428 正体不明の助っ人
(ルナシェアside)
小生の足元より湧き出てきた傀儡兵達は、「聖」魔法を駆使して振り払ったであります。
この者達の実力は大したことはないので、問題ないであります。
まあ大したことないと言っても、それは小生がレイ殿達のおかげで大幅にレベルアップしたからであって、レイ殿達と出会う前の小生では、相手にするには厳しい強さではありますが。
そう考えたら、小生もずいぶん強くなったでありますな。っと、そんなことを考えてる場合じゃないであります。
まずはフェルケン殿に捕らえられているフェニア殿を救出するであります。
「エアブレイド!」
小生が動く前に学園長殿が「風」魔法でフェルケン殿を攻撃し、フェニア殿から引き離したであります。
ちなみに学園長の今のレベルは200を超えており、フェルケン殿を上回っているであります。
その上、学園長はユグドラスロッドという世界樹の枝から作った特殊な杖を使っているため、魔法攻撃の威力が高いのであります。
「フェニア、早くこっちにいらっしゃい!」
「は、はい! 学園長······」
フェルケン殿の拘束から逃れたフェニア殿が、学園長のもとに駆け寄ったであります。
小生も学園長とフェニア殿のもとに向かったであります。
学園長の魔法を受けたフェルケン殿が立ち上がったであります。
手加減しながらでの攻撃では、行動不能にするのが難しいでありますな。
かといって加減を誤れば殺してしまいかねないので、全力を出せないであります。
エルフ達を正気に戻せればいいのでありますが、「聖」魔法を受けても効果がないところを見ると、普通の精神魔法の類ではないようであります。
「マズいわね······。長老やフェルケン、他の皆も完全に正気を失っているわ」
「フェルお兄様ほどの実力者が、いいように操られるとは思いませんわ······」
おそらくはエルフ達を操っている者は、相当な使い手なのでありましょう。
操っている者は必ず里のどこかにいるはずなので、探し出さなくてはならないであります。
「ぐっ······ううがっ······!!」
「フェルお兄様!?」
突然、フェルケン殿が苦しそうな声を出したであります。フェルケン殿だけでなく、他のエルフ達······それに傀儡兵までもが同じような様子であります。
これは尋常ではない事態であります。
「こ、今度は何事なの······!?」
学園長も予想外の事態に慌てているであります。
エルフ達は今にも死んでしまいそうな様子であります。
もしや、操っている元凶は小生達がエルフ達を見捨てないであろうと予想して、このようなことを······?
そうだとしても放っておけないであります。
「ソウル·アセンション!!」
小生は魔力を最大にまで高めて「聖」魔法を放ったであります。
これは魔力消耗が激しいとっておきの「聖」魔法でありますが、出し惜しみしている場合ではないであります。
「「「うっ······うう······」」」
エルフ達の苦しみが少し緩んでいるであります。
今までの「聖」魔法に比べて多少は効果があるようでありますが、それでも決定的とは言えないであります。
――――――――――!!!!!
その時、周囲が霧に覆われたであります。
ここは屋敷の中。
前触れなく霧が発生するなど、おかしいであります。
何事かと警戒すると、霧の中からエルフでも傀儡兵でもない、正体不明の人物が現れたであります。
「やあヤア、キミが報告にあった今代の聖女ちゃんダネ? まだ覚醒はしていないみたいだケド、想像以上の力を秘めていルネ」
姿を現したのは、少年か少女なのか判断がつかない容姿をした幽体の魔物であります。
見た目は幼い無邪気な容姿でありますが、とんでもない力を秘めていることを肌で感じるであります。
まさか、此奴がエルフ達を操る元凶なのでありますか?
[テュサメレーラ] レベル992
ステータスの鑑定に失敗しました。
小生を遥かに上回るレベルで、ステータスが鑑定出来ないであります。
しかし、名前によくわからない文字がありますな。あばたーとは一体何のことでありますか?
いや、そんなことよりもレイ殿やアイラ殿がいないこの状況で、これ程のレベルの敵を相手にするには厳しいであります。
「おっと、誤解しないでくレヨ? 僕はキミらエルフや聖女と敵対する気はないゼ。寧ろ、手を貸してあげようと思って来たノサ」
小生が警戒しながら構えていると、幽体の魔物はおどけた様子でそう言ったであります。
確かに敵意は感じないでありますが······。
エルフ達を操っているのは此奴ではない?
ただ、普通の幽体の魔物ではないことは明らかであります。
此奴が元凶ではないとすると、一体何者なのでありますか?