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446 冥王の助太刀

 エイミとミールの父親にダルクローアの身体の一部が憑依して、恐ろしい力を発揮していた。

 アイラ姉と互角だったところに、ダルクローアの能力までプラスされて、手が付けられない強さとなっている。


「レイ、この場の全員を守ることに専念しろ! エイミ、ミールには悪いが、もはや私も手加減はせぬ」


 アイラ姉は本気で二人の父親を倒すつもりだ。

 正気に戻す方法を探すとか、そう言ってられる余裕はないからな。


 アイラ姉がすべての触手を斬り落とし、男に斬りかかる。男は剣でアイラ姉の攻撃を受け止め、反撃する。

 今はダルクローアの力も上乗せされているとはいえ、それを差し引いてもエイミとミールの父親、ちょっと強すぎないか?



 アイラ姉でも手を焼くのに、並の相手じゃどうしようもないだろう。

 以前、暴れていたという時にエルフ達はどうやって止めたんだろうか?



神魔裂衝剣(しんまれっしょうけん)!!!」


 アイラ姉が(神聖剣術)を男に放った。

 男の持つ剣を弾き飛ばし、肩から胸にかけて大きく斬り裂いた。

 男の返り血を浴びて、アイラ姉が身体が赤く染まる。


『貴女は本当にお強いですねえ。まずはその動きを封じさせてもらいますか』

「む、これは······」


 アイラ姉が浴びた男の血が紋様を描き、魔法陣の形となっている。

 魔法陣から魔力が放出され、アイラ姉の身体を拘束した。


「この程度で、私をどうにか出来ると思っているのか?」

『貴女の動きを止めている間に、周りの鬱陶しい者達から排除させてもらいますよ』


 拘束されたくらいじゃアイラ姉は倒せない。

 追撃しようにも魔法陣から漏れ出る魔力が邪魔で、男も攻撃出来ないようだ。


 しかし、そんなことは想定済みだと言わんばかりに男はオレ達の方に目を向けた。

 もうエイミとミールの父親の意識は完全になさそうだし、(ダルクローア)と呼ぶか。


 アイラ姉が動けない内に、オレ達を始末する気のようだな。アイラ姉以外はどうにでもなると思われているのか。

 舐められたものだ。


 アイラ姉は拘束を破ろうとしているが、思った以上に強力なもののようで、しばらく動けそうにない。



『まずはもう一人の勇者から排除してしまいましょうか』


 ダルクローアはオレに剣を向けてきた。

 コイツは武器も力もオレよりも上だから、まともに受けるのは危険だ。

 奴の剣を避け、カウンターをくらわせてやった。


『あの女勇者ほどではありませんが、やはり貴方もお強いですねえ。貴方の血は良い()()になりそうです』


 オレの剣を受けても、大したダメージが入っていない。アイラ姉が与えた傷も、いつの間にか治っている。

 よほど強力な攻撃を浴びせないと、(再生)スキルで完全回復されてしまうな。


『ヒッヒッヒッ、これならどうですかね? 爆裂轟炎(フレア·バースト)!!』


 ダルクローアが「炎」の魔法を放ってきた。

 オレも「炎」の魔法で対抗する。

 力は奴が上だが、魔力はオレの方に分があるみたいだな。僅かにだが、押している。


「レイさん、ワタシも力を貸します!」

「――――――ウチの魔力も使ってな〜、主人(マスター)


 ミールとパールスがオレに魔力を送って援護してくれた。傷付いたエイミの治療はルナシェアに任せているようだ。


「ミール、父親を倒すことになるけど、いいのか?」

「今は他の皆さんの安全を優先します。それに、父様もあんな外道にいいように操られては、我慢ならないはずです。全力で止めましょう!」


 ミールも父親の身体を操るダルクローアの無力化を決意したようだ。

 殺さずに無力化、そして奴の洗脳から解放出来れば一番良いが、最悪の事態も覚悟しているみたいだ。


 二人がくれた魔力を上乗せして、オレは魔法を全力で放った。


『ぐっ······まさか、これほどの魔力をも秘めているとは』


 奴の魔法に押し勝ち、オレの「炎」がダルクローアに直撃した。

 だが、さすがにこれだけでは焼き尽くせないか。


『私を甘く見ないでいただきたいですね······!』


 「炎」に包まれたダルクローアが、構わず飛び出して斬りかかってきた。

 奴の剣はオレじゃなく、ミールを狙っていた。

 マズい······!!?



――――――――――!!!!!



『何っ······これは、まさか?』


 ダルクローアの剣はミールに届かず、半透明の巨大な盾に阻まれていた。

 この実体のないように見える盾は、もしかして······。



「やあ、すまないネ。ちょっとばかし戦いに割り込ませてもらったヨ」


 そう言って現れたのは冥王(テュサメレーラ)だった。

 冥王がミールを守ってくれたのか。


『あなたは······〝透〟の冥王。そうですか、冥界関係者が私の邪魔をしていることは予想していましたが、まさか冥王自ら出向いていたとは』


 ダルクローアが冥王を警戒して後ろに下がった。

 苦々しい表情をうかべているので、冥王の登場は予想外だったようだ。



「ありがとう、おかげで助かった」


 オレは冥王に礼を言う。

 冥王が割って入らなければミールが危険だったから、助けてくれたことは本当に有り難い。


「ああ、気にしないでいいヨ。彼女を守ったのは僕じゃないシ。僕は()()()()()がこっちに来たいとごねるから連れて来たまでサ」


 新人ちゃん?

 よく見たら、ミールを守った盾の前には半透明のモヤのようなものが浮かんでいる。

 冥王の配下の幽体(レイス)かな?



 まあ、それはいい。

 それよりもこの状況で冥王の助太刀は助かる。

 アイラ姉の拘束もそろそろ解けそうだし、これなら何とかなるかもしれない。


 

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