460 全ての障害の排除(※)
※(注)引き続き変態男が登場しています。
(フルフルside)
気持ち悪い魔虫の大群が襲いかかってきていたところに、今度は裸の男が現れたのよ!?
魔人? いや、そんな気配はないし、おそらくは人族なのよ。
けど、こんなところでそんな格好で現れるなんて絶対普通じゃないのよさ!
「私の名は正義の仮面。あなた方の味方ですので、ご安心を。さあ、この場は私にお任せください」
謎の男がそう言って前に出た。
正義の仮面? ただの変質者にしか見えないのよ。
けど敵意はないし、一応は味方だと思っていいのかな?
ん? そういえばさっき私の後頭部に当たってた、やわらかい感触って、ひょっとしてこの男の······。
なんで幽体の私に触れる······というか、なんてモノを当ててくるのよ!?
やっぱり敵だわ! 色んな意味で!
「おおっ、し······正義の仮面殿でござるか!」
「············頼もしい味方」
シノブとスミレはこの男のことを知っているみたいなのよ。
こんな変な格好をしているのに大して気にしていないし、人族の中では有名な奴なのかしら?
あれ、そういえばレイの姿がどこにもないのよ?
こんな時にどこに行っちゃったのよ、アイツは!
「「「――――――――――」」」
虫の魔物達がまた(洗脳)を乗せた音波を飛ばしてきたわ。
男はその音波をモロに浴びているけど、効いている様子はないわね。
変な男だけど、なかなかの実力者だわ。
「では、一息に殲滅してしまいましょうか」
男は両手に魔力を溜めると、魔虫達に向けて一気に放ったのよ。
一つの属性だけじゃない、いくつもの属性が混じった複合魔法?
簡単に出来るような技術じゃないし、威力もとんでもないのよ。
――――――――――!!!!!
特定の属性攻撃を無効化する虫もいたけど、これはさすがに防げなかったみたい。
あんなにいた魔虫達があっという間に全滅したわ。
人族にしては、なかなかやるじゃないのよ。
「さすがでござるな、正義の仮面殿」
「············見事」
シノブとスミレが男の活躍を称賛しているのよ。
私だってあれくらいのことなら、やろうと思えば出来るわよ。
ま、まあ実力は認めてやってもいいけどね。
「どうやらこれ以上、新たな魔物は現れないようですな」
そう言いながら男がこっちに来たのよ。
人族の男がどんな格好しようがどうでもいいんだけど、なんとなく直視しづらいわ。
私だって可憐で、か弱い女の子なんだからね。
レディの前でそんな格好するな、だわ。
幽体だって服くらい着てるんだから、さっさと何か身につけなさいよね。
「それてアンタは一体何者よ? シノブ、スミレ。アンタらの仲間なの?」
「この方は正義の仮面を名乗り、その名の通り、各地で正義の活動を行っている人物でござる」
私の問いにシノブが答えた。
正義の活動? この男が?
人族の世界には変な奴がいるのね。
「ふ〜ん、ま、そんなことはどうでもいいわ。それよりも魔物がいなくなったんだから、早くあの結界をなんとかしてテュサ様の下に向かわないと!」
この男がどんな奴であれ、私にはどうでもいいことだわ。スミレは頬を染めて男を憧れの目で見ているけど、裸の男のどこがいいのかしら?
まあ、人族にしては筋肉質なたくましい身体付きだとは思うけど、私はテュサ様一筋だし関係ないわ。
「結界ですか、ならばそれも私にお任せを」
男がそう言って結界に触れ、魔力を流し始めた。
かなり強力な結界のはずなのに、難なく触れたわね。男がある程度魔力を流していると、結界に亀裂が走った。
――――――――――!!!!!
結界はいとも簡単に砕け散った。
今、一瞬感じたコイツの魔力はテュサ様や他の冥王様達に匹敵するどころか、寧ろそれ以上の力を············いやいや、きっと気の所為なのよ。
確かに実力者だということは認めるけど、いくらなんでもそんなことはありえないのよ!
「どうしましたか、幽体のお嬢さん?」
「ひゃううっ!!? い、いきなり目の前に立たないでよね!」
考え事をしていたら、いつの間にか男が目の前にいたのよ。
気配なく近付くのはやめてほしいわね。
というか近いのよ!
何がとは言わないけど、目の前にチラつかせるのは本当にやめてほしいわ。
「それでは私はこれで、さらば!」
突然現れたと思ったら、やるだけやって去って行ったのよ。
本当になんだったのかしら、アイツは?
わからないことを考えるのはやめだわ、やめ!
何者か知らないけど、虫達を排除して結界まで消してくれたんだし、これで障害はなくなったわ!
一刻も早く、テュサ様の下へ急がないと!




