431 精霊の森の奥地へ
エイミが(魔人化)というスキルに目覚めて、暴走してしまった。
怒り狂ったエイミは、ミールの制止の言葉も聞かずに元凶であるダルクローアを追って、森の奥地まで行ってしまう。
すぐに追いかけなければと思ったところに、今度は里の集落の方からも爆音が響いてきた。
向こうでも何か起きたみたいだな。
―――――レイ殿、今大丈夫でありますか?
そんな時、ルナシェアから念話が届いた。
里の方の状況を知りたいと思っていたから助かる。お互いに簡単に情報交換をする。
ルナシェア達の方は、エルフの長老との話し合いの最中に傀儡兵の襲撃を受けたらしい。
その上、長老やフェルケン含むエルフ達が正気を失い、傀儡兵と共に襲ってくる事態になったようだ。
オレ達に襲いかかってきたエルフ達と同じ状態だったみたいだな。やはり里のエルフ達は皆、ダルクローアに操られていたのか。
けど、何者かがルナシェア達を助けてくれたらしく、正気を失ったエルフ達も意識を取り戻したようだ。
―――――誰がルナシェア達を助けてくれたの?
―――――言葉だけでは説明しにくいので、一度落ち合って話しをしたいであります。
エルフでも傀儡兵の仲間でもない、一体誰が助けてくれたんだろう?
エルフ以外の協力者がいたということか。
気になるが、こちらも元凶が現れたのと、エイミが暴走してしまった経緯を説明し、余裕がない状況だと伝えた。
―――――そうでありましたか······。ともかく、こちらはその協力者と里のエルフ達の洗脳を解いて回るであります。それが終わり次第、そちらに向かうでありますから、それまでエイミ殿と元凶についてはお任せするであります!
里の方はルナシェア達に任せておけば、エルフ達も全員正気に戻せそうだな。
ここにも、まだ洗脳が解けていない気絶したエルフがいることも伝えておいた。
これでエイミや元凶の方に集中できる。
―――――そういえば、アイラ姉はどうしたの?
―――――それが傀儡兵の中に一人、恐ろしく強い手練れの者がいて、アイラ殿はその者の相手を······。
まだ戦闘音が響いてきてるんだけど、これがそうなのかな?
アイラ姉が負けるとは思えないけど、あのアイラ姉とまともにやり合える相手って、かなりヤバイ奴じゃないか?
元凶のダルクローア以外にも、そんな奴がいたのか。
そこでルナシェアとの情報交換を終わらせて、念話を切った。
ミールとパールスに今の内容を伝える。
「ルナシェアさん達も傀儡兵達の襲撃にあっていたんですか」
「――――――まあ、何とかなったんなら良かったんちゃうか?」
傀儡兵に襲われてもルナシェア達なら、オレが心配しなくても、なんとかできるだろう。
操られたエルフ達は心配だったけど、協力者とやらのおかげで、それもなんとかなりそうだし。
「アイラさんと戦っている手練れの傀儡兵というのも気になりますけど、今は姉さんを追う方が先決です」
ミールの言う通りだな。
アイラ姉が相手をしているのなら、たとえダルクローア以上の強さだったとしても、どうにかなると思う。
オレ達は元凶を追いかけたエイミの後を追った。
森の奥地は同じような風景で迷いそうになるが、MAPと探知魔法でエイミの反応は確認出来るので問題ない。
ただ、肝心のダルクローアの反応が曖昧になっているのが気になるな。
――――――――――!!!!!
凄い爆音が響いてきた。
エイミの反応はすぐそこだ。
「うう······あああーーっ!!!」
暴走したエイミが狂ったように魔法を連発している。相手をしているのはダルクローアではなく、奴の配下の傀儡兵達だ。
ただ、戦いは一方的で魔人化したエイミに為す術もなくやられている。
今のエイミにレベル100前後の傀儡兵が敵うはずないんだよな。
「姉さん、落ち着いてください! ワタシがわからないんですか!?」
ミールの呼びかけにも大した反応を見せない。
今のエイミに意識はなく、本能のまま暴れているだけのようだ。
迂闊に近付けば、オレ達にも攻撃してくるかもしれないな。
そんなエイミに向かって、傀儡兵達は恐れることなく襲いかかっている。
どう見ても勝ち目はないのに、死を恐れずに特攻している。
コイツらはダルクローアに操られているんだとしたら、アイツは一体何を考えてるんだ?
無駄に犠牲を出しているだけにしか見えない。
そもそもアイツはどこに行った?
いや、今はとにかくエイミを正気に戻すことを考えよう。