435 幽体《レイス》の鎧騎士
エイミとミールの話では、森の奥地から精霊達の声が聞こえてきたらしい。
森に精霊の姿がなかったのは、精霊達がダルクローアから逃れるために隠れていたのかな?
「こっちの方からですね」
「うん、確かに聞こえるよ」
二人の案内で森の奥地へ進んでいく。
もしかして、このまま進んだら世界樹ってのがある場所に出るのかな?
「いえ、世界樹があるのは反対方向ですね。こちらは特に何もない場所のはずですけど」
聞いてみたらミールが否定した。
まあ、世界樹があるような目立つ場所に精霊が集まっていたらダルクローアに気付かれるか。
「――――――なんや、邪気が濃くなっとる気ぃするな〜」
パールスが言うように、奥に進むに連れて邪気の濃度が増している。
精霊は邪気を中和出来るようなこと言ってなかったっけ?
とても精霊がいそうな雰囲気じゃないんだが。
さらに先へ進んで行くと、不意に違和感を覚えた。何だ、今の感覚は?
「邪気に紛れて結界が張ってありますね。上手く隠されているので、ここまで近付くまで気付きませんでした」
目を凝らして見ると、確かにミールの言うように結界が張られていた。
周囲に溶け込み、認識されにくくする結界らしく、エルフの里を覆っていたのとは別タイプみたいだな。
結界があるということは、何かあるってことだよな。
「――――――こないな結界ならウチにかかれば、ほな、この通り〜」
どうしようかと悩む前に、パールスが結界をあっさりと解除してしまった。
消しちゃって大丈夫なのか?
いや、どっちにしろ確認しないわけにもいかないし、今は悩む時間も惜しい状況だからいいか。
結界が消えると同時に探知魔法で反応が見えた。
ここにいるのは精霊だけじゃない?
精霊とは別と思われる反応が複数ある。
「気を付けてください、何か来ます! この気配は精霊ではありません!」
ミールが警告し、オレ達は身構えた。
すると奥の方から邪気とは違う、濃い霧が現れ、だんだんと人のような姿が形成されていく。
[レイス·ナイト] レベル250
〈体力〉210000/210000
〈力〉18500〈敏捷〉12000〈魔力〉4300
〈スキル〉
(冥王の加護〈中〉)(隠密)(物理無効)
(無限再生)(魔法耐性〈中〉)(憑依)
(邪気吸収)
霧は複数の半透明の鎧騎士の姿となった。
一体一体のレベルがそれなりに高い。
ダルクローアの操る傀儡兵とはタイプが違うみたいだが、コイツらもアイツの配下なのか?
いや、よく見たらスキルに(冥王の加護)というのがある。
冥王と魔人族の神将は別モノだったはずだ。
一体これはどういうことだ?
「――――――幽体系の魔物やな〜。それも、そこそこに高位な奴やんか。冥界ならともかく、高位のレイスがこんなに地上に出てくるんは珍しいな〜」
パールスが言う。幽体系の魔物か······。
エイミとミールの実家に居た、あの幽体の女の子と関係あるのかな?
「ひゃううっ、ひゃううっ、ひゃううっ!! やっぱり追って来た、〝紫〟の化け物! 皆、気を付けて! テュサ様が来るまで、ここを死守するんだよ!」
と思ってたら、その女の子が出てきた。
こちらを威嚇する表情(+泣き顔)で睨んできている。
[フルフル] レベル680
〈体力〉553000/553000
〈力〉22000〈敏捷〉105000〈魔力〉65000
〈スキル〉
(冥王の加護〈大〉)(隠密)(物理無効)
(無限再生)(魔法耐性〈極〉)(憑依)
(――――)(――――)(邪気吸収)
さっきは鑑定する前に逃げてしまったので改めて見てみたのだが、見かけによらず、かなり強いステータスだ。
見えないスキルもあるし、実力は数値以上あるかもしれないな。
他の半透明の鎧騎士達に指示を出しているから、あの女の子が幽体達のリーダー格なのかな。
「あの子はさっきの幽体······だよね」
「みたいですね。やはり、何か企んで里に潜んでいたのですね」
エイミとミールがいつでも戦えるように構えた。
鎧騎士のレイスも、オレ達を排除しようと取り囲んでくる。
レベル250くらいの鎧騎士達は、オレ達なら充分倒せる相手だけど、あの幽体の女の子を見ていると、何かこっちが悪者みたいに見える気がする。
このまま戦っていいのかな?