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451 親子の再会

 エイミとミールの父親を操っていた、ダルクローアと寄生魔虫は排除した。

 これで正気に戻っていてくれればいいんだが。


「ぐっ、う······」


 二人の父親、デューラさんと呼ぼうか。

 デューラさんが頭を抑えながら立ち上がる。

 さっきまでと違って、光が宿ったようにハッキリとした目付きとなっている。

 これは正気に戻ったと思ってよさそうかな?


「目は覚めたかい、デューラ?」


 メアルさんがデューラさんに近付き、問いかける。エイミとミールも我慢出来ずに二人のもとへ走り出す。


「お父さ······」

「······!? はぁっ!!!」


 エイミが声をかけようとしたら、デューラさんは表情を変えて剣を握り、止める間もなくエイミに向けて突いた。

 まさか、まだ正気に戻ってなかったのか!?


『デューラ······き、貴様······!?』


 剣はエイミの後ろの霧、ダルクローアを突き刺していた。コイツ、消滅していなかったのか。

 デューラさんはエイミではなくダルクローアを狙って剣を突いたのか。


「これ以上、貴様の思い通りにはさせん。······消えろ!」

『ぐっ、おあああーーっ!!?』


 デューラさんが魔力を込めると、剣を伝ってダルクローアに流れ込み、霧状化している奴の身体を消滅させていく。

 しかし、まだ完全には消えず、憤怒の叫びをあげてデューラさんに襲いかかった。


『デューラ、どこまでも貴様は私の······!!!』

「そうはさせん! いい加減、往生際が悪いぞ」


 アイラ姉の魔力を込めた魔剣の一閃で、ダルクローアは斬り裂かれ消滅した。

 今度こそ、本当に消滅したようだな。







「メアル······。それにエイミ、ミール。本当にすまない。奴の術に堕ちていたとはいえ、俺は許されないことをした」


 デューラさんが謝罪の言葉を口にした。

 今度こそ、本当に正気に戻ったと見てよさそうだな。


 今まで操られていた姿しか見ていなかったが、本来のデューラさんは誠実で良い人っぽいな。


「お父さん······本当に、お父さんなんだね!?」

「············父様。そして、母様ともまた会うことが出来るなんて」


 死んだと思っていた両親との再会に、エイミとミールは感極まった表情をうかべている。

 いや、デューラさんはともかく、メアルさんは本当に死んでいるんだっけ?

 まあ幽霊だとしても会えたことは嬉しいのだろう。


 オレとアイラ姉は親子の再会に水を差さないように黙って見守るつもりだったが、デューラさんの様子がおかしい。


「父様!? 身体が······!」

「やはり、限界が来たか······」


 ミールが父親の異変に気付き叫ぶ。

 デューラさんの身体がポロポロと砂のように崩れ出している。何が起きているんだ!?



「他の傀儡共と同じダネ。魔虫に長く寄生され過ぎていたんダ。魔虫からは解放されたケド、もうその身体は保たないネ」


 冥王が無慈悲にも、そう宣言した。

 エルフ達は寄生されて日が浅かったから、魔虫さえ排除すれば問題なかったが、デューラさんはそれこそ何年も魔虫に身体を蝕まれていたのだろう。


 しかもダルクローアが言うには、デューラさんに寄生していたのは魔虫の中でも特別製だったみたいだし。

 つまりは手遅れだったということか?


「そんな······!? イヤです、せっかく会えたと思ったのにこんなこと······」


 ミールが涙を流す。エイミも同様の表情だ。

 こんな結末はオレも納得出来ない。

 何か手段はないか······?

 「聖」属性の回復魔法や特級ポーションを使えば治せるんじゃないか?



「キミは「聖」魔法を使えるんだったネ? けど無駄ダヨ。肉体も手遅れなくらい損傷してるケド、それよりも魂がすでに消えかけているかラネ。今、こうして形を保っているだけでも奇跡みたいなものサ」


 そう思ったが、冥王が首を振って否定した。

 身体の方も特級ポーションを使っても治せるかはわからない状態だが、それよりも魂が消えてしまったら肉体を治しても無意味だと言う。


 「聖」属性の回復魔法では魂の消滅を止めることは出来ないし、かといって薬でどうにかなることでも······。

 ん? 薬? そういえば······。



〈ソウル·リバイバル〈アイテムランク10〉〉

魂の力を完全回復させる最上級の神薬。



 前にオレが素材を渡し、シノブに作ってもらった最上級の神薬だ。

 これを使って、魂が消滅しかけていた勇者のスキルを持つユウを救うことが出来たんだった。

 念の為、いくつか持っていたんだが、これならデューラさんを助けることが出来るんじゃないか?


「これを使って助けられないか?」

「おいオイ、それって冥界でも希少な最上級の神薬じゃなイカ。なんでそんなモノ、人族のキミが持っているノサ?」


 やはりこの薬は冥王ですら驚く代物みたいだな。

 問答している時間はないし、オレはミールに薬の効果を簡単に説明して渡した。


「ありがとうございます、レイさん! 父様、これを」


 オレから薬を受け取ったミールは迷わずにデューラさんに飲ませた。

 デューラさんのステータスは(神眼)の力を持ってしても鑑定出来ないのでハッキリとはわからないが、目に見えて容態は回復していた。



 これでやっと、なんの気兼ねなく親子の再会を喜べるようになったかな?




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