52 アルケミアの思惑
(アルケミアside)
試練を無事に終え、私は正式な聖女へとまた一歩近づきましたわ。
今回の件では他にも驚くことが色々ありすぎましたが。
アルネージュの町で英雄と言われている三人。
どんなに調べてもその素性を知ることができませんでしたが、まさか異世界の住人だったとは············。
異世界から来たと言われても普通は信じられないでしょう。しかし彼らは常識外れのことを次々とやっていましたわ。
かつて魔王を討ち倒した勇者様も別世界からやってきたという話を聞いたことがありますわ。
彼らはフリゼルート氷山に封じられていた不死身の竜すらも圧倒していました。
まさに伝説の勇者様のようでしたわ。
彼らは女神様がつかわせた使徒様ではないのでしょうか?
加護を与えるなどまさに神の所業。
私に与えられた加護は〈仮〉となっています。
まだ〈仮〉の証。
それでも効果は絶大ですわ。
正式な加護ならばどれ程のものか············。
まずは加護のことを知るために話を聞いておきたい人物がいますわ。
セーラさんの専属護衛騎士のリン。
王国騎士団隊長のグレンダ=フェルクライト。
その弟さんのユーリ=フェルクライト。
私以外に加護を与えられた人物。
是非どういった経緯で加護を与えられたのか聞きたいですわ。
しかし騎士隊長であるグレンダさんは多忙のため都合がつきにくいですわね。
弟のユーリ君は学園の長期休暇が終わって王都に行ってしまったばかりでしたわ。
となると残っているのはセーラさんの専属護衛のリンだけですわね。
彼女は私のことを良く思っていなさそうなのですがそんなことを気にしても仕方ありませんわよね。
ちょうど今日は神殿のセーラさんの部屋にいるはずですし、話を聞きに行くことにしましょう。
私はセーラさんの部屋に向かいました。
「セーラさん、失礼しますわよ」
扉をノックして中へ入ります。
二人はよく外出することがありますが今日はいたようです。(二人はバレてないと思っているようですが神殿をたまに抜け出しているのは大司教様達にはバレバレなんですよ)
「アルケミアさん、何か御用ですか?」
「いえセーラさん、今日はあなたの護衛のリンに用があるのですわ」
「え、わ、わたしにですか?」
意外そうな顔をするリン。
まあ当然ですわよね。
「レイさん、アイラさん、シノブさんの三人についてですわ。リン······あなたはレイさんから加護を与えられたのですわよね?」
私はフリゼルート氷山であった出来事を簡単に話しましたわ。
彼らが異世界から来たことを。そして加護を与えることが出来ることを知っているということを。
私自身も加護を与えられたことも。
「レ、レイさんがアルケミア様に加護を!?」
「ええ······ですからリン、あなたに詳しく聞きたいのですわ。私の加護は〈仮〉であってまだ正式なものではありませんわ。あなたは正式な加護なのですわよね?」
「そ、それは············そうですけど」
加護を与えるには絆を深める必要があるという話でしたが、彼ら自身もどうすればいいのか詳しくはわからないとのことでしたわ。
リンはどのようにして与えられたのでしょうか?
鑑定魔法で二人を見て驚きましたわ。
セーラさんのレベルは130を超えていましたわ。
リンもレベル125になっていましたわ。
これなら以前の私では鑑定できなかったのも当然ですわね。
しかもリンの持っている加護スキルは〈仮〉ではなく〈中〉となっています。
レベルは私の方が上ですけど、ほぼすべてのステータスが負けていますわ。
それだけ加護スキルの恩恵がすごいということですわね。
リンは確か男嫌いだったと聞いていましたが、そんな彼女が何をしてレイさんから加護を受けたのでしょうか?
······キス以上のこと······でしょうか?
「一体彼らと何をしたのですかリン? 詳しく教えて下さいませ」
「え······ええ!? な、何をと言われましても······その············」
どんなに聞いてもリンは歯切れを悪くするだけで答えてはくれませんでしたわ。
やはり重要なことは話してはくれませんか。
リンにとって私はセーラさんのライバル······敵とも言えるわけですからね。
レイさん達はこの二人と仲が良いそうですし、このままではセーラさんにも正式な加護が与えられ一気に追い抜かれてしまいますわ。
何か手を打たなくてはなりませんわね············。