461 世界樹の広場
「一体どこで何してたのよ、アンタは!? こっちでは変な男が現れたりして、色々あったんだからね!」
元の姿になり、オレは何食わぬ顔で戻って来たのだが、開口一番にフルフルが怒鳴ってきた。
どうやら正体がバレたわけではないようなので、そのことにはホッとした。
魔虫の相手に手間取っていたと適当な言い訳をして、フルフルを宥めておいた。
フルフルもそんなことより世界樹の下に向かうのが先決だと、深く追及してこなかったから助かった。
結界が消えたことにより、先に進めるようになっている。一応、結界を解いたのはオレなんだが、自分でもどうやって消したのかはよくわかっていない。
やはり、あの特殊なマスクの力だろうか?
まあ考えたってわからないし、今は世界樹の異変を解決するのが先決だ。
「植物の根の力がさらに増しているでござるよ!」
「············問題ない。これくらい軽く蹴散らす」
道中、再び世界樹の根が襲いかかってくるので、振り払いながら先を急ぐ。
シノブの言うように、襲ってくる根がさらに手強くなっていた。
問題ないと言っているが、スミレが少々手こずるくらいに脅威が増している。
「ほらほら、足手まといは置いていくわよ! しっかりついて来なさいよね!」
フルフルがスミレの援護をして根を撃退した。
なんだかんだでフルフルは結構面倒見が良いな。
幽体騎士の指揮もしていたし、リーダー気質はしっかりあるんだよな。
それにしても魔虫や傀儡兵などはもう現れる様子はないが、世界樹の根の勢いは全然止まらない。
もしかして世界樹本体と戦うことになったりはしないよな?
「なあ、フルフル。世界樹が暴走している原因とか、何かわかってることある?」
ダルクローアの奴が原因だろうが、どうやって暴走させているのかはわからない。
フルフル達なら何か掴んでいないだろうかと思い、聞いてみた。
「テュサ様が言っていたでしょ? あの神将が魔神の一部を復活させようと無理矢理に楔を抜こうとしているのよ。もしかしたら、もう復活してるかもしれないわ」
「楔を抜こうとすると世界樹が暴走するのか?」
「楔を抜いたからってそんなことにはならないわよ。多分、魔神の一部が世界樹を侵蝕してるんだわ。それで苦しくて暴れてるんじゃない? 人族だって身体に異物が入って苦しくなったら暴れたりするでしょ」
「世界樹って生物なのか?」
聞いている限り、世界樹というより巨大生物の話をしているみたいだ。
まあ普通の植物だって生きているんだし、異世界の、しかも世界樹なんていう特殊な木が生物のように生きていても今更不思議じゃないか。
「そりゃあ生命の源って言われてるんだし、生きてるに決まってるじゃない。冥界の〝冥泉妖桜〟だってそうだしね」
フルフルがサラッと気になる単語を言ったな。
もしかして冥界にも世界樹と同じような木があるのか?
気になりはしたが、ゆっくり話を聞いている時間はない。そうこうしている内に、オレ達は世界樹の下にたどり着いた。
「これが世界樹なのか?」
「幻獣人族の里の神樹も壮大でござったが、これは文字通り桁が違うでござるな」
森の中とは思えないくらいの拓けた場所に出た。
町一つ作れるんじゃないかと思うくらいの広場だ。
そしてその中心には巨大な木が存在しているのだが、まさに圧巻だった。
シノブの言うように神樹も相当な大きさだったが、世界樹はそれ以上だ。
それに神樹以上に神秘的な雰囲気を纏わせている気がする。
ここが世界の中心だと言われても、なんだか納得してしまいそうだ。
いや、それよりも異変を解決しなくては。
さっきまでは世界樹の根がひっきりなしに襲いかかってきていたのに、今はずいぶん静かだ。
それにアイラ姉達はどこに行ったんだ?
「············あそこ、誰かいる」
スミレが広場の隅の方を指差した。
遠目に見えるのは············ルナシェアか?
それと気を失っているエイミの姿もある。
二人だけか? 一体何があったんだ!?
「ルナシェア!」
「おお、レイ殿でありますか! シノブ殿達も来たのでありますか」
声をかけたらルナシェアはすぐに反応してくれた。エイミは意識はないが、特に大きな怪我もなく命に別状はなさそうだ。
アイラ姉や他の皆はどこに行ったのか、聞きたいことは色々あるが、ともかく、まずはルナシェアに状況説明をしてもらおう。