453 和解?
「テュサ様〜、傀儡達は全員排除しました〜! もう敵の気配も完全に消えましたよ」
フルフルが配下の幽体や、エルフ達を引き連れてこっちにやってきた。襲って来た傀儡兵はすでに倒し切り、新たな増援が現れる様子ももうないらしい。
「よくやったネ、フルフル。こっちの方もあらかた片付いたところサ」
冥王に褒められて、フルフルが満面の笑みを見せる。犬のような尻尾があったら、はち切れんばかりに振っていそうな様子だ。
エルフの中には学園長やフェニア、フェルケン、それとフェリサスさん達の姿もあり、アイラ姉とルナシェアにここで何が起きたのか、事情を聞いている。
学園長達の方では、傀儡兵が倒しても無限湧きのように次から次へと現れていたそうだが、フルフルや幽体の騎士達の活躍で問題なく相手をしていたそうだ。
そしてオレ達がダルクローアの半身を撃退したのと同時くらいに、傀儡兵達も新たに現れなくなったと。
操ってた奴がいなくなったから、傀儡兵達も撤退して行ったのかな?
ということは奴の本体もエルフの里を去って行ったのか?
そうだとしたら、取り逃がしたのは残念だが、とりあえずは安心出来るのだが。
「リプ、私がいない間に娘達が世話になっていたみたいだね」
「本当にメアル、なのね? それにデューラまで······」
アイラ姉達に事情を聞いた学園長が、メアルさん達に驚きながら問いかける。
学園長とメアルさんは親友だったらしいし、こっちもこっちで話したいことはあるのだろう。
ただ、他のエルフ達はメアルさん、特にデューラさんを見て、あまり良い顔をしていない。
操られていたとはいえ、デューラさんは多くのエルフを殺害してしまったということだからな。
はい、そうですかと簡単に納得は出来ないだろう。
「すまない、リプシース。言い訳をするつもりはない。どんな裁きも受け入れる」
「メアルが幽体になっているのにも驚いたけど、貴方も生きていたのね、デューラ」
そういえばデューラさんは当時、討たれて死んだことになっていたんだっけ。
まあ、今はデューラさんも幽体になっちゃってるけど。
どうやら当時のデューラさんは死んだのではなく、仮死状態になっていただけで、秘密裏に埋葬されるところをダルクローアがエルフ達に気付かれないように回収したらしい。
罪人の埋葬ということで詳しくは聞けなかったが、人目に触れない特殊な方法なのだろう。
だから今日までデューラさんの生存を知られなかったのか。
「おっと、その二人はすでに僕の配下だかラネ。勝手に裁くのは許可しないヨ?」
冥王がエルフ達にそう宣言した。
二人を気遣っての言葉か、単にせっかく手に入れた有能な配下を失いたくないだけかはわからないけど、冥王はメアルさん達の味方をしてくれている。
それによってエルフ達は苦い表情を見せるが、さすがに冥王を敵に回すのはマズいと判断したのだろう。
フルフル達とのレベル差や、戦いぶりを見てるはずだし、敵に回せばダルクローアの傀儡兵以上の脅威になるだろうからな。
それに事情を聞いて、真に憎む相手はデューラさんではなくダルクローアだということも理解しているはず。
まあ、いきなりそんなことを言われても信じられなかったり、納得出来ないというのもあるだろうけど。
殺されたエルフの家族や関係者は特に複雑な気持ちだろう。
メアルさんのように幽体となったエルフは他にいないのだろうか?
「おい、クソ長老! そもそもはお前らがあんな外道にむざむざ操られてたのが原因だろうが! あたしが命と引き換えにしてまで洗脳を解いてやったってのに、その時のことをすっかり忘れて娘達に責任押し付けやがって! あたしの愛娘達を奴隷になんて落として、覚悟は出来てるんだろうな、ああっ!?」
メアルさんがエルフの一人にガン飛ばしながら叫ぶようにそう言った。
長老とか呼んでいるけど、あの人がエルフの里の長老なのか?
確かに他のエルフより威厳がある雰囲気だしレベルも高めだけど、見た目は普通の青年って感じだ。
よく考えたら、里で年老いた見た目のエルフを一度も見ていないし、エルフは年を取っても老けないのかな。
「あ、相変わらずの口の悪さだな······。私にも非があることは認めるが······」
長老と呼ばれたエルフは、メアルさんの迫力にタジタジとなっている。
さっき威厳があると感じたのは気の所為だったかな?
「お、お母さん、落ち着いて······」
「母様、ワタシ達のことはもういいですから」
エイミとミールが興奮状態のメアルさんを宥めていた。本当にこの人、二人の母親なのだろうか?
性格的にはあまり似ていない気が······いや、ミールもキレると似たような威圧感を見せることもあったかな。
エイミも我を忘れていた時は凄い迫力だったし、やっぱり似ているのかも。
メアルさん達の方はまだ話を聞ける雰囲気じゃないし、今の内にデューラさんにダルクローアの目的とか、知っていることがあれば聞いておこうかな。