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423 操られたエルフ達

 ダルクローアの触手から、大量のミミズのような生き物が飛び出てきた。

 寄生魔虫ブレインワーム。

 生物に寄生して、その生物を操るヤバい虫みたいだ。


 顔に張り付いた魔虫が、口や耳から侵入しようとしてきたので、オレは咄嗟に振り払った。

 普通に気持ち悪いし、体内に侵入してくるなんて冗談じゃない。


 さらに魔虫の頭(?)の先端が開き、鋭い牙でオレの皮膚を喰い破ろうとする。

 しかし魔虫の顎の力ではオレの皮膚は破れないようで、少しくすぐったい程度だ。


「ひぃやあっ······!?」

「くっ······この虫、身体の中に······」


 触手に縛り上げられ、身動き取れないエイミとミールに魔虫が群がっている。

 これはヤバそうだ。


 オレは魔剣に「聖」属性の魔力を込めて、二人を絞め上げている触手を斬り裂いた。

 この触手、かなりの強度だが「聖」属性を纏わせれば、何とか斬れる。

 さらに二人に群がる魔虫も振り払った。


「あ、ありがとう、レイ君······」

「助かりました、レイさん」


 なんとか二人の体内に入り込む前に排除出来たな。魔虫はまだまだ奴の触手に大量に張り付いているので油断出来ないが。


「ほう、なかなかやりますね。私の身体の一部をたやすく斬るとは。なるほどなるほど、傀儡達では手に負えないわけですね」


 ダルクローアが愉快そうに言う。

 身体の一部ってのは、この触手のことか。

 触手や魔虫を振り払っているだけじゃ、あまり慌てた様子を見せないな。

 こっちも様子見とか言って、出し惜しみしてる場合じゃなさそうだ。


「アブソルティ·サンクチュアリ!!!」


 オレは魔法で周囲一帯に「聖」なる領域(フィールド)を展開した。

 これはオレが使える中でも最大の「聖」魔法だ。

 「聖」なる力を受けて触手の強度が弱まり、魔虫も苦しそうに動きを緩める。


「なんと!? 覚醒前の勇者がここまで「聖」魔法を使いこなすとは······! 貴方は相当に女神の寵愛を受けているようですね」


 驚いたように言っているが、ダルクローア(こいつ)自身には「聖」なる力もあまり効果は出ていないようだな。



「――――――魔虫ブレインワーム。えげつない奴を使(つこ)うとるな〜。しかもコレ、通常種やない、新種やろ?」


 魔虫をつまみ上げ、パールスが言う。

 パールスは人形だからなのか、魔虫が体内に入っても操られることはないようだ。


 この魔虫は鑑定魔法での説明文に、様々な品種改良が行われているとか出ていたな。

 パールスがえげつないとか言っているし、オレが思っているよりもずっとヤバい虫なのかもしれない。



――――――――――!!!!!



 ダルクローアが全身から魔力を放出して、オレの「聖」なる領域(フィールド)の効果をかき消した。

 まさか、こんなに簡単に消されるとは思わなかったな。


「ヒッヒッヒッ······それほどの力を秘めていては、私の傀儡達では貴方達の相手にはならないでしょう。ですが、この者達ならどうですかねぇ?」


 ダルクローアが合図すると、物陰から複数の影が飛び出てきた。

 新たな傀儡兵かと思ったが違う。

 姿を現したのはエルフの里の住人達だった。


「「「··················」」」


 エルフ達は傀儡兵のように目に光はなく、どう見ても自分の意思がないような状態だ。

 中には里を散策中に、オレ達に愛想良く挨拶してくれたエルフの姿もあるが、その人達も目に光がない。

 やはり、あの時からすでに操られていたということか。


 エルフ達のレベルは20〜30。

 高い者でも50くらいであり、傀儡兵に比べたらステータスもあまり高くない。

 けど、ただ操られているだけのエルフ達を攻撃するのは抵抗あるな。


「さて、善良な一般人にすぎない、その者達を手に掛けますかな?」


 ダルクローアが不敵に笑う。

 こちらがそう考えるとわかって、エルフ達をけしかけて来たんだな。

 紳士的かと思ったが、性格の悪い奴だ。


 怪我をさせずに無力化したいが、操られているせいなのか、オレの強制睡眠魔法は効果がない。

 この様子だと、当て身などで気絶させるのも難しそうだ。


「――――――ん〜、先に操られとるからウチの(魅了)も効かんわ~。なあ主人(マスター)、この人ら斬ってええか?」


 パールスが武器(チェーンソー)を構えて物騒なことを言い出した。オレが頷いたら、遠慮なくエルフ達を斬り刻みそうだ。

 オレは少し待つようパールスを止めた。



――――――――――!!!!!



 どうしようかと考えを巡らせていたら、突然エルフ達が氷漬けになった。

 「氷」の魔法を使ったのは当然······。


「ワタシがそんなことを躊躇するとお思いですか? 遠慮なく蹴散らせてもらいます」


 やっぱりミールだった。

 まったく躊躇することなく、エルフ達を攻撃したようだ。エイミはオレと同じようにどうするべきか戸惑っている様子だが、ミールは容赦無いな。

 一応、氷漬けにしただけで殺してはいないが。



 ミールはエルフの里の住人に恨みつらみあるだろうし、下手したらこのままエルフ達を皆殺しにしてしまうかもしれない。



 さすがにそこまではしないだろうと思いたいが············そうなる前に転移魔法で逃げるべきか?


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