってのが置いていった人形? 全然動かないね」
メリッサが例の怪盗が残していったという人形をいじくり回していた。
可愛らしい女の子の人形だが、特に珍しいとは思えないし、なんの仕掛けもなさそうだから動くはずはない。
「けど、持ち主の魔力が残ってるから、アチシならこれを辿ってかいとーのいる場所を探れるよ」
何か怪盗を探す手段はないかと考えていたら、メリッサがそんなことを言い出した。
言われてみて人形を確認すると、確かに魔力っぽいのが僅かに感じれるけどオレには持ち主の場所を探るなんて出来そうにない。
メリッサは自信満々に言っているけど本当に出来るのだろうか?
人形繋がりで、何かを感じ取ったのかな。
「メリッサさん、でしたわね。本当にそんなことが可能なのですか?」
「任せてよ! 面白そうだし、アチシがそのかいとーってのを捕まえてあげるよ!」
リーアの問いにメリッサは胸を張って答えた。
なんとなく不安だが、今のところ他にアテはないしメリッサに任せてみるかな。