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432 アイラと元凶の激突

(アイラside)


「百花繚乱······桜花無双撃!!!」


 私と剣を交えているこの男、とてつもない使い手だ。今も全力で放った私の奥義を受け流されてしまった。

 男の攻撃も強力で、気を抜けば一瞬でやられてしまうだろう。


「··················」


 私と剣を交えながらもこの男、まるで心ここにあらずな様子だ。

 この男はデューラという、エイミとミールの父親と同じ名を呼ばれていたが、こちらの問いかけに何も答えないので確かめようがない。

 やはり誰かに操られているのか?


 しかし、これほどの力を持ちながら、ただ何者かに操られているだけの存在なのか?

 いや、今は考えている余裕はない。




 周囲に被害が及ばないように人気(ひとけ)のない拓けた場所まで来たが、それでも全力を出せばエルフの里そのものを巻き込みかねないな。


 よく動きを見れば、この男も周囲の被害を出さないように攻撃を仕掛けて来ている気がする。

 たまたまか?

 それともこの男、完全に操られているわけではないのか?

 どちらにせよ、まずはこの男を無力化せねばならんな。


「弐の太刀······紅葉乱舞撃!!!」


 さらに奥義で追撃した。

 さすがに立て続けの攻撃では受け流し切れなかったようだ。

 男はたまらずに後ろに下がった。


「··················」


 む、男が剣を鞘に収め、異様な構えを見せた。

 何か来るな······。

 身構えた瞬間、男が動いた。


 居合いか!

 男は目にも止まらぬ速さで剣を抜き、剣先が私の頬を掠めた。

 あと一歩、動くのが遅かったら首をはねられていたかもしれん。

 やはりこの男、強い。

 油断してかかってはいけない相手だ。



 再び男と剣を打ち合うが、どちらも決定打を出せない状況が続く。

 私の剣は進化したスキルによって強化に強化を重ね、凄まじく性能が上がっているのだが、男の剣はそれに引けを取らない。

 この男の武器も相当な業物だな。



(つい)の太刀······幻想無限桜!!!」

「············くっ······」


 私の奥義を受けて、ようやく男の表情に変化が見られた。今のは正直、仕留めるつもりで放ったのだが、男を倒すには至らなかったか。

 だが、相応のダメージを与えることは出来た。



「デューラ、たかが人族相手に何を手こずっているのですか?」


 私と男の戦いに水を差す形で何者かが現れた。

 傀儡兵のように歪な姿をしているが、威圧感が比べ物にならない。


「何者だ、貴様は?」


 私は警戒を怠らず、問い質した。

 現れた人物は不気味な目をこちらに向けた。


「む、貴女からも勇者の気配を感じますね。勇者二人に聖女、ですか。私の傀儡達が次々とやられるわけですね」


 勇者二人に聖女?

 聖女とはルナシェアのことだろう。

 となると、もう一人の勇者とはレイのことか?


「レイと面識があるのか?」

「ああ、先ほどの人族の勇者がそんな名前でしたね。およそ人族とは思えないほどの強さを秘めていました。貴女もデューラと渡り合えるとは、相当に腕に覚えがあるようですね」


 レイもコイツと遭遇していたのか。

 レイが簡単にやられるとは思えないが、この場に現れたということは取り逃がしたのか?

 詰めが甘い、レイらしいと言えるが。



 この異様な男······男か?

 もはや姿形では性別を判断できん。

 それはともかく、コイツはデューラと呼ばれている男よりも強い力を感じる。



[ダルクローア] レベル――――

(鑑定魔法を妨害されました)



 駄目か。名前以外は何も見えん。

 だが、ダルクローアという名前は聞き覚えがある。

 レイが情報屋から聞いたと言っていた、エルフの里で異変を起こしている元凶の名だ。

 その元凶が、こうもあっさりと姿を現すとは思わなかったがな。


「ヒッヒッヒッ、良い······実に良いですね! 精霊達の姿が見つからず、()()()()が必要だと思っていたところに、これほどの力を秘めた者達がこんなにも集まって来るとは」


 あまり見た目だけで判断したくはないが、いちいち言動が気色悪く、生理的に受け付けない。

 少なくとも、第一印象では好感を持てない人物だな。



――――――――――!!!!!



 突如として地面から植物の蔦のような触手が現れ、私を縛り上げた。

 よく見たら触手は地中を伝い、奴の身体から伸びている。油断した覚えはないが、まさか私の反応速度を上回るとは。


「ヒッヒッヒッ、最初の生贄は貴女になります。精々、良い声で鳴いてくださいね」


 ダルクローアが指示を出すと、男が私に向けて剣を突き立てた。

 男の剣は触手ごと私の身体を貫いた。

 少なくない量の血が剣を伝い、流れ落ちる。


「おやおや? 無反応とは面白くありませんね。もっと悲痛な叫びを期待していたのですが――――――」

「舐めるな······!!!」


 (ダルクローア)の言葉を遮り、私は無理矢理に触手をぶち破った。

 反撃に斬り刻んでやろうと思ったが、(デューラ)の剣に阻まれた。


「なんと······人族が再生能力を? これは不可解な」


 ダルクローアが驚きの声をあげる。

 男に貫かれた私の傷は(強化再生)スキルの効果で、すでに癒えている。

 その程度の攻撃では私は倒せんぞ。



「貴様という奴がよくわかった。ここでその男共々、成敗してくれよう······!!」


 エルフの里の異変を解決するというのもあるが、私個人的にもコイツの言動には少々頭にきた。



 全力で討ち滅ぼしてくれる······!



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